質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一三七号

「調査捕鯨」における鯨肉処理問題等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十二月十八日

喜納 昌吉   


       参議院議長 江田 五月 殿



   「調査捕鯨」における鯨肉処理問題等に関する質問主意書

 平成十九年十一月から平成二十年四月まで行われた第二十一次南極海鯨類捕獲調査終了後に、グリーンピースジャパンが鯨肉処理に問題があると指摘した。
 この鯨肉処理問題とは、第二十一次南極海鯨類捕獲調査において、捕鯨船を所有する共同船舶株式会社(以下、「共同船舶」という。)の社員である捕鯨母船日新丸の乗組員十二名が、同船が平成二十年四月に南極海より東京の大井水産物埠頭に帰港した際、ウネスと呼ばれる鯨肉の高級部位を大量に持ち出し横領していたとしてグリーンピースジャパンに告発されたものである。その後、告発を受けた東京地方検察庁は十二名を不起訴とし、捕獲調査の実行主体である財団法人日本鯨類研究所(以下、「鯨類研究所」という。)と共同船舶は連名で水産庁に報告書を提出し、グリーンピースジャパンが指摘するような問題は存在しなかったとしている。
 国際条約に基づき、日本が許可を与え補助金を投入して行っている調査活動である以上、透明性が十分に確保された調査活動へと改善していくことが不可欠であり、政府には国民に対し、調査活動の実態を明らかにし、そのあり方についての見解を示す義務があると考える。そこで、以下質問する。

一 平成二十年七月十八日付けで、鯨類研究所と共同船舶が連名で水産庁資源管理部長宛てに報告書を提出した。この「鯨肉をめぐる問題についての報告書」と題された報告書は三ページであるが、水産庁資源管理部長が受け取ったのはこの三ページの報告書だけか。それ以外の資料や報告書を受け取ったのであれば、その名称と内容を示されたい。また口頭での説明があった場合にもその内容を示されたい。

二 右記の「鯨肉をめぐる問題についての報告書」は、グリーンピースジャパンが示した疑惑を否定するに足る内容であったと考えるか。

三 疑惑はなかったと考えるのであれば、「土産鯨肉」と船員に対して販売する「分譲鯨肉」以外には船員が持ち帰った鯨肉はまったく存在しないということか。またその根拠を示されたい。

四 「鯨肉をめぐる問題についての報告書」に記載されている「土産鯨肉」や船員への「分譲鯨肉」の存在について、水産庁はこの問題がグリーンピースジャパンに指摘される以前に把握していたのか。

五 この報告書の中で、「土産用塩蔵ウネスの船内からの搬出量は船内生産量と一致し、無断の持ち出しは認められなかった」とあるが、船内での土産用塩蔵ウネスの生産量はいくらか。正確な数字を示されたい。また、過去十年間の「土産鯨肉」と「分譲鯨肉」の搬出量と買い取り価格も示されたい。

六 この土産用塩蔵ウネスは配布時に「冷凍」されているものか。それとも常温で渡されるのか。

七 報告書では、乗組員にのみ土産鯨肉が配布されているということになっているが、日新丸に乗船していた鯨類研究所の調査員、もしくは水産庁の監督官も受け取っているのか。また、乗員以外の外部関係者などに土産鯨肉が配布されていたことはないか。

八 これら土産用の鯨肉は、共同船舶と鯨類研究所が厳密に管理してきているとしているようだが、この鯨肉を船員が無断で持ち出すようなことはありえないのか。具体的に、下船直前までどのように土産鯨肉を管理してきたと共同船舶や鯨類研究所から報告を受けているか。

九 土産以外に帰港時に船外へ運び出される鯨肉に関しては、通常は副産物として販売されるための鯨肉の他に、鯨類研究所の研究用サンプルとしての鯨肉が存在すると思われる。これらの鯨類研究所用のサンプルや副産物として販売される鯨肉についても、その量を把握しているのが当然と考えるが、どの程度の量か。

十 右記九のサンプルや鯨肉についても不正な持ち出しがないように厳重な管理がされているのか。これらのサンプルや鯨肉が船員などによってダンボールに入れられ個人的に持ち出されるということはありえないのか。どのようにそれらのサンプルや鯨肉を管理し、帰港後に鯨類研究所に配送しているのか。

十一 平成二十年十月二十日に平成二十年度第二期北西太平洋鯨類捕獲調査が終了したと報告されている。平成二十年度第二期北西太平洋鯨類捕獲調査においても船員への土産や販売用の肉が存在したと報道されているが、それぞれの量を水産庁は把握しているか。把握している場合にはその量と鯨類研究所の販売金額を示されたい。

十二 平成二十年十一月十七日に、南極海鯨類捕獲調査のために日新丸が出港したとされるが、来年の帰港時には何トンが、共同船舶の用意する船員用土産鯨肉となる予定か。

十三 「土産鯨肉」の売り上げは、鯨類研究所の「取得金」として換算されているのか。

十四 換算されているとしたら、それは「公益用」「市販用・市場用」「市販用・一般」のどれにあたるのか。

十五 十一月十日までに共同船舶と鯨類研究所が水産庁に提出した経営合理化案には、鯨の捕獲数の減少に伴い鯨肉の販売数量が減り研究所の資金繰りが悪化したため、捕鯨船の一般公開の中止や浅草の鯨肉専門店「勇新」を二〇一〇年に閉鎖する旨がまとめられたと報道されている。この経営合理化案の内容を詳細に示されたい。

十六 経営が悪化しているのであれば、そもそも乗組員の多くが「必要ないので譲渡する」というような「土産鯨肉」の慣習をやめるべきではないのか。

十七 政府はなぜ、国際的に広く批判・非難されている捕鯨の継続に固執するのか。

十八 平均的日本人家庭の食卓から鯨肉料理が消えて久しい。政府は、日本人の日常的な食材として鯨肉が必要もしくは不可欠と信じているのか。理由とともに見解を問う。

十九 調査捕鯨は、有権者である国民のごく小さな一部の利益・利権のために継続されているという見方が以前から根強く存在する。この点について見解を問う。

  右質問する。