質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一二五号

食中毒事件としての水俣病における政府の対応に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十二月九日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   食中毒事件としての水俣病における政府の対応に関する再質問主意書

 水俣病が食中毒事件としてどのように対処されたのか、事実関係及び法解釈を明確にするため、「食中毒事件としての水俣病における政府の対応に関する質問主意書」を提出したところ、本年十二月二日に答弁を受領した(内閣参質一七〇第九三号)が、当職の質問に正面から答えていない。
 そこで、再度、以下のとおり質問する。

一 先ず、「政府は水俣病事件を食中毒事件と認識しているか。食中毒事件と認識しているのであれば、いつの時点で認識したのか。」との問いに対しては、そもそも食中毒事件と認識しているか否かの回答がない。食中毒事件と認識していたかどうかには答えずに、「水俣病が『水俣湾及びその周辺に棲息する魚介類を多量に摂食することによっておこる主として中枢神経系統の障害される中毒性疾患』であるとの結論に達したのは」、「昭和三十四年十一月十二日の時点」だとしている。
 そこで、再度確認するが、そもそも政府は水俣病を食中毒事件と認識しているか、答弁されたい。そして、その上で、食中毒事件と認識した時期が昭和三十四年十一月十二日だということでよいか、端的に答弁されたい。

二 水俣病が食中毒事件だとすると食品衛生法の適用を受けることになるが、政府の答弁では、「昭和三十一年五月から新たな同病の発症者をみなくなった昭和三十五年までの時期においては」、水俣湾内の特定地域に棲息する「魚介類のすべてが有毒な物質の含まれる食品として同法第四条第二号に該当するとは判断しなかった」としている。
 しかし、仮に昭和三十一年五月から昭和三十五年までの時期に限定したとしても、旅館その他飲食店で発生した食中毒事件においては、提供された食品のすべてが有毒な物質の含まれる食品であるかどうかということを確認して同法第四条第二号に該当すると判断するのではなく、提供された食品のうちのどの食材に有毒な物質が含まれているかが不明であっても、どれかに有毒な物質の含まれる食品が存在していたということのみで同法を適用し、販売等の禁止命令が出されていたのではないか。
 水俣病においては、水俣湾内の特定地域に棲息する魚介類の「すべてが有毒な物質の含まれる食品」として確認されなければ同法の適用はあり得ない、という判断であったのか。そうなると、旅館その他飲食店で発生した食中毒事件における場合とは対応が異なるのではないか。政府の見解を明らかにされたい。

三 食品衛生法第二十七条の規定に基づく届出については、水俣病が「公式に確認された当時」、政府答弁書第一項記載のような「疾患であるかどうかは明らかでなかったことから」、「届出は行われていなかった」と答弁している。しかし、食品衛生調査会による昭和三十四年十一月十二日付答申がなくても、旅館その他飲食店で発生した食中毒事件における取扱いにかんがみれば、具体的な疾患の原因や病名などが判明していない段階でも、同法による届出がなされるべきものではないか。正確な疾患の原因や病名が判明するまで届出は不要ということが、政府の正式な食品衛生法の解釈・運用であるかどうか回答されたい。
 また、正確な疾患の原因や病名が判明するまで届出は不要ということが政府の正式な食品衛生法の解釈・運用であるとしても、前記食品衛生調査会答申の提出を受けた昭和三十四年十一月十二日の時点において、それらは明らかになったのであるから、遅くともこの時点では届出が必要になるはずである。以降、食品衛生法第二十七条の規定に基づく各届出、調査、報告は実行されているか。なされなかったとすれば、何故、食品衛生法第二十七条違反の状態が放置されたのか、その理由と根拠を明らかにされたい。

  右質問する。