質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九三号

食中毒事件としての水俣病における政府の対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十一月十九日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   食中毒事件としての水俣病における政府の対応に関する質問主意書

 水俣病は昭和三十一年五月に公式に確認された公害事件ではあるが、その発生メカニズムが政府によって特定されるに至るまでには長い年月を要した。すなわち、チッソ水俣工場から排出された有機水銀を含む廃液によって魚介類が汚染され、その魚介類を摂食した地域住民が神経症状を主訴とする水俣病に罹患したとの政府統一見解が発表されたのは、昭和四十三年九月のことであった。
 しかし、「奇病」水俣病は、公式確認直後の早い時期から伝染性の疾患ではなく、ある種の重金属による中毒と考えられ、水俣湾の魚介類を食べることによって引き起こされた食中毒との共通認識はあった。そこで、水俣病が食中毒事件としてのどのように対処されたのか、事実関係及び法解釈を明確にするため、以下のとおり質問する。

一 政府は水俣病事件を食中毒事件と認識しているか。食中毒事件と認識しているのであれば、いつの時点で認識したのか。

二 水俣病が食中毒だとすると食品衛生法の適用を受けることになるが、政府は食品衛生法に基づく対処をいつからいつまで行なってきたのか。同法の適用を受けないというのであれば、それはなぜか、根拠を示されたい。

三 食品衛生法の適用を前提とすると、水俣病が公式確認された当時の食品衛生法第二十七条によれば、食品等に起因して中毒した患者等を診断した医師は、直ちに最寄りの保健所長にその旨を届け出なければならないが、この点は実行されているか。保健所長は、この届け出を受けたときには調査し、かつ都道府県知事に報告をしなければならないが、この点は実行されているか。都道府県知事は、この報告を受けたときには厚生大臣に報告をしなければならないが、この点は実行されているか。
 それぞれ実行されているとするならば、具体的に誰から誰に対していつどのような形で実行されたか明らかにされたい。またその実行の結果、どのような処理がされたかも併せて明らかにされたい。

四 同様に、当時の食品衛生法第四条によれば、「有毒な、又は有害な物質が含まれ、又は附着している」食品等については、採取や販売等が禁止されているが、この点は実行されているか。実行されているとすれば、具体的にどのような形で実行されたか明らかにされたい。
 もし実行されていないとすれば、食品衛生法に違反することになるのではないかと思われるが、その通りか。その通りだとすれば、食品衛生法違反としてどのような罰則規定の適用その他の違反者に対する処理がなされたか明らかにされたい。また違反者に対する処理がなされなかったとすれば、その理由、根拠を具体的に明らかにされたい。

  右質問する。