第169回国会(常会)
答弁書第一七七号 内閣参質一六九第一七七号 平成二十年六月二十四日 内閣総理大臣 福田 康夫
参議院議長 江田 五月 殿 参議院議員小池晃君提出圏央道高尾山トンネル工事に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員小池晃君提出圏央道高尾山トンネル工事に関する質問に対する答弁書 一について 御指摘の高尾山トンネル南坑口付近の沢においては、国土交通省において、平成十五年九月より一か月に一回、平成二十年一月十五日より一日一回の沢水の流量観測を実施しており、平成十五年には一回、平成十六年には六回、平成二十年には三回、合計で十回にわたり流量が零であったことを確認しているが、これまでの観測結果から、当該沢においては、降雨量の影響が沢水の流量に直接現れると考えられ、現時点で、その流量に顕著な変化が生じているとは認識していない。 また、御指摘の妙音谷にある前の沢の流域にある湧水については、新聞報道等を通じて、御指摘の自然保護団体が沢の水が涸れているとの発表を行ったことを承知しているが、国土交通省において、平成十六年一月より一年に一回実施している湧水量の観測においては、湧水量が零であったことはなく、また、前の沢の沢水の流量観測においても、観測を開始した平成四年二月十二日以降、特段の変化は確認していない。 二について 平成二十年六月十日時点において、高尾山トンネルの上り線トンネルについては、全長千三百四十八メートルのうち南坑口から六百四十四メートル、下り線トンネルについては、全長千三百二十九メートルのうち南坑口から六百五十五メートルの位置まで掘削が進んでいる。 三について 高尾山トンネルの工事現場では、掘削した区間の壁面を鋼製ブロックで覆工する等しており、現在のところ、湧水の流出がほとんどないことから、湧水量の観測は実施していない。 四について 地山の深部における地下水位の観測孔については、高尾山トンネルの施工に伴う周辺の水環境への影響に対する関心が高いことを踏まえ、現在、新たな観測孔の設置に向け、自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)第五十六条第一項に基づく東京都知事との協議等、ボーリング調査の実施に必要な関係機関との調整を実施しているところである。 また、お尋ねの既設の九か所の観測孔の地下水位について、観測開始後最初の六月三日の観測値と平成二十年六月三日の観測値は以下のとおりである。 ①涸沢流域に設置した観測孔9 平成七年六月三日の水位三百八十一メートル 平成二十年六月三日の水位三百九十メートル ②涸沢流域に設置した観測孔3‐3 平成七年六月三日の水位三百六十四メートル 平成二十年六月三日の水位三百六十五メートル ③前の沢流域に設置した観測孔井戸A 平成四年六月三日の水位四百九十六メートル 平成二十年六月三日の水位 四百九十八メートル ④前の沢流域に設置した観測孔井戸B 平成十年六月三日の水位百九十七メートル 平成二十年六月三日の水位百九十七メートル ⑤前の沢流域に設置した観測孔井戸C 平成十年六月三日の水位百九十三メートル 平成二十年六月三日の水位百九十三メートル ⑥高尾山トンネル南坑口付近に設置した観測孔ID‐4 平成十六年六月三日の水位二百二メートル 平成二十年六月三日の水位二百三メートル ⑦高尾山トンネル南坑口付近に設置した観測孔ID‐5 平成十六年六月三日の水位二百一メートル 平成二十年六月三日の水位二百二メートル ⑧裏高尾に設置した観測孔1 平成十年六月三日の水位百九十七メートル 平成二十年六月三日の水位百九十八メートル ⑨裏高尾に設置した観測孔井戸4 平成十五年六月三日の水位百八十九メートル 平成二十年六月三日の水位百八十九メートル 五及び六について 前回答弁書(平成十九年十二月十一日内閣参質一六八第七二号)を閣議決定した平成十九年十二月十一日における観測孔2の地下水位は、三百三十六メートルであった。その後のデータは膨大なものになることから、網羅的にお答えすることは困難であるが、平成二十年三月八日に三百三十三メートルまで一旦水位が低下した後、上昇に転じ、同年六月三日に三百三十九メートルとなっている。 現時点では前回答弁書四についてで述べたとおり、今後もこの水位は徐々に上昇し、将来的には安定するものと考えている。 なお、高尾山トンネルの工事においては、八王子城跡トンネルの掘削において採用したトンネルの周辺の岩盤に止水剤の注入等を行う止水工法を改良し、工事に伴う地下水への影響を可能な限り低減するよう努めているところである。 七について 御指摘の城山八王子トンネルの北坑口で発生した土砂崩落の原因については、現在、地質学及びトンネル工学の専門家から成る「圏央道城山八王子トンネル坑口崩落調査委員会」において調査及び検討が進められているところであり、原因は明らかになっていない。 八について 高尾山は、東京都に残された貴重な自然環境であると認識しており、高尾山トンネルの施工に際しては、工事に伴う地下水への影響を可能な限り低減するよう努めるとともに、周辺の水環境の状況についてのモニタリングを行う等、自然環境の保全に万全を期しているところである。 |