質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一五号

法科大学院修了生の半数以上が新司法試験に合格できない状況に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年九月二十五日

藤末 健三   


       参議院議長 江田 五月 殿



   法科大学院修了生の半数以上が新司法試験に合格できない状況に関する質問主意書

 平成十三年六月十二日の司法制度改革審議会意見書において「法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約七~八割)の者が新司法試験に合格できるよう、充実した教育を行うべきである。」とされていた。この法科大学院修了生の七~八割が新司法試験に合格できるとの期待から多くの社会人が仕事を辞め、法科大学院に入学している。
 しかしながら、新司法試験合格者は当初の想定よりも少なく、また、当初の想定よりも法科大学院への入学者数が多く認められたことにより、実際の新司法試験合格者の比率は、二〇〇六年は五割を下回り、二〇〇七年は約四割、本年は約三割となった。また、試験に不合格となっても三回まで新司法試験を受験できることから、ある試算では今後合格率が二割程度になるとされている。
 このような中、社会人の法科大学院修了生が新司法試験に合格できず、複数回の試験を受けるだけの資産的な余裕がないため、司法試験をあきらめる例が実際に私の周りでも散見されるようになっている。
 また、法科大学院関係者からは「才能ある人材を引き付けるには余りにもリスクが大きく、新たな法曹養成制度の中核と位置付けられた法科大学院制度を崩壊させかねない。」との声明がなされている。
 このような現状は、社会人修了生の人生設計を大きく狂わせるばかりでなく、改革審意見書における「多様なバックグラウンドを有する人材を多数法曹に受け入れるため、法科大学院には学部段階での専門分野を問わず広く受け入れ、また、社会人等にも広く門戸を開放する必要がある。」との多様化の理念からも大きく外れ、法科大学院の制度そのものを崩壊させることになるのではないかと考える。
 これを踏まえて以下質問する。

一 法科大学院修了生の新司法試験合格率を改善するためのなんらかの対策を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 法科大学院の学生が新司法試験受験のための学校に通っているという状況が生じていると聞くが、政府はその現状を把握しているのか。また、把握していないとすれば、今後調査するつもりはあるのか、政府の見解を示されたい。

三 法科大学院の入学者のうち、社会経験がある入学者の比率の推移を示されたい。社会人入学者の数は大きく落ちているのではないかと思われるが、このような状況は法曹家の多様化を図るという当初の意図から大きくずれているのではないか。政府に是正を行う考えはないのか、見解を示されたい。

四 また、新司法試験合格後、資格を習得しても就職先を見つけるのが困難な状況にあるため、政府は、弁護士が独立しやすいような制度を整備すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。さらに、企業内のインハウスローヤーへの就職支援を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。