質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第三五号

かんぽの宿等の売却に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年二月九日

川上 義博   


       参議院議長 江田 五月 殿



   かんぽの宿等の売却に関する再質問主意書

 先に私が提出した、かんぽの宿等の売却に関する質問に対する答弁書(内閣参質一七一第一七号)を受け取った。しかし、この答弁書によっても、今回のかんぽの宿等の売却に関して、なお疑問点が残ることから、以下再質問する。

一 かんぽの宿等は簡易生命保険の契約者の掛金を基に設置されたものであり、いわば国民の財産である。民営化したとはいえ、日本郵政株式会社の唯一の株主は国であり、日本郵政株式会社法第十四条に基づき、総務大臣が監督することとされている。また、かんぽの宿等を安く落札した会社がこれを転売して多額の利益を得ている実態も報告されている。こうしたことを踏まえると、伝聞に基づく答弁が多いことは、人ごとのような無責任さを感じざるを得ない。そこで、かんぽの宿等の売却について政府が行使した株主の権利及び監督権限の内容、また、今後の行使の予定について明らかにされたい。

二 日本郵政株式会社がかんぽの宿等七十施設を一括で売却することについて、総務省が日本郵政株式会社から相談を受けたことはないとの答弁である。
 それでは、日本郵政株式会社による一括売却の方針を総務省が知ったのはいつか。また、どのような手段を通じて知ったのか。
 この方針を知った後、総務省はどのような対応をとったのか。何も対応せず、当該方針を容認したのではないか。

三 首都圏社宅九施設を含む理由について、日本郵政株式会社の宿泊事業部門及び首都圏に所在するかんぽの宿の従業員の住居確保の観点から、かんぽの宿と一括売却するという答弁である。
 それでは、当該首都圏社宅九施設には、日本郵政株式会社の宿泊事業部門及び首都圏に所在するかんぽの宿の従業員以外の者は、一人も居住していないのか。
 各社宅ごとに日本郵政株式会社の宿泊事業部門の従業員数とかんぽの宿の従業員数の内訳を明らかにされたい。
 かんぽの宿の従業員のみが居住する社宅については、かんぽの宿等と一括売却することは一応理解できる。それでは、今回の売却対象施設には含まれていない「ゆうぽうと」の従業員は居住していないのか。
 また、日本郵政株式会社の宿泊事業部門は宿泊施設を持つメルパルクを担当していないのか。担当している場合、いまだ売却されていない施設も残されていることから、当該部門の従業員も居住している社宅まで一括売却する理由は何か。

四 規制改革・民間開放推進会議においては、公的宿泊施設等の民間委譲又は包括的な民間委託を速やかに図るべきである等の問題意識の下に、森林管理局保養所等を取り上げたとの答弁である。
 しかし、たまたま同会議において具体的に取り上げられなかったとはいえ、かんぽの宿は、郵政省、簡易保険福祉事業団、日本郵政公社及び日本郵政株式会社が運営してきたものであり、正に「公的宿泊施設等」に含まれ、同会議において取り上げられたと言えるのではないか。

五 麻生太郎内閣総理大臣は昨年十一月、郵政株式の売却に関して株式は高い時に売るものであり、安い時には売らない旨発言した。これは企業経営の経験がある人の発言として当然のことであると考えられる。株式と同様、不動産も高い時に売るものであり、百年に一度と言われる、現在のような金融危機下の経済状況において、かんぽの宿等の不動産を売却するのは得策ではないのではないか。
 今回の売却については、平成二十年四月一日にホームページにおいて公募していたとはいえ、その後の経済状況の変化に迅速に対応し、売却の中止、一時凍結等を考慮しなかったのか。

六 今回の入札において、二十七社が応募し、最終入札に参加した二社のうち、オリックス不動産株式会社が百八億円余を提示し、落札したとの答弁である。
 応募企業名を明らかにすることは、当該企業の評価等に影響を与える可能性があるということであるならば、当該企業名は匿名とした上、当初応募した二十七社の入札額をすべて明らかにされたい。このうち、オリックス不動産株式会社よりも高い入札額を提示した企業はないのか。
 また、どのような手続を経て、二社に絞り込まれたのか。
 さらに、選考に当たり、入札金額以外の審査条件、審査基準等はあるのか。ある場合、それらの条件、基準等の内容及びそれらの条件、基準等を設ける理由を明らかにされたい。

七 かんぽの宿等の稼働率は、平成十九年度において七〇・七%であるとのことである。一方、国土交通省観光庁作成の「宿泊旅行統計調査報告」(平成二十年十二月)によれば、民間のホテル等の宿泊施設の平均稼働率は平成十九年度において四五・四%である。このように民間のホテル等に比して稼働率において優位性を持つかんぽの宿等が、赤字である原因は何か。
 経営努力により、かんぽの宿等が黒字に転換できる可能性はないのか。

八 平成十六年九月十日に閣議決定した「郵政民営化の基本方針」においてかんぽの宿等は、「郵便貯金関連施設事業、簡易保険加入者福祉施設事業に係る施設、その他の関連施設については、分社化後のあり方を検討する」とされていた。その後、平成十七年四月二十七日に閣議決定し、国会に提出した日本郵政株式会社法案附則第二条で、かんぽの宿等は平成二十四年九月三十日までに譲渡又は廃止することとされた。この趣旨は、民営化後の承継会社等の健全な経営を確保するため、それぞれの中核的業務に特化するためとの答弁である。
 これに関し、去る二月五日の衆議院予算委員会で振角秀行内閣官房郵政民営化推進室長は、当時の竹中平蔵郵政民営化担当大臣の指示によりこのような結論に至った旨述べている。かんぽの宿等の譲渡又は廃止について、だれが発案し、どのような検討が行われ、このような結論が出されたのか等、経緯について明らかにされたい。

九 郵便局株式会社が売却した沖縄県那覇市おもろまち二丁目の不動産は、どのような経緯で郵便局株式会社が所有していたのか。郵便局株式会社が当該不動産を売却した理由は何か。当該不動産の鑑定評価額はいくらだったか。前記六と同様に、応募企業名は匿名としたまま、当初応募した九社のうち、オリックス・アルファ株式会社よりも高い入札額を提示した企業はないのか、九社の入札額をすべて明らかにされたい。また、オリックス・アルファ株式会社とオリックス不動産株式会社は株式の所有、業務提携、人事交流等においてどのような関係にあるのか。

  右質問する。