質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一五号

内閣参質一六九第一一五号
  平成二十年五月十三日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員松野信夫君提出航空自衛隊のイラク派遣に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員松野信夫君提出航空自衛隊のイラク派遣に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の名古屋高等裁判所の判決(以下「本件判決」という。)は、控訴人らから被控訴人である国に対する自衛隊のイラク派遣等の違憲確認請求及び差止請求について不適法なものであるとして却下し、損害賠償請求について棄却した第一審判決に対する控訴を棄却する旨の国側勝訴の判決であり、本件判決のうち、航空自衛隊のイラクでの空輸活動は憲法に違反する活動を含んでいる旨を述べた部分は、判決の結論を導くのに必要のない傍論にすぎず、政府としてこれに従う、従わないという問題は生じないと考える。
 政府としては、航空自衛隊のイラクでの活動は、憲法の範囲内でイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(平成十五年法律第百三十七号。以下「イラク特措法」という。)に基づき適法に行われているものと認識している。
 また、今後とも、イラク特措法に基づく航空自衛隊のイラクでの活動については、イラク政府による有効な統治の確立に向けた政治状況の進展、現地の治安に係る状況、国連及び多国籍軍の活動状況及び構成の変化等の諸事情を、政府としてよく見極めつつ、イラクの復興の進展状況等を勘案して、適切に対応してまいりたい。

二について

 田母神航空幕僚長は、平成二十年四月十八日の記者会見において、本件判決後のイラク復興支援派遣輸送航空隊の雰囲気について、必ずしも正確な表現ではないが、自らの言葉で御指摘のような発言をしたものと承知している。
 同航空幕僚長は、同月二十五日の記者会見において、発言の一部の表現が不適切であったとの認識を示しており、防衛省として同航空幕僚長に対する直接の注意等は行っていない。

三について

 政府としては、イラクでは、依然予断を許さない状況が継続していると認識しているが、対応措置(イラク特措法第二条第一項に規定する対応措置をいう。以下同じ。)を実施しているバグダッド飛行場については、これまでに我が国が独自に収集した情報、諸外国等から得た情報等を総合的に判断し、同条第三項における、現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域に該当すると考えており、御指摘の田母神航空幕僚長の発言はこうした趣旨を述べたものと認識している。

四について

 御指摘の「非戦闘地域」とは、イラク特措法第二条第三項における、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域をいうと考えられるが、政府としては、バグダッド飛行場及び航空機による輸送の業務における通過地域(空路)を含め、自衛隊が対応措置を実施する区域については、これまでに我が国が独自に収集した情報、諸外国等から得た情報等を総合的に判断し、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域に該当すると考えている。