質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第八二号

田母神俊雄前航空幕僚長の「日本は侵略国家であったのか」という題で発表された論文に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十一月五日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   田母神俊雄前航空幕僚長の「日本は侵略国家であったのか」という題で発表された論文に関する質問主意書

 田母神俊雄前航空幕僚長が「我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣」等と主張する論文を民間企業の懸賞論文で発表したことが明らかになった。同論文は、日中戦争での日本の侵略や植民地支配を正当化する内容で、浜田靖一防衛大臣は十月三十一日、「政府見解と異なり不適切だ。職にとどまるべきではない」と述べ、同航空幕僚長を同日付で解任した。しかし、この論文は極めて問題であり、更迭すれば良いというものではなく、この際、事実関係や政府解釈を確認する必要がある。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 田母神俊雄前航空幕僚長の「日本は侵略国家であったのか」という題で発表された論文(以下、「田母神論文」という。)は政府の考え方と食い違っているとされているが、論文にある次の部分は、政府の考え方と食い違っているか、それともそうではないかを明らかにされたい。政府の考え方と食い違っている場合にはどう違っているのか、政府見解を示されたい。

1 日本は「朝鮮半島や中国大陸に軍を進め」たが、「相手国の了承を得ないで一方的に軍を進めたことはない」という部分。
2 「我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者」という部分。
3 我が国は「穏健な植民地統治をした」という部分。
4 日米戦争は「日本を戦争に引きずり込むために、アメリカによって慎重に仕掛けられた罠であった」という部分。
5 「多くのアジア諸国が大東亜戦争を肯定的に評価している」という部分。
6 「我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣」という部分。

二 政府は田母神論文の存在をいつ、どのようなことから認識したか。

三 防衛省の内規では論文寄稿については事前の届け出が必要であったにもかかわらず、この手続きをとらなかったと報道されているが、これは事実か。事前に何らの届け出も通知もなかったのか。

四 田母神俊雄前航空幕僚長以外にも前記民間企業の懸賞論文に寄稿した防衛省の公務員がいたと報じられているが、これは事実か。また寄稿した公務員らは事前の届け出をしていたかどうかを明らかにされたい。

五 過去二十年以内に、論文寄稿については事前の届け出が必要とされる防衛省の内規に違反した事例があるか。あればその内容、寄稿者の当時の肩書き、寄稿先、文書の題名及びその概要、報酬・賞金等名目の如何を問わないが金員の受領の有無等を明らかにされたい。また違反に対してはどのような制裁ないし処分がなされたか、それとも全くお咎めなしであったか。

六 防衛省内部では、前記第一項の各号に記載しているような趣旨に沿った教育ないし研修を行ったことはないか。

七 田母神俊雄前航空幕僚長は、田母神論文にあるような内容をこれまで防衛省内部で発言、発表したことはないか。

八 田母神論文は最優秀として賞金三百万円が授与される予定と報じられているが、防衛省内規に違反したうえ、その内容も極めて問題があるから、返上すべきものと考えるが、政府はこうした指導を行ったか、あるいは行う予定があるか。

  右質問する。