質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一四一号

内閣参質一七〇第一四一号
  平成二十年十二月二十六日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員近藤正道君提出東京電力柏崎刈羽原発の敷地及び敷地周辺の地殻構造運動に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員近藤正道君提出東京電力柏崎刈羽原発の敷地及び敷地周辺の地殻構造運動に関する質問に対する答弁書

一の1の(一)から(四)までについて

 地震の発生時、発生後の別にかかわらず、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の柏崎刈羽原子力発電所の基礎岩盤が十分な安全性を有することについては、同発電所の原子炉設置許可に係る安全審査の過程において、科学技術庁(当時)が、発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針(昭和五十二年六月十四日原子力委員会)を踏まえて確認しており、また、同発電所の二号機から七号機までの設置の際に行われた、同発電所の原子炉設置変更許可に係る安全審査の過程においても、通商産業省(当時)が、平成十八年の改訂前の発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(昭和五十六年七月二十日原子力安全委員会決定)及び原子力発電所の地質、地盤に関する安全審査の手引き(昭和五十三年八月二十三日原子炉安全専門審査会。以下「安全審査の手引き」という。)を踏まえて確認している。
 なお、同省は、同発電所の原子炉設置変更許可に係る安全審査の過程において、隣接するタービン建屋の重量により生じる原子炉建屋の不同沈下量について評価を行っており、その数値は、二号機については約二センチメートル、三号機については約四センチメートル、四号機については約三センチメートル、五号機については約三センチメートル、六号機については約四センチメートル、七号機については約五センチメートルである。

一の2の(一)について

 原子力安全・保安院においては、平成十九年新潟県中越沖地震(以下「中越沖地震」という。)後の平成二十年二月及び同年八月に東京電力が実施した、柏崎刈羽原子力発電所の建屋の水準測量の結果について、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会耐震・構造設計小委員会地震・津波、地質・地盤合同ワーキンググループ(以下「合同WG」という。)の委員の意見を踏まえ、評価を行った。

一の2の(二)について

 原子力安全・保安院としては、平成二十年二月に東京電力が実施した水準測量の結果と中越沖地震前の水準測量の結果の比較により認められた柏崎刈羽原子力発電所の建屋の不同隆起の原因は、中越沖地震に伴う地殻変動によるものと考えているが、同年八月に東京電力が実施した水準測量の結果と同年二月の水準測量の結果の比較により認められた微少な不同隆起及び沈下の原因は、特定していない。

一の2の(三)について

 地震の発生時、発生後の別にかかわらず、柏崎刈羽原子力発電所の地盤が十分な安全性を有することを確認する際の根拠となる指針等は、平成十八年の改訂後の発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(平成十八年九月十九日原子力安全委員会決定)及び安全審査の手引きである。

一の2の(四)について

 原子力安全・保安院においては、現在、合同WGの委員の意見を踏まえ、柏崎刈羽原子力発電所の建屋の地盤の支持性能について、評価を行っているところである。

一の3の(一)及び(二)について

 全国の原子力発電所のうち、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所、福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所においては、東京電力が定期的に原子炉建屋及びタービン建屋の水準測量を実施しており、また過去には、日本原子力発電株式会社の東海第二発電所においても、同社が原子炉建屋及びタービン建屋の水準測量を実施していたと承知している。これらの水準測量の結果については、両社のホームページに掲載されていると承知している。

一の3の(三)について

 御指摘の原子力安全・保安院の職員による説明は、中越沖地震により柏崎刈羽原子力発電所の敷地に地盤変動が認められたことは原子力安全・保安院としても認識しているが、国土地理院が行った観測によれば、地盤の隆起及び沈降は地震の有無にかかわらず全国的に生じている事象である、との趣旨でなされたものである。

二の1の(一)について

 柏崎刈羽原子力発電所の原子炉設置許可申請書及び原子炉設置変更許可申請書(以下「原子炉設置許可申請書等」という。)に添付された新第三紀層上限面等高線図、安田層上限面等高線図及び番神砂層上限面等高線図では、谷や尾根を特定することができ、また東京電力が合同WGの第十八回会合に提出した「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所 敷地及び敷地近傍の地質・地質構造に関する補足説明」の十八ページに記載された②―②測線の断面図(以下「補足説明中の断面図」という。)だけでは、谷や尾根を特定することは困難であると承知している。

二の1の(二)について

 補足説明中の断面図から読み取られた②―②測線における西山層の上面の標高と、原子炉設置許可申請書等に添付された新第三紀層上限面等高線図から読み取られた②―②測線における西山層の上面の標高は、両図の作成の基となったボーリング調査の密度が異なることにかんがみれば、必ずしも異なるものではないと考えている。

二の1の(三)について

 補足説明中の断面図において、安田層に挟在する阿多鳥浜テフラ等が真殿坂向斜を横断してほぼ水平に分布していることなどから、真殿坂断層の後期更新世以降の活動は認められないと判断できるため、同断面図を変更させることは考えていない。

二の2の(一)及び(二)について

 原子力安全・保安院は、柏崎刈羽原子力発電所の敷地及び敷地北側の地中における安田層に挟在するテフラを阿多鳥浜テフラと同定した東京電力による調査の妥当性について確認し、また、東京電力によるボーリング調査により得られたテフラのサンプルを合同WGの委員と共に現地で確認することなどにより、水成の環境で堆積した安田層に挟在する阿多鳥浜テフラ等が真殿坂向斜を横断してほぼ水平に分布していることを確認した。このため、東京電力に対して、阿多鳥浜テフラの堆積環境の把握のために、改めて調査を指示することは考えていない。

