質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第七八号

内閣参質一七〇第七八号
  平成二十年十一月十一日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員大河原雅子君提出電磁波による健康影響等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大河原雅子君提出電磁波による健康影響等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 平成十三年度から平成十七年度までに、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会研究評価部会(以下「研究評価部会」という。)において実施された、科学技術振興調整費による取組の中間評価又は事後評価の件数は、四百七十五件である。
 これらの評価は、年度、取組の内容及び評価の時期によって、基本的に三段階又は四段階で実施されたものであるが、これらのうち、すべての評価項目で最低評価を受けたものは、平成十四年度に実施された「生活環境中電磁界による小児の健康リスク評価に関する研究」(以下「本件研究」という。)の事後評価だけである。
 また、その後、平成十八年度及び平成十九年度の評価は四段階で実施されたが、これらのうち、すべての評価項目で最低評価を受けたものはない。

一の2について

 本件研究の事後評価の当時に研究評価部会に所属していた委員のうち、電磁波に関する専門家は北澤宏一科学技術振興事業団専務理事、疫学に関する専門家は田中平三独立行政法人国立健康・栄養研究所理事長(肩書はいずれも当時)である。

一の3について

 平成十四年十一月十八日に行われた、研究評価部会の下に設置された健康・医療研究評価ワーキンググループにおいて、委員から、電磁波と小児の健康との関係を研究するに当たっては様々な課題設定が考えられる中で、なぜ「小児がんだけに集約されてしまったのか」、また高圧送電線等から発生する電磁波だけではなく「今いっぱいパソコンもありますしそんな物に囲まれていますのでそちらの方からやっていただけたら、(中略)分かりやすかった」という発言があったことは事実である。また、疫学研究の評価に際して検討のポイントとなる「セレクションバイアス」について、事務局が発言をしたことも事実である。
 しかし、本件研究の事後評価は、同ワーキンググループの席上のみならず、その後の評価書の作成過程において、「セレクションバイアス」の件も含めて、電磁波、疫学、公衆衛生学等の専門家を含む委員全員による専門的な検討を経て決定されたものである。

二について

 政府としては、御指摘の事例については承知していない。
 また、超低周波電磁界の健康影響に関する世界保健機関(以下「WHO」という。)の正式見解を示した文書は、ファクトシートのナンバー三百二十二(以下「WHOファクトシート」という。)である。WHOファクトシートにおいては、超低周波磁界とがんとの因果関係があるといえるほどの証拠は見当たらないとの見解が示されており、また、WHOの専門家チームが作成した文書である環境保健基準のナンバー二百三十八において示されている、既存の電力設備に係る御指摘の見解は採用されていないものと承知している。

三について

 御指摘の百七十キロボルト以上の超高圧送電線における逆相化の適用状況については、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会電力安全小委員会電力設備電磁界対策ワーキンググループ(以下「電力設備電磁界対策ワーキンググループ」という。)において、電気事業者の代表として参加している委員からその概況の報告を受けたが、逆相化の実施年次及び実施済みの箇所については、報告を受けていない。
 また、お尋ねの国内送電線について「一〇〇〇mGを超えている場所」とは、磁界が百マイクロテスラを超えている場所のことを指すと考えられるが、これについては、電線ケーブルの地中からの立ち上がり部において、その表面が局所的に百マイクロテスラを超える場合があることは承知しているが、具体的な場所については承知していない。また、「電場三kVを超えている場所」とは、電界が三キロボルト毎メートルを超えている場所のことを指すと考えられるが、これについては、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)に基づく電気設備に関する技術基準を定める省令(平成九年通商産業省令第五十二号)第二十七条に基づき、原則として、地表上一メートルにおける電界の強さが三キロボルト毎メートル以下となるように超高圧送電線を施設すべきことを、事業用電気工作物を設置する者に義務付けているところである。

四について
 電力設備電磁界対策ワーキンググループが平成二十年六月三十日に取りまとめた報告書において、御指摘の電磁界情報センターの設立に係る提言がなされたことを踏まえ、財団法人電気安全環境研究所において、学識経験者、消費者を代表する団体、マスコミ関係者、電気事業者等が参加して、同センターの中立性を確保するための組織及び運営体制の在り方について検討がなされ、平成二十年十一月四日、同センターの開設に至ったものと承知している。
 経済産業省としても、同センターの中立性については重要であると認識しており、同センターの運営状況については、学識経験者、消費者を代表する団体、弁護士等から構成される、同センターから独立した組織によるチェックを通じてその中立性が確保されていくものと承知している。

五の1について

 政府としては、御指摘のような内容が報道されたことは承知しているが、報道内容の事実関係については確認していない。

五の2及び3について

 WHOファクトシートにおいて、超低周波磁界とがんとの因果関係があるといえるほどの証拠は見当たらないとの見解が示されたことを受け、電力設備電磁界対策ワーキンググループが電力設備から発生する超低周波磁界とがんとの因果関係について検討した結果、その報告書において同様の見解が示された。これを踏まえ、政府としては、御指摘の地域を含めた各地域における実態把握等を行う必要性は低いと考えている。

五の4について

 電力設備電磁界対策ワーキンググループの報告書においては、WHOファクトシートの見解に従い、高レベルの磁界への短期的な曝露によって生じる健康影響については、国際的な曝露ガイドラインの制限値を規制基準値として採り入れる等の諸規定の改正を行うべきであること、また低レベルの磁界による長期的な健康影響の可能性については、規制を導入する場合にはこの国際的な曝露ガイドラインの制限値を無視して、恣意的に曝露制限値の設定を行うことは認められないこと等が、それぞれ提言されている。経済産業省としては、これらの提言を踏まえて、電気工作物の保安及び公共の安全の確保の観点から、電力設備で発生する磁界への規制を検討しているところである。

六について

 御指摘の「電磁波過敏症が初発症状として考えられた七症例」及び「電磁波と生体:文献的考察…最近の研究を中心として…」は、いわゆる電磁過敏症が疑われる症例を報告し、また電磁波による生体への影響に関し文献的考察を行ったものである。いわゆる電磁過敏症については、現段階では確立された疾病の概念になっていないものと認識しており、引き続き国内外の動向を見守ってまいりたいと考えている。

七について

 「告発・電磁波公害」の御指摘の部分の内容に関し、現時点で文部科学省として把握している限りでは、文部省(当時)監修の季刊誌「教育と施設」への御指摘の記事(以下「本件記事」という。)の掲載を巡り、当時同誌の編集委員会の委員及び同委員会の下に置かれた編集幹事会の幹事であった文部省職員二名が、本件記事は掲載に当たり通常経るべき編集委員会の議を経ていないこと、及び本件記事で述べられている電磁波の人体への影響については未だ科学的知見が明らかでないことを理由として、同誌の編集及び監修に携わる立場から、本件記事を掲載しないよう編集長に要請したものと承知している。また、この二名は、当時の大臣官房文教施設部技術参事官及び同部指導課企画調整官である。

八について

 御指摘のとおりである。