質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一一号

クラスター弾の廃棄に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十一月二十八日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   クラスター弾の廃棄に関する質問主意書

 対人・対戦車用の空対地爆弾であるクラスター弾は、集束爆弾とも呼ばれるように、数個から二千個位の小さな爆弾を入れた親爆弾を目標の上空で爆発させて子爆弾を広範囲にばらまき、それらが地表に到達すると一斉に爆発するように設計されている兵器である。目標の近くに一般市民がいれば、当然に、無差別に殺傷し、また、目標に命中しなかった子弾の数十%は不発のまま地上や木の枝に残り、放置された結果、戦闘行為の終了後にも一般市民を殺傷する兵器であるが故に、政府はすでに自衛隊が保有するクラスター弾の廃棄方針を決定している。
 ところが、去る十月十九日、航空自衛隊百里基地で行われた航空観閲式において、F15、F2戦闘機の説明の横に、クラスター弾を戦闘機に搭載可能な兵器として一般市民らに公開、展示したと報じられている。防衛省はすでに、来年度概算要求において、クラスター弾の処分方法にかかる調査と、精密誘導能力を有する代替装備品の整備に合計七十五億円を計上しているにもかかわらず、航空自衛隊が、こうした政府の方針に反した展示を企画、実施することは文民統制をないがしろにする行為と言わざるを得ない。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 本年五月十九日から三十日まで、アイルランド政府の主催による、オスロ・プロセスの一環としてクラスター弾に関する外交会議、いわゆるダブリン会議で「クラスター弾に関する条約案」が採択され、日本政府も同意した。この結果、自衛隊が保有するすべてのクラスター弾が廃棄の対象となり、政府も条約の趣旨に従って廃棄する方針を示している。
 しかし、防衛省はこれまで、海岸線の広い日本の防衛には必要としてクラスター弾廃棄には反対の意向を示し、特に本年五月の前記条約案同意の際にも田母神俊雄航空幕僚長(当時)は廃棄には強く反対したと言われているが、その通りか。

二 田母神俊雄航空幕僚長(当時)は、二〇〇七年五月二十五日の定例記者会見で、クラスター弾について、「島国を守るのに大変有効。被害を受けるのは日本国民。占領されることと、どちらがいいか考えた時、防衛手段を持っておくべきだ」と発言したとされる。この発言に対して、「クラスター爆弾の被害を受けるのが日本国民」であるとの指摘があって、再び会見が行われ、「先程の発言が誤解を与えた。国民の頭上に爆弾を落とすことはない」とした上で、「占領される被害よりも不発弾の被害は非常に小さい。国を守れずに人権弾圧などが敵性国によって行われれば、大変な被害が出る。防衛手段は持っているべきだ」との認識を、再度、示したと報じられている。これは事実であるか、事実であるとすれば政府もこうした認識を有しているか、それとも異なる認識であるかを明らかにされたい。また、異なる認識であるというのであれば、右田母神発言のどの点が、どのように異なるのか、明らかにされたい。

三 政府は、クラスター弾を廃棄するという方針を決定したのであれば、この周知徹底はどのようにしているか。特に、防衛省にはどのような指示をしているか。また、どのようにして具体的に廃棄を行っていく予定であるか、明らかにされたい。

四 前記航空観閲式において、F15、F2戦闘機の説明に、クラスター爆弾を搭載可能な兵器として展示したのは何故か。政府の方針が防衛省、特に航空自衛隊には徹底していなかったのではないか。

五 クラスター弾は、要するに、作っては壊すことで税金の無駄使いの典型ではないかと思われる。これまで、クラスター弾の所持、製造にはいくらの費用をかけているか、また、完全廃棄にはいくらの費用を予定しているか、それぞれ明らかにされたい。

  右質問する。