二の3の(一)から(三)までについて

 原子力安全・保安院としては、御指摘の「①海成の高位段丘が米山海岸で標高七〇メートル、椎谷海岸で標高六〇メートルである、②北―2測線での中位段丘形成時の汀線高度は海岸部で五〇メートル、平野部分で三五メートル、平野東側の丘陵部で四〇メートルである」ことについては確認しているが、それぞれの段丘の隆起速度については評価を行っていない。なお、米山海岸付近の海成段丘の標高が周辺よりも高く、また南西方向にかけて高くなっていることには、F―B断層、F―D断層、高田沖断層、高田平野東縁断層などの活動による地殻変動が寄与していると考えている。

二の3の(四)について

 原子力安全・保安院としては、御指摘の「高位段丘形成同時期とされる火山灰が六〇~七〇メートルの標高差で存在する」ことについては承知していない。

三の1及び2について

 西元寺北の中山段丘面については、原子力安全・保安院の職員及び合同WGの委員が現地調査を行ったが、段丘面が小規模なこと、起伏が認められること等から、段丘面が西傾斜かどうかは判断できなかった。

三の3について

 原子力安全・保安院としては、西元寺北の中山段丘面の標高については調査していないことから、御指摘の「中山段丘面と崖崩露頭の番神砂層下部水成層の標高が一〇~二〇メートルも異なる事実」については承知していないが、柏崎刈羽原子力発電所の敷地及び敷地北側の地中において、安田層に挟在する阿多鳥浜テフラ等が真殿坂向斜を横断してほぼ水平に分布していることなどから、真殿坂断層の後期更新世以降の活動は認められないと判断しており、西元寺北の中山段丘面の標高又はその隆起量に関する知見は、真殿坂断層の活動性の判断に影響を与えるものではないと考えている。

四の1について

 御指摘の③から⑦までの項目のうち、③については、原子力安全・保安院の職員及び合同WGの委員が現地調査を行い、中越沖地震後の勝山地区集会場一帯の農道冠水の状況を確認した。④については、原子力安全・保安院の職員が現地調査を行い、中越沖地震による寺尾排水路の損傷を確認した。⑤については、原子力安全・保安院の職員及び合同WGの委員が現地調査を行ったが、段丘面が小規模なこと、起伏が認められること等から、段丘面が西傾斜かどうかは判断できなかった。⑥については、御指摘の「真殿坂断層西側露頭」がどの露頭を指すのか必ずしも明らかではないが、真殿坂断層の西側に認められる露頭のうち番神砂層下部水成層の標高に係る東京電力及び地元団体の主張が異なっているもの等について、原子力安全・保安院の職員、合同WGの委員、東京電力及び地元団体等が現地調査を実施し、東京電力及び地元団体の主張について確認した。⑦については、調査を行っていない。
 なお、③から⑥までの項目に関するいずれの調査においても、真殿坂断層の後期更新世以降の活動を示唆する知見は確認されなかった。

四の2及び3について

 原子力安全・保安院としては、柏崎刈羽原子力発電所の敷地及び敷地北側の地中において、安田層に挟在する阿多鳥浜テフラ等が真殿坂向斜を横断してほぼ水平に分布していることなどから、真殿坂断層の後期更新世以降の活動は認められないと判断しており、西元寺北の中山段丘の標高又は隆起量に関する知見は、真殿坂断層の活動性の判断に影響を与えるものではないと考えている。このため、今後、西元寺北の中山段丘面の標高について調査を行うことは考えていない。

五の1の(一)及び(二)並びに五の2の(一)及び(二)について

 原子力安全・保安院としては、柏崎刈羽原子力発電所の敷地及び敷地北側の地中において、安田層に挟在する阿多鳥浜テフラ等が真殿坂向斜を横断してほぼ水平に分布していることなどから、真殿坂断層の後期更新世以降の活動は認められないと判断しており、沖積層の基底の標高に関する知見は、真殿坂断層の活動性の判断に影響を与えるものではないと考えている。このため、今後、北―1測線及び北―2測線における沖積層の基底の標高について調査を行うことは考えていない。
 なお、刈羽平野については、反射法地震探査やデジタル標高モデル等を用いた調査により、柏崎刈羽原子力発電所の耐震設計上考慮すべき活断層はないと評価している。

五の3の(一)及び(二)について

 刈羽平野における沖積層及び洪積層の基底の標高の把握を目的とした調査及び評価は行われていないが、刈羽平野については、反射法地震探査やデジタル標高モデル等を用いた調査により、地下深部に連続する断層が認められないことを確認し、柏崎刈羽原子力発電所の耐震設計上考慮すべき活断層はないと評価しており、沖積層及び洪積層の基底の標高について調査及び評価を行うことは考えていない。

六の1から3までについて

 洪積丘陵の段丘面の標高については、東京電力が調査及び評価を行っている。
 沖積面の標高については調査及び評価が行われていないが、原子力安全・保安院としては、東京電力による洪積丘陵の段丘面の調査及び反射法地震探査の結果から、刈羽平野には柏崎刈羽原子力発電所の耐震設計上考慮すべき活断層はないと評価しており、沖積面の標高について調査及び評価を行うことは考えていない。

七の1から3までについて

 柏崎刈羽原子力発電所の原子炉設置許可時及び原子炉設置変更許可時において、御指摘の出雲崎町における相場川の河川争奪及び地殻構造運動に関する調査及び評価は行なわれていないが、同発電所の敷地の中心から半径三十キロメートル以内に位置する寺泊・西山丘陵において、同発電所の耐震設計上考慮すべき活断層や活褶曲は認められないことから、原子力安全・保安院としては、当該調査及び評価を行うことは考えていない。