質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四八号

東京電力による柏崎刈羽原発周辺の敷地及び敷地近傍の地質・地質構造に関する補足説明の誤りと誤りに基づく政府の調査・審査のあり方に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十月八日

近藤 正道   


       参議院議長 江田 五月 殿



   東京電力による柏崎刈羽原発周辺の敷地及び敷地近傍の地質・地質構造に関する補足説明の誤りと誤りに基づく政府の調査・審査のあり方に関する質問主意書

 東京電力(以下「東電」という。)は、二〇〇八年九月二四日開催の「総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会耐震・構造設計小委員会第一八回地震・津波、地質・地盤合同ワーキンググループ」(以下「合同WG」という。)において、「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所 敷地及び敷地近傍の地質・地質構造に関する補足説明」(以下「補足説明」という。)を提出した。この補足説明は、地元住民の指摘に対して原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)が東電に指示した追加調査の結果を報告したものと理解する。
 東電は、後期更新世以降、敷地や敷地周辺の地殻構造運動は終息し、真殿坂断層は活動していないとする見解を示し、政府はその調査結果を了承してきた。これに対して、地元住民は、東電見解では説明できない露頭位置や標高の大きな誤りを指摘し、再調査と判断の変更を求めてきた。露頭位置を取り違えていたり、標高が大きく誤っていたとしたら正しい判断はできないのではないか。
 補足説明は全部で七一頁にも及び、一読するだけでも、数々の誤りが見受けられる。
 その誤りを指摘し、誤りが生じた原因は何か、東電説明を調査・審査する現行の政府の体制に問題がないかを問うべく、以下質問する。

一 位置の誤り

 七頁に位置図、九頁にaからjの一〇地点の地元住民の指摘に対する東電見解の総括一覧表が露頭調査結果として付され、一〇頁に西元寺神社南(b)、一一頁に雪成神社西(c)露頭、一二頁に刈羽小丸山(j)が露頭写真とともに付されている。しかし、七頁の位置図ではcは雪成神社裏道角、dが雪成神社西であるので、一一頁の雪成神社西(c)露頭と矛盾する。
 位置を誤れば、地殻構造運動や真殿坂断層の活動評価はできなくなり、合同WGの議論は誤った位置で判断していることになる。
1 政府は合同WGに東電が提出した補足説明の露頭位置に誤りがあることを承知しているか。承知しているならば、いつ知ったか。
2 政府は位置の誤りにどのように対処するか。

二 標高の誤り

 敷地や敷地周辺の地殻構造運動や真殿坂断層の活動性を評価判断するには番神砂層下部水成層の正確な標高把握が必要である。
 地元住民は、露頭は真殿坂断層を境に西側が高く東側が低いと具体的に指摘している。指摘された露頭で番神砂層下部水成層と上部風成層の境界を把握し、その境界の標高を測定しなければならない。仮に、番神砂層下部水成層の上限面の認定と標高の正確な把握がなされていないとすれば、保安院の東電への再調査指示が実施されなかったことになる。
 一〇地点のうち、真殿坂断層の西側に位置する四露頭は数メートルから十数メートルも実際の値より低く表示されているので、一〇地点の露頭の番神砂層下部水成層の上限面の標高等はどのようにして決定したのかが問題となる。
1 根拠となる露頭のスケッチや写真は入手しているのか。
2 番神砂層下部水成層の上限面の認定を政府はどのようにして確認したのか。確認せず、東電の主張に従っただけなら、その理由は何か。
3 番神砂層下部水成層の上限面の標高等は、どのような測定器具を用いて測定したのか。
4 番神砂層下部水成層の上限面の標高の誤りについて、どのように対処するのか。

三 誤った情報に基づく解釈・判断について

 位置を取り違えたり、標高が数メートルから十数メートルも違えば正確な評価判断はできないと考える。
 東電の報告は露頭位置と番神砂層下部水成層の上限面の標高が著しく誤っていることを前記で指摘したが、政府の合同WGは東電の誤った調査報告で審議して評価判断している。
1 誤った露頭位置は訂正するか。訂正しないのであれば、その理由を明らかにされたい。
2 位置を誤っても地殻構造運動や真殿坂断層の活動評価判断に影響しないのか。影響しないとするのであれば、その理由を明らかにされたい。
3 露頭の標高の誤りを訂正するか。訂正しないのであれば、その理由を明らかにされたい。
4 誤った標高でも、地殻構造運動や真殿坂断層の活動評価判断に影響しないか。影響しないとするのであれば、その理由を明らかにされたい。

四 東電調査報告の作成過程について

 地質地盤や地震に関する東電報告は、東電が調査コンサルタントに業務を発注し、コンサルタントの報告の要点をとりまとめて合同WG等に提出していると思われる。
 空中写真で明確に写っており、誰もが容易に確認できる崖崩れ地点の大塚山露頭や正福寺露頭、荒浜の青山稲荷西の長さ七〇メートル余りの亀裂を調査コンサルタントが見落とすとは考えがたい。また、番神砂層下部水成層の標高を調査コンサルタントが数メートルから十数メートルも誤ることは、常識では理解できない。
 しかし、東電報告は、大きな崖崩れや亀裂の表示がなく、表示された標高が数メートルから十数メートルも誤っている。調査コンサルタントがこうした誤りを犯したのなら、それは調査コンサルタントの資質や適格性の問題であり、そのような調査コンサルタントを選任した東電の責任である。
 また、東電報告について、調査コンサルタントの詳細報告を東電が集約する過程で故意の操作がなされて作成されているとすれば、東電の問題であり、改ざん偽装体質が改まっていないこと、対外的に表明している再発防止策が有効でないことを示していることになる。
 いずれにせよ、なぜ大きな亀裂や崖崩れが表示されなかったか、なぜ露頭の番神砂層下部水成層の標高を大きく誤ったのかを把握する必要がある。そのことなくして、東電の不正行為は防止できないと考える。
 合同WGに提出された東電報告の誤りは、調査コンサルタント段階で生じたのか、東電の取りまとめ段階で生じたのかを、調査コンサルタントの報告書を検証して確認する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。確認が不要と判断するなら、その理由も併せて示されたい。

五 国の調査・審査の体制に関して

 中越沖地震後の国の調査・審査は、運転再開を前提にして東電が行った調査報告の記載事項に誤りがないものとして行われている。前記のように東電の調査報告は数々の誤りが見られるが、必ずしも国の調査・審査で誤りは発見・是正されているわけではない。
 この事実は、事業者の調査報告や申請を、検証することなく正しいものとして扱う、現在の国の調査・審査体制の欠陥を表し、その改善が必要なことを示すと考える。
 政府は現行の調査・審査体制を改善する必要性があると考えるか。考えない場合は、その理由を明らかにされたい。

  右質問する。