質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇五号

麻薬・覚醒剤等乱用撲滅と依存離脱プログラム等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十一月二十七日

藤谷 光信   


       参議院議長 江田 五月 殿



   麻薬・覚醒剤等乱用撲滅と依存離脱プログラム等に関する質問主意書

 今日の社会問題として、いのちにかかわる重大な問題を含んでいるものが多く存在する。
 自らいのちを絶つ人、凶悪犯罪の低年齢化、さらに麻薬・覚醒剤等の薬物の乱用など、混迷する社会にあって、このような現代の問題を自らのことと考え、現代社会の秩序の回復に貢献していかなければならないと強く思う。
 さて、近年、麻薬・覚醒剤等の薬物乱用が一般の主婦や二十代以下の若年層への広がりを見せていると言われてきたが、現在国内における薬物乱用事犯は増加の一途を辿り、ついに平成十九年度の検挙人数は一万五千百七十五人となり、その内覚醒剤の再犯者が占める割合は五十五%と益々初犯・再犯とも増加傾向にある。
 また、同年度受刑者総数七万五十三人の内薬物依存指導対象者は一万五千八百七十人(二十二・七%)にもなっており、広く一般にも広がっている実態を示している。
 また、大麻やMDMA等合成麻薬事犯件数の七割以上(平成十九年度)を未成年者や二十歳代の若年層が占めており、青少年を中心に乱用されている実態もうかがわれる。
 中でも大麻は、既に今年一月~六月に大麻取締法違反で摘発を受けた一千二百二人(前年同期比十二%増)の内二十代までの若者が六十五%にも上る。特に、近年大学生の使用や栽培による逮捕者が続出し、キャンパス内での売買や使用が横行するなど、薬物のキャンパス内への浸透には危機感を感じざるを得ない。
 青少年は次代を担う貴重な人材であり、このような事態は我が国はもとより広く世界の将来展望を見据えた時、非常に深刻な問題である。
 よって、薬物の密輸、製造及び販売組織の摘発など取締りに重点を置いた「川上」対策とともに、薬物乱用の恐ろしさを訴える教育や啓発活動、そして再犯防止の為の薬物依存離脱プログラム等の、より一層の充実と対策が必要だと考える。
 現在、政府では、本年八月より薬物対策推進本部による「第三次薬物乱用防止五カ年戦略」に取り組んでいるところであるが、現状からするとその体制・内容は万全とは言い難い。
 よって薬物乱用撲滅と青少年健全育成の観点から、以下質問する。

一 巧妙化・広域化・組織化する薬物供給側に迅速かつ的確に対応する為の麻薬取締官体制の充実を含む取締り強化の具体策には不安が残る。特に、個人輸入での大麻の種の取得などが見られるのは、水際対策における各省庁の意識の共有や連携が不十分であることによるのではないかと危惧するが見解を示されたい。

二 薬物供給者は、使用者がいずれは心身共に蝕まれて人生さえ台無しにしてしまい、場合によっては周りを巻き込み新たな犯罪に結びつくかもしれないという、社会的重罪を犯している認識が希薄すぎると思うが、国として薬物密売が重罪であるという意思を示す為にも量刑の在り方を再検討すべき時期に来ているのではないかと考えるが見解を示されたい。

三 薬物使用者も気軽に手を出す傾向が強いと聞くが、例えば飲酒運転においては罰則規定の強化によって検挙数の著しい低下という結果を出している。薬物使用者においては初犯者の多くは執行猶予付き判決を受けており、一方で再犯率の高さが問題にもなっている。この際量刑の見直し、薬物依存離脱指導カリキュラムの実施及び受講の完全義務化等が必要だと考えるが見解を示されたい。

四 大麻取締法において使用の禁止項目が無いことや、従来の医学では検査において大麻の副流煙を吸った場合と大麻を使用した場合との違いが解らなかったことが、とかく使用に関する甘い認識を生む原因ともなった。
 しかし、近来の医学では検査において大麻の副流煙を吸った場合と大麻を使用した場合との違いが解る様になってきたと聞く。
 禁止項目についても、現在の法的解釈によるものではなく、国内の大麻取扱者(都道府県知事許可)を条文で明確に区別した上で、全ての種が発芽出来ない様に処理しなければ例え観賞用であっても売買が出来ないとする等法の明文の規定によって厳密に使用・所持・売買等の禁止項目を設ける必要があると考えるが見解を示されたい。

五 依存者に対し受刑中に薬物依存離脱指導を行うことは非常に効果的だと考えるが、未だ七十六ヶ所の全刑務所への教育専門官・調査専門官の配置が完了していないと聞く。緊急に配備が必要と考えるが、配置計画の促進策について問う。

六 性犯罪者は東京・大阪などに専用の刑務所があり、独自のプログラムによる受刑者教育に成果を上げていると聞く。薬物依存指導対象者は特に精神面を考慮する必要から遠隔地での収容を控えていることは理解出来るが、収容人数の多い大都市圏内において、まずは薬物依存離脱や回復に必要な研究所や医療施設を併設した薬物依存者専用の刑務所を設立し、現在の認知行動プログラムを含む、独自の薬物依存離脱プログラムの研究開発や教育・ケアの可能性を探るべきだと考えるが見解を示されたい。

七 再犯防止の観点から、仮出所後の依存者への離脱の為のプログラムやケアの効果を上げる為、専門的な保護監察官の配置が有効だと思うが如何か。

八 青少年健全育成の観点から考えると、薬物乱用の若年化の実態にかんがみれば、現在の高校までの薬物乱用防止教育の在り方と共に大学や専門学校における教育・啓発活動の充実を考えざるを得ない。大学までの防止教育の義務化をどう考えるか見解を示されたい。また、就職している青少年への啓発活動の強化策を問う。

九 薬物事犯に対し迅速な対応をすべき組織としての国民の期待に沿える体制づくりの観点から、現在の薬物対策推進本部と各省庁の担当課や各都道府県担当者との情報の共有や認識の一致、そして一層の協力体制が必要と考えるが如何か。

  右質問する。