質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一七号

大学生の年金保険料負担に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十二月四日

谷岡 郁子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   大学生の年金保険料負担に関する質問主意書

 一九九〇年以降、二〇歳以上の日本国在住者は、その就業の有無に関係なく、原則として年金の掛け金を納入することが義務づけられ、職業に就かず無収入の大学生も原則として年金保険料を支払うこととなった。国民年金法では、第八八条第一項において「被保険者は、保険料を納付しなければならない」とし、同条第二項では「世帯主は、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う」と規定している。同法に基づくと、大学生の場合は、本人の他、親に連帯して保険料を納付する義務が課されることになる。このことは、大学・大学院で勉学中の学生やその親の経済的負担の増加に結びついた。
 本来、我が国の年金は防貧制度のはずである。すなわち年金は、将来の収入の低下に備えて、経済力のある時に保険料というかたちで蓄えておくことによって、将来の貧困の可能性を防ごうという制度である。であるならば、基本的に収入のない大学生に保険料納付を義務づけることは、年金制度の趣旨と目的からして齟齬をきたすものであると考えられる。
 国は、大学生に経済的負担を強いるよりも、勉学に集中できる条件を整え、卒業後に納税者および社会保険の被保険者として、国やその社会保障制度を支えることを求めるべきであろう。そのために、長期的な視野に立って年金をはじめとした社会保障制度の負担をきめ細かく検討することが、防貧のみならず、我が国の成長戦略にもなりうると考えられる。
 よって以下質問する。

一 現行の年金制度では、同一世帯内で扶養されている配偶者は三号被保険者として扱われている。しかし、二〇歳以上の大学生は一号被保険者として扱われている。一号被保険者は、本来は農林水産業従事者や自営業者などを想定している。現行の年金制度が世帯を単位としているなら、基本的に収入がなく親に扶養されている大学生は、配偶者と同じく三号被保険者として扱われるべきであると考える。そもそも、大学生の親は、既に所得に応じて保険料を支払っており、所得に応じた保険料に加え、子である大学生の保険料を支払うことは、年金保険料の二重払いの疑いがある。親に扶養されている大学生がなぜ、一号被保険者として扱われるのか、親が保険料を支払う場合に二重払いにならないのか、説明されたい。

二 現行の年金保険料免除制度では、大学生は対象となっていない。しかし、平成一八年度の学生生活調査によると、アルバイトなど大学生本人の就労による収入は平均三三万円であり、保険料免除制度において単身者が全額免除となる所得基準額の五七万円を大きく下回っている。大学生をあくまで一号被保険者とするならば、本人収入によって保険料を設定すべきであるが、その場合多くの大学生は収入が全額免除基準額を下回ると予想される。大学生を年金保険料免除制度の対象としない理由について説明されたい。

三 大学生を主な対象とした学生納付特例制度は、単身者の場合、本人所得で一一八万円が基準額となっている。しかし、平成一八年度の学生生活調査によると、大学生一人あたりの支出額は年平均約一九〇万円であり、このうち大学納付金が一〇〇万円以上を占めている。日本の大学生の四分の三は私立大学に通っていることを踏まえると、多くの大学生の大学納付金負担額は、一〇〇万円を超えていると考えられる。とすると、大学生が親からの仕送りを受けずに自立して大学に通っている場合、特に私立大学に通学している場合は、基準額一一八万円以内で学費と生活費を工面することはきわめて困難であると考えられる。政府は、この一一八万円という基準額をどのような条件によって算出したのか、データを示して説明されたい。また、この学生納付特例制度はどのような状況にある学生を想定しているのかについても明確に示されたい。

  右質問する。