質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一一〇号

内閣参質一七〇第一一〇号
  平成二十年十二月九日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員紙智子君提出蛍光灯水銀の回収及び適正処理に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出蛍光灯水銀の回収及び適正処理に関する質問に対する答弁書

一の1について

 一般家庭が排出する使用済みの蛍光灯については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「法」という。)第六条の二第一項に基づき、市町村が自ら又は中間処理業者に委託して、処理を行っている。また、事業者が排出する使用済みの蛍光灯については、法第十一条第一項に基づき、事業者が自ら又は法第十四条第一項若しくは第六項に定める許可を受けた者若しくは法第十五条の四の三第一項に定める認定を受けた者に委託して、処理を行っている。
 使用済みの蛍光灯からの水銀の除去及び回収については、一般的には、蛍光灯の破砕及び洗浄により生じた水銀を含む汚泥を焙焼して水銀を気化させ、その後冷却等の過程を経ることにより行われており、回収された水銀は新たな蛍光灯、水銀試薬等に再生利用されているものと承知している。また、使用済みの蛍光灯のガラスについては、蛍光灯の破砕及び洗浄を経て生成されたガラスカレットが、ガラスウール、セメント等の原料に再生利用されているものと承知している。

一の2について

 御指摘の蛍光灯水銀処理業者については、政府として網羅的には把握していないが、野村興産株式会社、JFE環境株式会社、株式会社ジェイ・エム・アール、株式会社神鋼環境ソリューション、株式会社ジェイ・リライツ等があると承知している。また、これらの業者ごとの年間の水銀の回収量については承知していない。

一の3について

 事業者から排出される使用済みの蛍光灯は、他の産業廃棄物とあわせて処理されていることから、蛍光灯の量のみを把握することは困難である。
 また、最終処分場に埋め立てられている水銀の量については、使用済みの蛍光灯が、他の廃棄物とあわせて中間処理を経て最終処分場に搬入されるため、これを把握することは困難である。

一の4について

 御指摘の「ガラス製品認定基準書」における「使用済み蛍光灯の九五%は埋立て前に水銀を除去」との記述は、財団法人日本環境協会エコマーク事務局が、ガラス製品をエコマーク対象製品として認定するための基準を策定するに当たり行った情報収集の結果を基に、記述したものであると承知している。また、政府としては、「ガラス製品認定基準書」における同事務局の見解と同様に、スズや水銀を蛍光灯のガラスから除去するための技術の進展は、蛍光灯のガラスの適正な再生利用の促進に資するものと認識している。なお、御指摘の、野村興産株式会社イトムカ鉱業所(以下「イトムカ鉱業所」という。)による「適正処理は一五%」との指摘に係る事実関係については、承知していない。

一の5について

 政府としては、蛍光灯の管内に塗布されている酸化スズが、使用済みの蛍光灯のガラスを新たな蛍光灯のガラスの原料として再生利用することを妨げている原因の一つとなっているとの指摘があることは認識しているが、酸化スズが塗布されている使用済みの蛍光灯のガラスについても、一の1についてでお答えした方法により、ガラスウール、セメント等の原料として再生利用されていることから、酸化スズが使用済みの蛍光灯のガラスの再生利用の支障になっているとは認識していない。
 また、酸化スズが塗布されている使用済みの蛍光灯に用いられている水銀についても、一の1についてでお答えした方法により、新たな蛍光灯、水銀試薬等に再生利用されていることから、酸化スズが水銀の回収の支障になっているとは認識していない。

二の1について

 社団法人日本電球工業会の調査によれば、管内に酸化スズが塗布された蛍光灯であるラピッドスタート形蛍光灯の、平成十五年度から平成十九年度までの五年間における年間生産量の平均は、約五千五百五十四万七千七百本であり、同期間におけるラピッドスタート形蛍光灯の総生産量の一般蛍光灯の総生産量に占める割合は、約十五・三パーセントである。また、平成十四年から平成十八年までの五年間における一般蛍光灯一本当たりの含有水銀量の平均は、約八・二ミリグラムである。
 また、使用済みのラピッドスタート形蛍光灯に含まれる水銀のうち、回収される量及び最終処分場に埋め立てられている量については、使用済みのラピッドスタート形蛍光灯が他の廃棄物とあわせて中間処理を経て最終処分場に搬入されることから、これらを把握することは困難である。

二の2について

 政府としては、特許庁の公開特許公報(昭五五-三一一七)において、ラピッドスタート形蛍光灯に関する従来の技術の説明として、御指摘の記述があることは承知している。当該記述の内容は、ラピッドスタート形蛍光灯の使用に伴い、管の内面に酸化水銀等からなる黒褐色の斑点が生じることを説明したものであると認識している。
 また、一の5についてでお答えしたとおり、酸化スズが塗布されている蛍光灯であるラピッドスタート形蛍光灯についても、水銀及びガラスの再生利用が行われていると承知しており、黒褐色の斑点が水銀及びガラスの再生利用の支障になっているとは認識していない。

二の3について

 社団法人日本電球工業会及びパナソニック株式会社によれば、ラピッドスタート形蛍光灯の使用に伴い、管の内面に酸化水銀等からなる黒褐色の斑点が生じることを認識しているとのことである。

二の4について

 蛍光灯水銀処理業者によれば、洗浄により黒褐色の斑点が除去されていることを、目視により確認しており、黒褐色の斑点は使用済みの蛍光灯のガラスの再生利用の支障にはなっていないとのことである。

三の1について

 北海道庁からは、御指摘の立入検査は、平成二十年六月十六日に、北海道環境生活部環境局循環型社会推進課の職員二名及び北海道網走支庁地域振興部環境生活課の職員二名の計四名が、イトムカ鉱業所における使用済みの蛍光灯の受入状況及び処理状況、使用済みの蛍光灯のガラスの再生状況並びに最終処分場における埋立状況の確認を内容として、イトムカ鉱業所に設置された使用済みの蛍光灯の保管施設、破砕施設、活性炭による水銀等吸着施設、破砕ガラス洗浄施設、ガラス乾燥及びガラス払出し施設、焙焼施設、最終処分場並びに浸出水処理施設について、順に約四時間にわたって行ったものであると聞いている。

三の2について

 北海道庁からは、使用済みの蛍光灯の保管施設においては蛍光灯への黒褐色の斑点の付着状況を確認していないが、焙焼施設等において水銀の回収工程を確認し、また、破砕ガラス洗浄施設から排出されたガラスカレットが汚れのない状態であったことを、目視により確認したと聞いている。

三の3について

 北海道庁からは、御指摘の立入検査により、イトムカ鉱業所においては使用済みの蛍光灯から水銀の回収が行われ、その処理により発生した残さが廃棄物として最終処分場において適正に処理されていることを確認したと聞いている。