質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九九号

大学における大麻汚染に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十一月二十一日

谷岡 郁子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   大学における大麻汚染に関する質問主意書

 ここ数ヶ月間の報道によると、慶應義塾大学、早稲田大学、上智大学、東京理科大学、同志社大学などにおいて、学生の大麻汚染が報じられ、逮捕者も出ている。名門大学といわれるこれら大学において大麻汚染が発覚したことは非常に重大な問題であって、日本の将来を担う若者のモラルの低下に歯止めをかけるための手だてを早急に考えなければならない。そのためには、大麻種子の販売規制などの法整備が必要であるが、一方で、これまで麻薬を取り締まる様々な法整備をしてきたにもかかわらず、いまだに麻薬を撲滅できない状況に鑑みると、法規制のみで大麻汚染を完全になくすことは困難と言えよう。
 むしろ、今回の大麻汚染を機に、大学をはじめとする若者を教え育てる環境を見直していくことで、大麻や麻薬に手を出さない、強い人間力を持った若者を育てていくことが必要である。
 本来、学生に対して専門知識と教養の双方を教え、社会を担う人間として育んでいくことは、大学の重要な使命であり、その実現は社会全体にとって必要不可欠なものである。そして、この使命を達成するための各大学の取り組みを支援することは、文部科学行政の重要な課題であり、大学本来の責務である学生の教育に専念できる条件を整えていく政策が求められている。各大学が学生と真剣に向き合った教育を行い、文部科学行政が各大学を支える適切な政策を行ってこそ、強い人間力を持った学生を育てることができ、今回のような大麻汚染をはじめとする学生の不祥事を未然に防ぐこともできるのである。
 しかし近年、大学においては、競争的資金制度や評価制度の導入などにより、本来学生を教育すべき教員が、研究資金獲得やそのための会議、事務書類の作成に追われ、学生の人間形成に必要な指導時間を確保できない状況が生じている。また、旧国立大学、私立大学を問わず、常勤教員を削減し、時間単位でしか教育を行わない非常勤教員へ依存する傾向を強めていることも、学生に対する教育や指導自体の弱体化に結びついていると考えられる。
 このように大学の教員が学生の教育に専念できない状況が、大学における大麻汚染の背景にあると考えられる。大学における大麻汚染は、若者への麻薬・覚醒剤の蔓延、将来的には社会全体における大麻・麻薬・覚醒剤汚染へと結びつきかねない。現在の大学における大麻汚染を将来的な社会不安に結びつけないためにも、法規制と同時に、大学がその使命である学生の人間形成のための教育を可能にする条件整備を行うべきである。
 よって、以下質問する。

一 大麻の種子販売を規制する法整備の必要性について政府の見解を示されたい。また、法整備の必要性を認識している場合、その内容と準備状況についても示されたい。

二 報道では、大学において大麻汚染が突然発生したかのように報じられているが、これは本当に最近の傾向であるのか確認したい。また、各大学から学生の大麻汚染、若しくは麻薬・覚醒剤汚染について政府に報告が届いているのか。届いている場合は、過去二十年にさかのぼって、その件数を示されたい。

三 学生の大麻汚染の背景として、どのような要因があると考えているのか、政府の見解を示されたい。特に、近年の大学をめぐる環境、競争的資金制度の導入や常勤教員の減少が学生の人間教育に悪影響を及ぼしていることが、学生の大麻汚染の背景にあるのではないかと考えられるが、このことについても政府の考えを明示されたい。

四 大学における大麻汚染の問題を解決していくためには、文部科学省、厚生労働省、警察庁等関係機関の連携が欠かせない。現時点で、連携のための態勢はできており、有効に機能しているのかを問う。さらに、そのような連携の中での文部科学省の担うべき役割は何かについても示されたい。

五 大学の大麻汚染について、政府として各大学に対して今後どのような指導や対策のための支援を行うのか、明らかにされたい。また、各大学から大麻汚染対策のための支援の要望が政府に届けられている場合は、その概要を示されたい。

  右質問する。