質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五七号

いわゆる三浦事件における日本政府の対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十月十七日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   いわゆる三浦事件における日本政府の対応に関する質問主意書

 「ロス疑惑」とされたいわゆる三浦事件は、日本の裁判所において、元妻への殴打事件(殺人未遂)については有罪、銃撃事件(殺人)については無罪がそれぞれ確定している。いうまでもなく日本においては一事不再理の法理によって、銃撃事件は二〇〇三年に最高裁判所で無罪が確定した以上、刑事事件として蒸し返しは出来ない。ところが、元被告人三浦和義氏は本年二月、米国自治領サイパンで米捜査当局に逮捕され、ロサンゼルス郡地方裁判所は殺人容疑の逮捕状は無効としたものの、共謀容疑の逮捕状を有効として、結局、同容疑者を本年十月十日にロサンゼルスに移送したところ、同容疑者が自殺するということで終結してしまった。
 しかし、この件に関する日本政府の対応には様々な疑問もあり、日本において判決が確定した刑事事件に関して、今回の米国捜査当局のような捜査行為が今後とも継続するようであれば、一事不再理の原理がないがしろにされかねない大きな問題である。
 そこでこうした事実関係及び法解釈を明確にするため、以下のとおり質問する。

一 日本において判決が確定した刑事事件について、外国政府から再捜査を含めた刑事司法権の発動に向けた捜査共助の要請がなされた場合、一般的にはこれに応じているか、それとも一事不再理を理由に拒否しているか。

二 政府は、外国政府に対する関係で、一事不再理の原理をどのようにとらえているか。この原理は日本国内においてのみ適用されるものであって、外国政府が日本人容疑者に対して刑事司法権を発動しようとするときには、同じ刑事事件であっても一事不再理の原理は外国政府には適用されないから、この原理を理由に日本人容疑者保護は出来ないと考えるか。

三 いわゆる三浦事件では、米国側からの要請に応じて捜査共助を行ったか、行ったとすればどのような共助を行ったか。例えば故三浦氏にとって不利益と思われる刑事事件に関する情報を米側に提供したか。それとも一事不再理を理由に拒否ないしは共助の制限をしたか。

四 仮に故三浦氏にとって不利益な刑事事件に関する情報を同人の承諾なく米側に提供していたとすれば、日本政府が日本人のプライバシーを侵害したことにはならないか、あるいは一事不再理の原理に違反するものではないかと思われるが、どうか。

五 故三浦氏は無罪確定後、各国政府への保護要請が記された旅券を得てサイパンに赴いて逮捕されたわけであるが、日本政府は米側に対して、銃撃事件における一事不再理の原理の主張、釈放交渉その他日本人容疑者保護に向けた取組は行ったか。行ったとすればどのような取組をしたか、それに対する米側の対応はどうであったか明らかにされたい。

  右質問する。