質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九八号

司法試験の合格者数と法曹人口のあり方に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十一月二十一日

辻 泰弘   


       参議院議長 江田 五月 殿



   司法試験の合格者数と法曹人口のあり方に関する質問主意書

 政府は、平成十四年三月十九日、「自由かつ公正な社会を実現していくためには、その基礎となる司法の基本的制度が新しい時代にふさわしく、国民にとって身近なものとなるよう、国民の視点から、これを抜本的に見直し、司法の機能を充実強化することが不可欠である」として、司法制度改革推進計画を閣議決定した。
 その中で、政府は「現在の法曹人口が、我が国社会の法的需要に十分に対応することができていない状況にあり、今後の法的需要の増大をも考え併せると、法曹人口の大幅な増加が急務となっているということを踏まえ、司法試験の合格者の増加に直ちに着手することとし、後記の法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成二十二年ころには司法試験の合格者数を年間三千人程度とすることを目指す」との方針を決定した。
 この点については、従来、抑制的に取り扱われてきた司法試験の合格者数を飛躍的に増加させるもので、様々な問題を招来するおそれが強いと当初から指摘されてきたところであるが、閣議決定に基づく対応が現実に講じられてきた今日、弁護士の急速な増加により、大都市などを中心に弁護士の飽和状態が生じ、司法修習を修了した弁護士の法律事務所への就職困難が顕在化するとともに、能力・モラルの低下、営利獲得への奔走、好ましからざる領域への進出などの懸念が呈せられるなど、極めて憂慮すべき事態が現実のものとなっている。かかる事態は、政府が掲げた「高度の専門的な法律知識、幅広い教養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹の養成及び確保」という理念の実現に向けたプロセスというには程遠いと言わざるを得ない。
 もとより、国民に良質な法的サービスを提供し、価値観の多様化した現代における法治国家としてのルールに基づいた社会を実現するためには、法曹人口の相当数の確保が必要であるが、それは、公正な社会を築くために求められる知識・教養・人間性・倫理観などの具備が大前提でなければならず、それらを培うことのできる法曹養成の体制を、適切な期間の中で確立していくことが不可欠である。
 このような観点から、以下質問する。

一 過去五年間の司法修習を修了した弁護士の法律事務所への就職状況について政府はどのように把握しているのか。それに対する評価とともに具体的に示されたい。

二 政府は、何故、「平成二十二年ころには司法試験の合格者数を年間三千人程度とする」との計画を作成し、決定したのか。いかなる前提と根拠に基づいて、「年間三千人程度」という具体的数値目標を導いたのか。「年間三千人程度」という決定は、余りにも過大な目標だったのではないか。目標の終期を「平成二十二年ころ」に設定したのは、余りにも性急に過ぎる目標だったのではないか。この終期の設定は、いかなる理由・根拠に基づくものであったのか。政府の見解を具体的に示されたい。

三 大都市などを中心に弁護士の飽和状態が生じ、司法修習を修了した弁護士の法律事務所への就職が困難な状況が生まれている現状について、政府はどのように把握し、判断しているのか。今や、多くの問題が生じてきている現状に鑑み、「平成二十二年ころには司法試験の合格者を年間三千人程度とする」という計画は早急に抜本的な見直しを行うべきものと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 政府は、「平成二十二年ころ」以降の司法試験の合格者数については、どのような方針で対応するつもりなのか、政府の方針を具体的に示されたい。

五 そもそも、政府が掲げる司法試験の年間合格者数の数値目標は、その前提として、我が国において将来にわたり必要となる法曹人口のあるべき総人員数について、国民生活の実態、司法制度利用の状況・動向などを十分に分析した上で策定されなければならないものである。平成十四年の閣議決定は、それに先立つ司法制度改革審議会の意見書の通り、法曹総人口を諸外国並みに増やし、五万人にすることを念頭に置いていたものと考えられるが、この五万人という数値については、いかなる合理的根拠、具体的必要性があったのか。政府の見解を示されたい。

  右質問する。