質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


第百七十回国会答弁書第一四五号

内閣参質一七〇第一四五号
  平成二十一年一月九日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員谷博之君提出シベリア抑留問題の最終解決に向けた取組に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員谷博之君提出シベリア抑留問題の最終解決に向けた取組に関する質問に対する答弁書

一から三まで及び五について

 政府は、ロシア連邦政府との間で、捕虜収容所に収容されていた者に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定(平成三年外務省告示第三百十一号。以下「協定」という。)に基づき、遺骨の収集、墓参、資料調査、慰霊碑建立等の様々な取組を行ってきており、一定の成果を上げているものと認識しているが、これらの取組を更に効果的に実施すること等を目的として、いわゆるシベリア抑留問題に関する日露協議(以下「日露協議」という。)をこれまで三回にわたり実施したところである。
 平成二十年十月に行われた御指摘の第三回日露協議においては、これまでの協議に引き続き、協定に基づく取組等に関する議論が行われ、いわゆるシベリア抑留問題に両国が真摯に取り組んでいくことが両国民間に真の信頼関係を築いていく上でも不可欠であり、そのためにも、協定に基づき、抑留中死亡者の名簿、埋葬地に関する資料等の課題についての取組を着実に進めることが重要であるとの認識で一致したほか、これらの課題に関する協力を更に強化していくことで一致した。
 お尋ねの第四回日露協議の日程等については、現時点では決まっていないが、政府としては、今後とも、協定に基づく取組を更に効果的に実施すべく、様々な機会をとらえてロシア連邦政府との間で協議を行っていく考えである。

四について

 いわゆるシベリア抑留中死亡者のうちには、ロシア連邦政府等からいまだ資料が提供されていない者が相当数あることから、当面は、協定に基づく日露両政府の協力の下、これらの者についての情報の把握につながる資料の調査に注力してまいりたい。

六から十までについて

 いわゆるシベリア抑留者の呼称の問題については、政府として、抑留の経緯及び抑留者団体の要望を踏まえ、「抑留者」の呼称を用いるようロシア側に求めてきており、御指摘の第三回日露協議においても、我が方からこの問題を提起したが、ロシア側の受け入れるところとなっていない。
 政府としては、いわゆるシベリア抑留は、人道上問題であるのみならず、当時の国際法に照らしても問題のある行為であったと認識しており、「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルヘシ」とするポツダム宣言第九項に違反したものであったと考えている。また、いわゆるシベリア抑留が発生した当時の国際法上、一般に、敵の権力下に入った軍人及び軍属は捕虜として扱われ、捕虜としての待遇を受け得るものであり、旧ソヴィエト社会主義共和国連邦によって抑留された我が国の軍人及び軍属についても、呼称の問題は別として、国際法上正当な人道上の待遇を受ける権利を有していたと考えている。
 政府としては、このような問題意識に立脚して、いわゆるシベリア抑留に関する諸問題についての取組の改善をロシア側に働きかけていく考えである。

十一について

 北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律(平成十四年法律第百四十三号)における拉致とは、日本国内外において、本人の意思に反して行われた、主として所在国外移送目的拐取(刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百二十六条)その他の刑法上の略取及び誘拐に相当する行為をいう。

十二について

 いわゆるシベリア抑留の問題とお尋ねの「拉致」を単純に比較することは適当ではないと考えるが、政府としては、いわゆるシベリア抑留は、人道上問題であるのみならず、当時の国際法に照らしても問題のある行為であったと認識している。

十三について

 御指摘の「シベリア抑留問題の幕を引く」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、総務省においては、独立行政法人平和祈念事業特別基金(以下「基金」という。)の解散までの間、基金による慰藉事業を引き続き推進するとともに、基金の解散後も、基金が保有する資料の記録・保存等の事業を適切に実施してまいりたい。また、外務省及び厚生労働省においては、協定に基づき、いわゆるシベリア抑留中死亡者に関する資料の調査等について引き続き努力してまいりたい。

十四について

 いわゆるシベリア抑留中死亡者に関する資料については、協定に基づき、日露協議のほか、ロシア連邦の政府関係機関との間の個別の協議等を通じて提供を求めてきているところであり、政府としては、引き続きこれらの資料の速やかな提供をロシア側に求めていく考えである。

十五について

 いわゆるシベリア抑留中死亡者に関する資料の調査については、協定に基づきロシア連邦政府が行う資料の探索等に引き続き協力していくこととしており、現時点では、御指摘のような方法による調査を行うことは考えていない。

十六について

 いわゆるシベリア抑留中死亡者に関する資料は、これまですべてロシア連邦等の政府関係機関から提供を受けている。我が国政府にいまだ提供されていない関係資料は、基本的にロシア連邦の政府関係機関に保管されているものと考えており、ロシア連邦政府において、これら機関の保管する資料の探索を尽くすことが優先されるべきであると考えていることから、現時点では、御指摘のような方法による情報の募集を行うことは考えていない。