質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第二号

経済的理由による高校中退を予防するための施策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年一月五日

谷岡 郁子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   経済的理由による高校中退を予防するための施策に関する質問主意書

 昨年からの金融不況に伴い、我が国においては企業倒産や解雇による失業者が急激に増大しており、今後もさらなる失業者の増大、あるいは職にある労働者についても賃金カットが行われる可能性が高いと考えられる。これら労働者の中には、高校や大学に通う子を持つ親も多く、親の経済的理由により中退を余儀なくされる生徒、学生が増大することが懸念される。
 特に、未成年で親に扶養されている高校生への影響は大きく、とりわけ全高校生の三割にあたる私立高校に通う高校生の中には、親の経済的理由により中退せざるを得ない者も多い。今日、日本の高校進学率は九割を超えている中で、親の経済的理由により高校中退を余儀なくされる生徒が生み出されていることは、きわめて憂慮すべき事態である。学校は、将来の社会を支える若者を育てる重要な場であり、親の経済的理由による学業の中断は、その生徒の将来にとっても、また社会全体にとってもマイナスの効果をもたらすため避けなければならず、緊急の対策が必要であると考えられる。
 よって以下質問する。

一 当方が入手した資料によると、二〇〇七年度に私立高校二三四校に対して行われた調査において、経済的理由により私立高校を中退した生徒は四〇七人いたことが確認されている。これを一三〇〇~一四〇〇校あるとされる全私立学校数に当てはめると、二三〇〇~二四〇〇人の生徒が、経済的理由により私立高校を中退したこととなる。現在は、二〇〇七年度と比べても経済状況が悪化しており、経済的理由による中退者はさらに増えるものと予想される。政府は、高校、特に私立高校における中退者の実態を把握する調査を行っているのか。行っている場合はその結果の概要を含めて示されたい。

二 親の経済的理由による高校中退者を出さないためには、特に突然の解雇によって親が職を失った生徒の授業料を軽減、免除するなどの緊急の措置が必要と考えられるが、政府としていかなる対応策を考えているのか。また、そのような減免措置の実施を検討している場合、適用の条件等その内容についても示されたい。

三 これまでも文部科学行政においては、私立高校に通う高校生に対して、国庫から授業料減免事業等支援特別経費を支出してきたと承知しているが、これまでの補助額と補助率を示されたい。また、この不況に対応して、補助額と補助率の引き上げを検討しているのか、検討しているとすれば引き上げ幅を示されたい。

四 私立高校に通う子を持つ世帯に対しては、各都道府県によってかなりのばらつきがあるものの、授業料に対する補助等の支援を行っている。しかし、例えば愛知県では法人税収の大幅減により三〇〇〇億円を超える減収が来年度予想されるなど、各自治体も厳しい財政状況下におかれている。このような状況下で有効な支援を行うためには、各自治体との連携や、国による各自治体の支援策のバックアップが必要と考えられる。各自治体との連携状況および各自治体への支援策について、実施もしくは検討しているのか、実施・検討している場合は概要を含めて示されたい。

五 経済や雇用の状況の急変によって親が経済的に困窮し、子どもが学校を中退せざるを得ない状況を未然に防ぐためには、安定した雇用環境を生み出すことがもっとも大切であるが、同時にそのような状況に陥る可能性が高い不安定な労働環境におかれた親、例えば派遣労働に従事する親を持つ子どもがどの程度存在するのかをある程度は把握し、あるいは少なくとも推計するためのデータを用意しておく必要があると考えられる。現在、政府としてそのような把握あるいは推計のためのデータを有しているのか。

六 親の失業等は、子どもたちにも様々な影響を与えることが懸念され、経済的支援策と同時に心のケアも求められてくると思われるが、政府としてそのような対応は検討しているのか、検討している場合はその概要を含めて示されたい。

  右質問する。