第169回国会(常会)
答弁書第一四五号 内閣参質一六九第一四五号 平成二十年六月十七日 内閣総理大臣 福田 康夫
参議院議長 江田 五月 殿 参議院議員松野信夫君提出米兵の性暴力被害者に対する立て替え払い等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員松野信夫君提出米兵の性暴力被害者に対する立て替え払い等に関する質問に対する答弁書 一について 平成十四年四月六日に神奈川県横須賀市内で発生した米軍の構成員による強姦被疑事案(以下「本件事案」という。)については、被害者によって提起された民事訴訟において加害者に損害賠償を命じる判決が言い渡されたが、当該判決の言渡し後に被害者が行った米国政府に対する慰謝料の支払請求は、その時点において、米国国内法に定める期間を超えていたことから、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)第十八条6の規定に基づく処理ができなかった。防衛省においては、かかる事情を考慮し、これを放置することは社会通念上適切でなく、当該被害者を救済する必要があると認め、「合衆国軍隊等により損害を受けた者に対する賠償金及び見舞金の支給について」(昭和三十九年六月二十三日閣議決定。以下「閣議決定」という。)に基づき、見舞金を当該被害者に支給したところである。 なお、支給時期及び支給額については、個人のプライバシーにかかわることであり、お答えすることは差し控えたい。 二について 米軍の構成員又は被用者(以下「米軍の構成員等」という。)による強姦被疑事案における損害賠償については、加害者本人が責任を負うべきものであり、当事者間の示談等によって解決されることが原則であるが、かかる方法で解決されない場合には、日米地位協定第十八条6の規定に基づき処理されることとなる。 また、日米地位協定第十八条6の規定により救済されない直接の被害につき国が救済を必要と認めたときは、閣議決定に基づき見舞金を支給することとしている。 三について お尋ねの「求償」は、行っていない。 四について 米軍の構成員等による強姦被疑事案の被害者が加害者又は米国政府から賠償金又は慰謝料を受領できなかった場合において、我が国が救済を必要と認め閣議決定に基づく見舞金を支給した事例は、平成十四年度以降、本件事案以外にはないものと承知している。 五について 政府としては、当事者間で示談が成立した米軍の構成員等による事件・事故のすべてを把握しているわけではないことから、お尋ねについて網羅的にお答えすることは困難であるが、平成十四年度以降、公務外で行われた米軍の構成員等による刑事事件の被害について、被害者が日米地位協定第十八条6の規定により請求したにもかかわらず、米国政府から慰謝料を受領できなかった事案は、本件事案以外にはないものと承知している。 |