第170回国会(臨時会)
答弁書第二六号 内閣参質一七〇第二六号 平成二十年十月十日 内閣総理大臣 麻生 太郎
参議院議長 江田 五月 殿 参議院議員近藤正道君提出国家賠償法第一条第二項に基づく求償権行使事例に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員近藤正道君提出国家賠償法第一条第二項に基づく求償権行使事例に関する質問に対する答弁書 一について 過去十年間において国家公務員の違法行為を理由として国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)第一条第一項に基づき損害賠償請求訴訟が提起され、国に訴状が送達された訴訟の全件数については、調査に膨大な作業を要するため、お答えすることは困難であるが、法務省において、平成十九年一月から平成二十年六月までの間について取り急ぎ調べたところ、現時点で確認できる範囲では、平成十九年は七百五十件、平成二十年一月から六月までの間は六百件である。 二について 過去十年間において国家公務員の違法行為を理由として国家賠償法第一条第一項に基づき提訴され、国の敗訴(一部敗訴を含む。)が確定した訴訟の全件数及びその賠償額の合計等については、調査に膨大な作業を要するため、お答えすることは困難であるが、法務省において、平成十九年一月から平成二十年六月までの間について取り急ぎ調べたところ、現時点で確認できる範囲では、平成十九年に確定した右件数は十八件、認容された賠償額の元本の合計額は一億三千六百六万七千五百十八円であり、平成二十年一月から六月までの間に確定した右件数は十一件、認容された賠償額の元本の合計額は千五百六十一万五千九百三十三円であった。各事案の概要は、以下のとおりである(括弧内は認容された賠償額である。)。 (1) 平成十九年 ① 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(二万円) ② 検察事務官が被害者の被害感情等について虚偽の電話聴取書を作成したとするもの(五万円) ③ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(三万円) ④ 刑務所職員が弁護士の接見を妨害したとするもの(十五万円) ⑤ 旧国立大学総長が情報公開請求について違法な不開示決定等をしたとするもの(四十万円) ⑥ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(二十万円) ⑦ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(四十四万円) ⑧ 拘置所職員が弁護士の接見を違法に拒否したとするもの(百十万円) ⑨ 刑務所職員の受刑者に対する医療行為に過誤があったとするもの(七十万円) ⑩ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(三千円) ⑪ 刑務所職員が受刑者の所持品を紛失したとするもの(五十五万円) ⑫ 検察官の公訴提起が違法であったとするもの(百九十六万千三十九円) ⑬ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(四万円) ⑭ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(五万円) ⑮ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(五万円) ⑯ 国税局職員がした差押え等が違法であったとするもの(三十一万三千四百七十九円) ⑰ 旧日本海軍の爆雷の爆発により被害があったとするもの(一億三千万円) ⑱ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(一万円) (2) 平成二十年一月から六月まで ① 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(四万円) ② 自動車検査登録事務所の職員に移転登録手続上の過誤があったとするもの(三十八万九千六百四十八円) ③ 税務署職員が違法な事務処理をしたとするもの(六百万円) ④ 検察官の公訴提起が違法であったとするもの(百万円) ⑤ 検察官が接見交通権を違法に侵害したとするもの(五百五十万円) ⑥ 社会保険事務所の公用車が自転車と衝突したとするもの(百十九万四千三百六十九円) ⑦ 地方整備局職員が入札に関して違法な指示をしたとするもの(五十五万円) ⑧ 刑務所職員が受刑者に違法な処遇をしたとするもの(五万円) ⑨ 旧防衛庁の職員が個人情報を開示したとするもの(十二万円) ⑩ 入国管理センターの職員が被収容者に暴行したとするもの(五十八万二百五十円) ⑪ 国税局職員が他人の財物を破損したとするもの(十九万千六百六十六円) 三について 二についてで述べた二十九件のうち、判決文において、国家公務員の故意が認められたものは(1)②及び(2)⑨の二件であり、重大な過失が認められたものは(1)⑤の一件である。 四について 三についてで述べた三件のうち、(1)②及び(2)⑨の二件については、違法があるとされた公務員の行為が故意によるものであることが明らかであるとして求償権を行使した。他方、(1)⑤については、現時点において求償権を行使していない。 五について 三についてで述べた三件のうち、(1)②及び(2)⑨の二件については、職務上の義務違反等を理由として減給処分を行い、(1)⑤については、訓告及び厳重注意の措置を執った。また、把握している範囲では、(1)②については起訴猶予により不起訴となったが、(1)⑤及び(2)⑨の二件については公訴提起されたとは承知していない。 六について 国が国家賠償法第一条第二項の規定に基づき求償権を取得した場合には、国の債権の管理等に関する法律(昭和三十一年法律第百十四号)第十条から第十二条まで、会計法(昭和二十二年法律第三十五号)第六条等の規定するところに従って、遅滞なく、求償権につき弁済の義務を負う公務員に対してこれを行使すべきものである。 |