第169回国会(常会)
答弁書第一六三号 内閣参質一六九第一六三号 平成二十年六月二十日 内閣総理大臣 福田 康夫
参議院議長 江田 五月 殿 参議院議員川田龍平君提出遺伝子組み換え作物・食品表示に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員川田龍平君提出遺伝子組み換え作物・食品表示に関する質問に対する答弁書 一の1について 御指摘の事案は、厚生労働省において、明治製菓株式会社がGF2の製造に使用した添加物である酵素について、組換えDNA技術を用いた場合に必要とされる安全性審査の手続の申請が漏れている疑いがあることを指摘したところ、その後、同社において確認を行い、当該安全性審査の手続を経ていなかったことが判明したことから、当該酵素を使用して製造されたGF2を含む十六商品の自主回収を行ったものであり、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)に基づく監視体制に問題があったとは考えていない。 一の2について 御指摘の中央区保健所の回答は、平成二十年三月二十八日付けで外部から照会があった件に対する回答と認識しているが、そのような回答を行ったのは、当該保健所の二次加工品に対する食品衛生法の適用についての認識が正確ではなかったことによるものと考えている。その後、厚生労働省から当該保健所に対して指導を行ったところであり、現時点においては、見解の不一致はない。 一の3について 御指摘の違反製品が使用されるすべての製品を把握できる制度・監視システムの構築は実際上困難であるが、食品衛生法第二十八条第一項の規定に基づき、厚生労働大臣又は都道府県知事等は、必要に応じ、営業者その他の関係者から必要な報告を求め、検査等を行ってきているところである。また、厚生労働大臣又は都道府県知事等は、食品衛生上の危害の発生を防止する観点から、必要に応じ、食品衛生法に違反した者の名称等を公表しているところである。 一の4について 厚生労働省としては、お尋ねの違反のあったGF2を使用しているすべての商品名と製品の在庫、消費された製品(商品名)の実態については把握していないが、明治製菓株式会社が公表している資料によれば、同社が自主回収を行った商品名は、GF2チョコレート42g10粒、GF2チョコレート42g10枚、GF2チョコレート60g12粒、GF2チョコレート70g14粒、GF2チョコレート61g、GF2顆粒300g袋、GF2顆粒スティックタイプ、GF2顆粒60g袋、GF2糖とたたかう甘藷若葉青汁、GF2続けるココア、GF2コーヒーゼリー、カラダナビ活性サプリ、ダイエット&コラーゲンバー630g(ココア味7袋・フルーツ味7袋入)、ダイエット&コラーゲンバー7daysパック315g(ココア味4袋・フルーツ味3袋入)、ダイエット&コラーゲンバー7daysパック315g(ココア味3袋・フルーツ味2袋・ごま味2袋入)及びGF2顆粒20g袋である。 二の1について 御指摘の「環境汚染」の意味するところが必ずしも明らかではないが、我が国に輸入されている遺伝子組換えナタネについては、輸送中にこぼれ落ちて野外で生育した場合も想定して、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成十五年法律第九十七号。以下「カルタヘナ法」という。)第四条に基づく第一種使用規程の承認を行っているものであり、生物多様性に対して影響が生ずるおそれはないものと考えている。 二の2について お尋ねの遺伝子組換えナタネについては、カルタヘナ法第四条に基づく遺伝子組換え生物等の第一種使用規程の承認の際に、遺伝子組換えナタネが遺伝子組換えでないナタネより優位に生育範囲を広げる可能性は低いこと等を確認しており、第一種使用規程の遵守を図ること等により、遺伝子組換えナタネの自生による生物多様性への影響は管理可能と考えている。また、毎年度、「遺伝子組換え生物による影響監視調査」及び「遺伝子組換え植物実態調査」により、主要なナタネの輸入港を中心に遺伝子組換えナタネの生育状況等の監視を行っているところであるが、現時点では、遺伝子組換えナタネが遺伝子組換えでないナタネより優位に生育範囲を広げていないことが確認されている。 このようなことから、現時点では、遺伝子組換えナタネの自生が国内のナタネ農家が栽培しているナタネに影響を与える可能性は基本的にないと考えている。 三の1について 厚生労働省においては、加工食品のうち、組換えDNA及びこれにより生成したたんぱく質が除去又は分解されているもの等については、現在、食品衛生法に基づく組換えDNA技術を用いて製造された食品(以下「遺伝子組換え食品」という。)の表示義務の対象外としているが、今後、検証技術の向上、国際的な議論の推移等を勘案するとともに、関係者の意見を聴きつつ、必要に応じて、これらについての表示の義務化も検討してまいりたい。 三の2について 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(昭和二十五年法律第百七十五号)及び食品衛生法においては、遺伝子組換え食品の含有量がごく少量な場合まで表示を義務付けることは検証技術等の点からその実効性の確保に問題があり、また、消費者に対する情報提供としても必ずしも適切でないと考えられるため、遺伝子組換え食品を原材料とする加工食品のうち、遺伝子組換え食品が原材料の重量に占める割合の高い原材料の上位三位以内となっており、かつ、原材料の重量に占める割合が五パーセント以上となっているものについて、表示義務の対象としているところである。 三の3について お尋ねの関連資料・調査・レポート・議事録については、多岐にわたっており、そのすべてをお示しすることは困難であるが、農林水産省において、平成九年五月に設置した食品表示問題懇談会遺伝子組換え食品部会において、米国での流通過程における遺伝子組換え作物の混入実態の調査を踏まえて議論を行い、平成十一年八月に取りまとめられた同部会の報告書において、遺伝子組換え作物の混入については、特定の品質の農産物を生産・流通段階で区分管理し、かつ、区分管理の証明書を付して加工業者等に提供するシステムを利用したものであっても最大五パーセント程度の意図せざる混入の可能性があるとされたものである。 三の4について 「遺伝子組換えに関する品質表示基準の施行について」(平成十二年六月十日付け十二食流第千七百七十五号農林水産省食品流通局長通知)においては、遺伝子組換えに関する表示に係る加工食品品質表示基準第七条第一項及び生鮮食品品質表示基準第七項の規定に基づく農林水産大臣の定める基準(平成十二年三月三十一日農林水産省告示第五百十七号)第三条第三項に規定する「一定の混入」とは、「非遺伝子組換え大豆の場合で遺伝子組換え大豆の混入率が5%以下であること又は非遺伝子組換えトウモロコシの場合で遺伝子組換えトウモロコシの混入率が5%以下であることとする」とされているが、現在、大豆及びトウモロコシ以外の作物については、一般消費者向けに遺伝子組換えの作物が混入して流通する実態がないため、このような「一定の混入」について規定しているものはない。 三の5について 御指摘の「遺伝子組み換え食品表示法」がどのようなものを指すのか明らかでないが、現段階において遺伝子組換え食品の表示に関する法律を新たに制定するための検討は行っていない。 |