質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六五号

ラムサール条約第十回締約国会議における日本政府の対応方針に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十月二十三日

谷岡 郁子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   ラムサール条約第十回締約国会議における日本政府の対応方針に関する質問主意書

 本年十月末から十一月初旬にかけて、ラムサール条約第十回締約国会議(以下「ラムサール条約COP10」という。)が韓国において開催される。二〇一〇年には、日本の名古屋市において生物多様性条約第十回締約国会議(以下「生物多様性条約COP10」という。)が開催されるが、国内での国際会議開催を成功させるためには、国外で開催される国際会議においても日本が一定の貢献を行うことが重要である。とりわけ湿地に関するラムサール条約は、生物多様性条約とも密接に関連しており、会議における日本政府の姿勢は、主張・提案だけでなく、合意形成に向けての態度、情報公開の程度、NGOや環境団体に対する対応を含めて、そのまま生物多様性条約COP10に対する日本政府の姿勢と見なされる。
 その意味で、今回のラムサール条約COP10は非常に重要な会議である。幸いにも日本には、一九九三年に釧路において開催されたラムサール条約の締約国会議(COP5)において「賢明な利用」についての徹底した議論を行い、それ以降の数度にわたる同条約の締約国会議(COP)の議論を方向付けてきた実績がある。今回、日本が同会議にどの程度貢献できるかによって、二〇一〇年の生物多様性条約COP10の開催を含めた今後の日本の環境外交について、各国政府や国内外のNGO・環境団体に評価されることになると考えられる。
 よって、以下質問する。

一 ラムサール条約COP10において、日本政府はどのような主張や提案を行う予定なのか、明示されたい。二〇〇五年に開催された同条約の締約国会議(COP9)では、日本から二十件の湿地が登録され、国内登録湿地数を三十三件と大幅に増加させた。この大幅な増加は、世界全体での登録湿地数を定めた同条約に対する大きな貢献であった。しかし、今回の会議に提出される国別報告書では、二〇一一年までに、国内ラムサール登録湿地をさらに十箇所に増やすという目標を立て、また今回のラムサール条約COP10では四箇所の新規登録がなされると報道されているものの、前回の登録件数に比べて数値的には見劣りし、湿地の保全を目指す環境団体等からは「不十分である」との声が聞かれる。今回のラムサール条約COP10では、この新規登録湿地数に代わる同条約への貢献としての主張や提案、イニシアティブなどを準備しているのか、その内容を含めて説明されたい。

二 前述の登録湿地件数について、環境団体によって登録と保全が主張されている湿地も多く、徳島県の吉野川河口など環境省以外の官庁が所管し、また開発計画による環境への悪影響が懸念されている湿地等が登録の対象外にされていることが、環境団体等の日本政府の同条約に対する態度への不信につながっている。そこで、国土交通省や農林水産省なども国として同条約の目標をしっかりと認識して、その実現に向けて努力すると同時に、環境省以外が所管する湿地・海岸等についても、積極的に精査、評価を行い、ラムサール条約に登録する方針であるのか、確認したい。

三 ラムサール条約は湿地の保全と利用に関する条約であり、実際に国内のどの湿地でどのような実践が行われているのか、あるいは実践が計画されているのかが、ラムサール条約COP10において主張や提案を行うにあたって、重要な根拠となる。そして、その実践には、NGOや環境団体、地域住民の継続的かつ積極的な参加(事業への参加と意思決定への参加の双方を含む)と連携、情報交換、議論などが不可欠である。そこで、これまでのNGOや環境団体との連携状況、そしてラムサール条約COP10における国内外のNGO及び環境団体への対応について説明されたい。特に後者については、ブリーフィングや政府とNGOとの対話の場の設置など具体的な対応についての説明を求める。

四 今回のラムサール条約COP10では、韓国政府が水田に関する宣言を準備しているとの情報を得ているが、その情報が事実であれば、それは二年後の生物多様性条約COP10で日本が提案予定の「里山イニシアティブ」にも関連するものであり、日本政府として宣言を重く受け止めて、具体的な行動を行うことが、国際的な評価にも結びつくと考える。そこで、この宣言に関する情報が事実であるのか、また事実であるならば、ラムサール条約COP10後に宣言に対してどのような具体的行動を行っていく予定なのかを示されたい。

五 日本もその中に含まれるアジアでは、ここ数十年間の人口増と急激な経済発展によって、多くの湿地が失われている。そのため日本のラムサール条約への貢献として、国内ばかりではなくアジア全体でのリーダーシップが求められている。今回のラムサール条約COP10において、アジアでの日本のリーダーシップに関する何らかの提案が用意されているのか。

六 国外で開催される国際会議については、一通りの結果が外務省のホームページに掲載されるものの、どのような議論がなされたかという過程の情報を含め、多くの国民にはあまり知らされておらず、そのため国際会議に対する関心は非常に低いというのが現状である。他方で、日本国内には地域活性化策の一環として「国際会議都市」や「コンベンションシティ」を目指す都市がいくつも存在している。それらの都市の活性化策を支援(より積極的な国際会議の誘致)するためにも、そして、各種の国際会議開催による日本の貢献を世界に示すためにも、国内のみならず国外で開催される国際会議についても、概要や争点をより広く、そしてよりわかりやすく情報公開し、国民の意識や関心を高めていく必要があると思われる。また、事後における結果報告や合意についての説明についても同様の取り組みが有効であると考えられる。そして、そのような取り組みは、国内外での国際会議開催の機会を捉えて、試みを積み重ねていく必要があるが、日本政府としてはどう考えているか。また、ラムサール条約COP10においては、時間の関係上、現時点以降は事後の取り組みが中心にならざるを得ないが、そのような何らかの試みを検討しているのか、検討している場合はその内容を示されたい。

  右質問する。