質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四四号

入院時医学管理加算の見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十月六日

小池 晃   


       参議院議長 江田 五月 殿



   入院時医学管理加算の見直しに関する質問主意書

 本年四月に行われた診療報酬改定により入院時医学管理加算は大幅に再編された(以下、診療報酬改定前の「入院時医学管理加算」を「旧管理加算」、診療報酬改定後の現行の「入院時医学管理加算」を「新管理加算」という。)。しかし、旧管理加算を届け出ていた多くの急性期病院(二〇〇七年度、二百六病院)は、施設基準が厳しすぎるため「新管理加算」を継続できなくなっている。
 入院時医学管理加算は、十分な人材と設備を備え地域で専門的な急性期医療を提供している病院を評価するための点数とされている。ところが、実際に救急医療など急性期医療に力をつくしている地域の中核病院であっても、新管理加算を算定できなくなっているため大幅な減収を余儀なくされている。このままでは、地域の急性期医療体制の崩壊に拍車をかけかねない。新管理加算を見直し、真に地域の急性期医療体制を充実させるものにする必要がある。そこで以下質問する。

一 二〇〇八年度診療報酬改定にもとづく新管理加算を届け出ている病院数・病院名、及び旧管理加算届出病院が継続して新管理加算を届け出ている病院数・病院名を明らかにされたい。また、旧管理加算届出病院のうち新管理加算を届け出ていない病院数・病院名を明らかにされたい。

二 新管理加算の届出が厚生労働省の見込みから大幅に下回っていると報道されている。厚生労働省は新管理加算の届出見込みは百五十から百七十施設程度と説明してきたが、現在の届出数と相当乖離が見られることをどう評価しているか。

三 旧管理加算届出病院のうち新管理加算を算定することができない病院が相当な数に上る。これら病院には新管理加算による増収どころか従来あった旧管理加算がなくなることによる減収減益がのしかかることになる。結果として当該病院の勤務医の過重労働に拍車をかけかねない。
 新管理加算の施設要件は「内科、精神科、小児科、外科、整形外科、脳神経外科及び産科又は産婦人科を標榜し、当該診療科に係る入院医療」提供体制が必要で、さらに「全身麻酔の患者が年間八百件以上であること」が必須で、加えていくつかの項目で年間一定以上の件数があることとされている。なり手不足が指摘されている外科系診療科、深刻な医師不足におちいっている麻酔科、精神科などに二十四時間対応を求め、全身麻酔件数、手術件数などにハードルを設けることは、ボーダーライン上の病院に「もう少しがんばれば加算可能」という意識を生み出すことになる。そうなれば、施設要件の対象となる診療科所属勤務医の過重労働がさらに加速されることになりかねない。
 以上の通り新管理加算は過重な勤務にあえぐ勤務医の対策であるはずなのに実際には勤務医の過重労働に拍車をかけかねない。この点について政府の見解を明らかにされたい。

四 全日本民主医療機関連合会の福岡県における調査では、新管理加算の算定可能な範囲と、救急搬入件数の多い病院とは一致せず、救急搬入件数上位病院の多くが新管理加算を算定できないことが明らかになっている。救急医療に真摯に取り組んでいたとしても、それが評価されず、むしろ減収になるというのでは、現場の士気は低下するだけでなく不採算を理由に救急医療からの撤退を加速しかねないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 新管理加算の施設基準について

1 新管理加算の施設基準は、小児科・産科・脳神経外科に関する入院医療の提供や、精神科による二十四時間対応が可能な体制を求めるなど、医師不足に悩みながら救急・急性期医療を支える地域の急性期病院にとってあまりに厳しい基準と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
2 新管理加算の施設基準には、「退院患者の四割以上が逆紹介と治癒などの患者」という基準(以下「四割基準」という。)が設けられている。救急や急性期医療の受入に際して退院時の転帰や転院先を想定することは困難であり、かりに四割基準を満たそうとすれば、受入の際に「選別」を行うことにつながりかねず、結果的に急性期・救急にかかわる地域医療に重大な問題を引き起こすことにならないか。
3 新管理加算は「初診に関わる選定療養の届出と実費の徴収」を必須の要件としている。もともと選定療養は、療養担当規則において「当該療養は、患者への情報提供を前提とし、患者の自由な選択と同意がなされたものに限られる」とされている。「患者の自由な選択」が保障されている以上、医療機関の側にも「自由と選択」が保障されている事は当然であり、実際、どこまで選定療養費の対象にするかその金額をどうするかは医療機関の判断に委ねられている。そうならば選定療養費を取らないという自由も保障されていると解釈するのが極めて自然である。したがってこうした自由と選択に任せられているものを施設要件の必須事項に入れれば結果的に「自由と選択」を侵害すると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
4 本来、医療機関の自由に任せられている選定療養の導入を施設基準の要件にしたのは今回の診療報酬改定がはじめてである。今後、さまざまな施設基準に「選定療養」が必須要件とされるおそれもある。ところが、中医協でもこの点について十分議論がされず、課長通知のみで実施されており、パブリックコメントにも付されていない。まともな議論抜きに患者や医療機関の自由を侵害する決定がされるのは許されないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
5 選定療養による初診時の実費徴収は療養担当規則によれば、紹介患者、救急患者、健康診断後の初診患者、緊急その他やむをえない事情のある患者からは行うことができない。旧管理加算を算定しており選定療養を導入していない宮城厚生協会坂総合病院の報告によると二〇〇八年三月において選定療養費の対象となる患者は新規登録患者のわずか四・一%だったという。初診に係る選定療養費の導入が病院勤務医の過重労働の緩和にどの程度役に立っていると認識しているのか。
6 新管理加算の施設基準は医療の現実や現物給付を原則とする公的保険制度の根幹にかかわる重大な問題がある。地域の救急医療など急性期医療を担う勤務医の過重労働が続いている急性期病院に対する支援という本来の役割が果たせるよう、次回の診療報酬改定を待たずに施設基準を見直すべきではないか。

六 新管理加算は、厚生労働省が想定した届出病院数を相当下回っており、地域の急性期病院を支援するという役割を果たすことができていない。旧管理加算の届出をしていた病院についてはむしろ減収となり、士気の低下や救急医療からの撤退など医療崩壊に拍車をかけかねない。新管理加算の施設基準が見直されるまで、旧管理加算を復活させて、二〇〇八年度診療報酬改定により重大な打撃を受けている急性期病院の支援を行うべきではないか。

  右質問する。