質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第四〇号

内閣参質一七〇第四〇号
  平成二十年十月十日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員又市征治君提出米軍兵士の犯罪にかかる文書の国立国会図書館での閲覧に対する行政府の侵害に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員又市征治君提出米軍兵士の犯罪にかかる文書の国立国会図書館での閲覧に対する行政府の侵害に関する質問に対する答弁書

一について

 一般に、国立国会図書館(以下「国会図書館」という。)をはじめとする図書館の利用者個人に関する情報は、適切に保護されるべきものと考えている。

二について

 御指摘の「図書館の運営倫理、および個人の利用権」の内容が明らかでないので、お答えすることは困難である。

三について

 国立国会図書館法(昭和二十三年法律第五号)第二条において、「国立国会図書館は、図書及びその他の図書館資料を蒐集し、国会議員の職務の遂行に資するとともに、行政及び司法の各部門に対し、更に日本国民に対し、この法律に規定する図書館奉仕を提供することを目的とする」と規定されているところ、こうした国会図書館の役割等については、十分に尊重されるべきであると考えている。
 しかしながら、例えば、国会図書館に、公開することにより個人の人権や国の安全等を害するおそれがある資料があり、これが公開されていることが判明した場合に、各府省庁が、その所掌事務に応じて、国会図書館に対し、利用の制限をするよう申し出るなどしてそのようなおそれを解消するよう適切な努力を行うことは、御指摘のような「三権分立を侵すもの」ではないと考えている。

四について

 お尋ねの合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料(以下「本件資料」という。)は、アメリカ合衆国軍隊の構成員等の犯した罪に対する刑事裁判権の行使に関し、これら犯罪の捜査・公判を担当する検察官の執務の参考に供するため、法務省刑事局が作成した内部資料である。本件資料には、米国との間の協議の内容や刑事裁判権の行使に関する記載があり、これを公にすることにより、米国との信頼関係が損なわれるおそれがあり、また、捜査・公判の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、秘密文書に指定されているものである。
 国立国会図書館資料利用規則(平成十六年国立国会図書館規則第五号)第八条は、「館長は、人権の侵害等により利用に供することが不適当と認められる資料の利用の制限(利用を禁止し、又は利用について一定の条件を付することをいう。以下同じ。)をすることができる」と規定し、また、国立国会図書館資料利用制限措置等に関する内規は、このような利用制限は資料の著作者の申出により行うものと規定している。法務省としては、同規則及び内規に基づき、利用の制限を行うよう申し出たものであり、御指摘は当たらないものと考えている。

五から八までについて

 すべての事例について網羅的にお答えすることは、関係する情報をとりまとめた資料が存在せず、また、新たに調査を行い確実な調査結果を得るためには膨大な作業を必要とすることから困難である。

九について

 一般に、図書館の自主的な管理、運営については、十分に配慮されるべきものであるが、図書館の蔵書に人権を侵害するおそれがあること等により利用に供することが不適当と認められる資料があることが判明した場合に、各府省庁が、その所掌事務に応じて、そのようなおそれを解消するよう適切な努力を行うことは許されるものと考えている。

十について

 平成二十年十月六日現在で、国会図書館に在籍している者のうち、警察庁の職員であった者が一名、文部科学省の職員であった者が一名、国土交通省の職員であった者が九名である。
 また、同日現在で、外務省に在籍している者のうち、国会図書館の職員であった者は一名であり、国土交通省に在籍している者のうち、国会図書館の職員であった者は二名である。
 行政府・立法府の相互の独立性について、お尋ねのような内規・協定はないが、国立国会図書館法第十条第二項本文の規定により、国会図書館の職員は各府省の職員等との兼職が禁止されている。