質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六三号

竹林被害と竹の資源活用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十月二十三日

谷岡 郁子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   竹林被害と竹の資源活用に関する質問主意書

 かつての日本では、竹は人間の生活には欠かせない重要な資源であったが、今日では石油系製品等の普及によって、かつてほど使用されなくなってきている。その一方で、国内には多くの竹林が残っているが、それら竹林は高齢化などの理由から維持管理が困難となり、竹林の拡大による被害が全国各地で発生している。特に、過疎高齢化の度合いが高い中山間地においては、維持管理のための担い手不足は深刻であり、地域社会の維持のためにも、有効な対策が求められている。
 他方で今日、地球環境問題への対応は、緊急の政治課題となっている。特に温暖化対策、石油以外の資源活用の視点から、バイオマス政策は重要課題であり、農林水産省も「農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律」を基本として、バイオマスに関する研究開発と政策展開を積極的に推進しているものと認識している。しかしながら、現在の穀物価格高騰の一因がバイオエタノール生産であることに示されているように、バイオマスの推進は予想外のリスクを伴う可能性があることも事実である。バイオマスに限らないが、リスクに対する予測とそれに対する迅速な対処は、政策の推進と同時に進められなくてはならないと考える。
 先述のように、竹は古来から日本人が利用してきた重要な資源であるが、今日では各地で竹林被害をもたらしており、その被害を防止するために一定の利用が求められている。この竹をバイオマス資源として有効利用をすることは、単なる代替エネルギー開発にとどまらず、地域課題と地球環境問題の解決に結びつく可能性を有しており、またその実現が目指されるべきである。
 よって以下質問する。

一 今日、農林水産省として、竹林被害をどこまで把握しているのか示されたい。また、竹林被害についての調査結果や統計があれば、経年変化を含めて示されたい。

二 前記の竹林被害への対策について、国として、どのような対策を、どの程度実施しているのか。具体的な対策と、その進捗について説明されたい。また、対策が検討段階にある場合には、検討課題を含めて明示されたい。

三 竹林被害への対策として、現代の状況に見合った竹利用を検討すべきであるが、その一環として、バイオマスにおける利用が考えられる。国として、バイオマス政策において竹をどのように位置づけているのか、具体的に明示されたい。特に、バイオマスでの利用については、バイオ燃料(バイオエタノール)の製造と竹を利用した発電(木質発電やガス化炉など)が考えられる。現在は検討段階かもしれないが、そのバイオ燃料製造と発電の双方についての現状、竹を用いた場合に予想されるリスクや問題点とそれへの対策、将来的な展望を示されたい。

四 先述の通り、竹林被害は、特に高齢化の進んだ中山間地の農山村で深刻な問題となっている。バイオマス政策において竹を利用する場合、これら地域の振興と結びつけて実施する必要があると考えるが、農林水産省として、農山村振興策とバイオマス施策をどのように関連づけているのか考えを示されたい。

五 当方が調べたところによると、都道府県のものを含め、試験場など現場に近い農政においては、竹利用のための技術開発の努力がなされている。その努力は尊いものであるが、より多くの国民が竹を利用し、地球環境問題に効果的に寄与するには、竹利用の普及促進に関する政策も必要である。そこで、現段階において、そして今後において、竹利用を普及するどのような策を有し、また検討しているのか示されたい。

六 一九九五年の阪神淡路大震災以降、市民ボランティアが注目され、森林管理においても間伐を行うボランティアグループなどが各地に登場しており、その一部はセミプロ化している。しかし、実際の間伐作業には困難も多く、多くの市民ボランティアにとっては実際の参加が難しい領域である。それに対して、竹林管理(伐採や搬出)は、より多くの市民の参加にとって障壁が高くないと考えられる。実際、地域単位で竹林対策と市民参加を結びつけるような取り組みがなされている。例えば、愛知県小牧市の大草地区では、竹の伐採とアートとを結びつけた「バンブーインスタレーション」が開催され、また愛知県岡崎市の額田地区では伐採した竹を利用して水鉄砲をつくり「竹水鉄砲合戦」を行うという普及啓発活動が実施されている。このような竹林被害に対応する市民ボランティアや地域コミュニティの取り組みを農林水産省としてどこまで把握しているのか、示されたい。また今後、このような取り組みに対して、国としてどのように対応していくのかについてもあわせて示されたい。さらに、竹林対策への市民ボランティア参加と竹のバイオマス利用とを結びつける事例や構想があれば示されたい。

  右質問する。