質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇三号

田母神俊雄前航空幕僚長の「日本は侵略国家であったのか」という題で発表された論文に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十一月二十六日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   田母神俊雄前航空幕僚長の「日本は侵略国家であったのか」という題で発表された論文に関する再質問主意書

 田母神俊雄前航空幕僚長が「我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣」等と主張する論文について質問主意書を提出したところ、平成二十年十一月十四日付で答弁がなされた(内閣参質一七〇第八二号)が、極めて不十分と言わざるを得ない。とりわけ同論文については、幕僚長の発言としては不適切との麻生総理大臣及び浜田防衛大臣の批判はあるものの、具体的にどの点がどのように不適切なのかが明らかではない。
 前回の質問主意書では、具体的に同論文の文章を指摘して、どのように不適切であるのか明らかにするよう求めたが、その答弁では、「政府の認識については、平成七年八月十五日及び平成十七年八月十五日の内閣総理大臣談話等において示されてきているとおり」とあるのみで、これではどこがどのように異なる見解なのかが明確ではない。明確な指摘がないからこそ、田母神氏は参議院外交防衛委員会でも、多くの国民が自分を支持してくれているなどと強弁しているのではないか。田母神氏の主張のどこが間違いであるかを一つずつ丁寧に指摘して正していくことが重要である。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 田母神俊雄前航空幕僚長が「日本は侵略国家であったのか」という題で発表した論文(以下、「田母神論文」という。)は政府の考え方と食い違っているとされているが、論文にある次の部分は、政府の考え方と食い違っているか、それともそうではないかを明らかにされたい。政府の考え方と食い違っている場合にはどう違っているのか、政府見解を示されたい。先の答弁では「内閣総理大臣談話等」とされるのみであるから、それぞれ各項目ごとに「談話等」のどの部分とどのように異なるのか逐一明示されたい。

1 日本は「朝鮮半島や中国大陸に軍を進め」たが、「相手国の了承を得ないで一方的に軍を進めたことはない」という部分。
2 「我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者」という部分。
3 我が国は「穏健な植民地統治をした」という部分。
4 日米戦争は「日本を戦争に引きずり込むために、アメリカによって慎重に仕掛けられた罠であった」という部分。
5 「多くのアジア諸国が大東亜戦争を肯定的に評価している」という部分。
6 「我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣」という部分。

二 前回質問主意書の「防衛省内部では、前記第一項の各号に記載しているような趣旨に沿った教育ないし研修を行ったことはないか」という質問に対し、答弁書では「政府の認識とは異なる見解を教えることを目的として、教育又は研修が行われたという事実は確認されていない」とあるが、少なくとも統合幕僚学校「歴史観・国家観」の講座では、政府の認識とは異なる見解を有する複数の講師陣が、政府の認識とは異なる見解を教育指導していたのではないか。こうした講座では、講師陣の人選や講義内容をよく吟味して偏りがないような配慮をすべきと考えるが、政府はこの点をどのように考えているか。

  右質問する。