質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第九一号

内閣参質一七〇第九一号
  平成二十年十二月二日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員大河原雅子君提出介護保険制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大河原雅子君提出介護保険制度に関する質問に対する答弁書

一について

 厚生労働省としては、被保険者に対し、要介護認定及び要支援認定の申請の日からサービスの利用が可能であることを説明するよう保険者に要請してまいりたい。

二について

 介護予防訪問介護の利用に関しては、本人の状況等を勘案しながら、本人、地域包括支援センター、介護予防訪問介護事業者の三者が話し合い、適切なケアマネジメントが行われ、それに基づいて必要な支援の内容とサービス提供量が決められるものであることから、月単位の定額報酬により必要なサービスの利用等が制限されるものではないと考えているが、今後とも、介護予防訪問介護が適切に行われるよう、指導に努めてまいりたい。

三について

 訪問介護サービスにおける生活援助については、現在、社会保障審議会介護給付費分科会(以下「分科会」という。)において平成二十一年四月の介護報酬の改定に向けて御議論をいただいているところであり、その結果も踏まえ、介護保険料の水準等にも留意しつつ、適切な介護報酬の設定等に努めてまいりたい。
 また、同居家族等がいる場合の生活援助の取扱いについては、御指摘の事務連絡において、適切なケアマネジメントに基づき、利用者の個別具体的な状況に応じて必要なサービスが提供されるべきである旨を市町村等に示しているところであり、今後とも、同居家族等がいることのみを判断基準として、一律機械的に訪問介護サービスに対する介護給付の支給の可否について決定することのないよう、当該事務連絡の周知徹底を図ってまいりたい。

四について

 御指摘の身体介護に係る介護報酬については、平成十五年度の介護報酬改定において、限られた財源を有効に活用するため、当初の設定が実態に即して合理的であったかどうかの検討を踏まえつつ、サービスの効率化・適正化を図る観点から見直しを行ったものであるが、現在、分科会において平成二十一年四月の介護報酬の改定に向けて御議論をいただいているところであり、その結果も踏まえ、介護保険料の水準等にも留意しつつ、その適切な設定等に努めてまいりたい。

五について

 御指摘の院内介助については、「「通院等のための乗車又は降車の介助が中心である場合」及び「身体介護が中心である場合」の適用関係について」(平成十五年五月八日付け老振発第〇五〇八〇〇一号・老老発第〇五〇八〇〇一号厚生労働省老健局振興課長及び老人保健課長連名通知)において、基本的に病院等のスタッフ等により行われるべきものであるが、訪問介護サービスにおける通院等のための乗車又は降車の介助(以下「通院等乗降介助」という。)の前後に連続して身体介護を実施した場合であって、一定の条件を満たす場合には、院内介助を行った時間についても身体介護を行った時間に含めて介護報酬を算定することができることとしており、今後とも、同通知の周知徹底に努めてまいりたい。

六について

 訪問介護員による散歩の同行については、適切なケアマネジメントに基づき、自立支援、日常生活活動の向上の観点から、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うものについては、利用者の自立した生活の支援に資するものと考えられることから、現行制度においても、介護報酬の算定は可能である。

七について

 通院等乗降介助については、利用者が乗車又は降車の際に訪問介護員による介助を必要とする状態であることが前提であり、要支援者については、そのような状態にあることが想定し難いことから、現行制度においては、介護報酬の算定の対象とはしていないところである。

八について

 厚生労働省においては、認知症患者の医療機関・施設別の利用実態や、地域における認知症に対する医療・介護サービス資源の実態等について、平成二十二年度を目途として調査を行うこととしており、その調査結果も踏まえ、認知症高齢者に必要とされる介護保険サービスについて検討を進めてまいりたいと考えている。
 また、認知症高齢者介護に係る介護報酬については、現在、分科会において平成二十一年四月の介護報酬の改定に向けて御議論をいただいているところであり、その結果も踏まえ、適切に設定してまいりたい。

九について

 お尋ねの医療的ケアの内容が必ずしも明らかではないが、一般に、軽微な切り傷等の専門的な判断や技術を必要としない行為等については、医行為ではなく看護師等の資格を有しない訪問介護員等も行うことができるが、病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、これらの行為が医行為に該当すると考えられることもあるため、必要に応じて医師等に確認するなど、医療関係者との適切な連携の下にサービスが提供されることが望ましいと考えている。

十の1について

 御指摘の補足給付については、介護保険施設に入所する者であって低所得者としての一定の要件を満たす者であれば、その支給対象となり得るが、当該利用者自らが基準費用額を超える費用を支払って食事や居室の提供を受けることを希望し、その費用について当該介護保険施設が提示した金額を支払うことに同意している場合にまで、補足給付を支給することは、他の利用者との公平性の観点からも適当ではないと考える。
 利用者と介護保険施設との契約に際しては、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十九号)等において、介護保険施設は、入所申込者又はその家族に対し、入所申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行い、入所申込者の同意を得なければならないこととされており、利用者は食費や居住費の負担も含め提供されるサービスの内容及び利用者の負担等に関する条件について十分理解した上で入所しているものと認識している。
 また、食費や居住費の水準についても、居住、滞在及び宿泊並びに食事の提供に係る利用料等に関する指針(平成十七年厚生労働省告示第四百十九号)において、居住等に係る利用料について、居住環境の違いに応じて室料及び光熱水費に相当する額を基本としつつ近隣の類似施設の家賃等を勘案することとするとともに、食事の提供に係る利用料について、食材料費及び調理に係る費用に相当する額を基本とすることとしているところである。

十の2について

 補足給付については、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)における他の保険給付と同様に、サービスの利用に要した費用に対する給付とされているところであり、その給付に要する費用の負担の在り方についても、他の保険給付と同様とすることが適切であると考えている。

十の3について

 在宅で介護サービスを受ける者と介護保険施設の入所者との負担の公平性の観点から、介護保険施設の入所者の食費及び居住費について、基本的に介護保険法における保険給付の対象外とし、利用者の負担とすることとしたところであり、短期入所生活介護等の居宅サービスを利用する場合においても、これらのサービスを利用しない在宅生活者との負担の公平性の観点から、同様に、利用者の負担とすることとしたものである。
 また、通所介護等や認知症対応型共同生活介護等の利用者については、居住費や食費の負担に関しては、基本的に在宅生活者と異なるものとは考えられないことから、介護保険制度において、補足給付の支給対象とすること等の必要はないものと考える。