質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第四号

「留学生三〇万人計画」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年一月五日

谷岡 郁子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   「留学生三〇万人計画」に関する質問主意書

 前国会提出した「金融不況の大学生に与える影響に関する質問主意書」(第一七〇回国会質問第一一八号)の質問五において、「留学生三〇万人計画」によって留学生を極端に増やす前に日本人学生への支援を充実する必要があると指摘し、政府の見解を問うたが、その回答に関連して、改めて以下質問する。

一 先の答弁書(内閣参質一七〇第一一八号)では、「我が国を世界により開かれた国とする」ことを、「留学生三〇万人計画」の目標のひとつにあげている。しかし、二〇〇八年の麻生内閣成立時に閣僚のひとりである中山国土交通大臣(当時)が「日本は内向きな単一民族」という旨の発言をするような状況がある。留学生を増やしたところで、このような日本人の認識が変わらなければ開かれた国となることは困難である。日本を開かれた国にするためには、日本人の国際理解教育、既に日本で生活している多くの外国人の子どもたちの教育、そして日本で暮らす外国人との相互交流を図ることの方が、よほど開かれた国への施策として優れていると思われるが、にもかかわらず政府が「留学生三〇万人計画」にこだわる理由を問う。

二 先の答弁書では、「我が国の大学等の国際化や国際競争力の強化」を「留学生三〇万人計画」の目標のひとつとしているが、昨年ノーベル賞を受賞した各氏をはじめ、多くの研究者が「基礎研究の軽視が国際競争力の低下に結びつく」危険性を指摘している。国際競争力を高めるためには、留学生の増加の前に取り組むべき課題が多いと考えるが、その中であえて「留学生三〇万人計画」を国際競争力強化のために実施するという政府の論理は非常に曖昧かつ雑と言わざるを得ない。「留学生三〇万人計画」と国際競争力強化との因果関係をどのように想定しているのか、説明されたい。

三 また、「大学等の国際化や国際競争力の強化」についても、国際化し、国際力をつけるべきは大学ではなく、日本人学生のはずである。すなわち日本人学生に留学を奨励し、そのための施策展開を行うことなどが、我が国の国際化・国際力の強化につながる教育投資であると考える。しかしながら、二〇〇八年一〇月に留学斡旋業者大手の「ゲートウェイ21」が経営破綻し、多くの留学希望者が支払った費用が返金されないなど、日本人に対する留学支援は、民間任せであり、またその民間企業に対する指導も杜撰である実態が明らかになった。政府は、日本人の留学支援を行っているのか。また、それは留学生受入れと比べてバランスがとれていると考えているのか、バランスがとれていると考える場合にはその根拠のデータを含めて示されたい。

四 先の答弁書では、「活力ある経済社会の構築」も目的のひとつとしているが、表現が曖昧すぎると思われる。「留学生三〇万人計画」がどのように経済社会の活性化につながるのか、具体的に示されたい。

五 先の答弁書では「日本人学生への支援の充実とあわせて」とあるが、日本人学生への支援の充実の内容を具体的に示されたい。また、留学生、日本人学生双方について、学生一人あたりの予算額を示した上で、双方の支援の充実度についての政府としての評価を示されたい。

六 これまでも委員会質問等で指摘してきたように、留学生一人を育てるために必要な労力は、日本人学生の数倍から数十倍である。多くの大学では、既に日本人学生の教育を犠牲にして留学生の教育を行っているのが現状である。現在、約一〇万人とされる留学生を三倍に増やすことは、それだけ必要な労力が増えることを意味する。それに対応する教育体制が整わなければ、逆に日本に対する国際的な評価や信用を下げることにつながりかねない。したがって、日本人学生への支援策の充実と留学生に対する教育体制が整うまで、「留学生三〇万人計画」は実施すべきではないと考える。政府は、同計画による留学生増に見合う教育体制をどう整えるつもりなのか。

  右質問する。