質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第三二号

内閣参質一六九第三二号
  平成二十年二月二十二日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員水戸将史君提出裁判員制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員水戸将史君提出裁判員制度に関する質問に対する答弁書

一について

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号。以下「裁判員法」という。)第十八条に定める「不公平な裁判をするおそれ」がある場合とは、裁判員が、事件の当事者と特別な関係にあること、訴訟手続外で事件につき一定の判断を形成していること等の理由により、公平な裁判をすることが期待できない場合をいうものと考えており、裁判員等選任手続における裁判員候補者に対する質問は、そのような判断に必要な範囲で行われるものと考えている。

二について

 裁判員の参加する合議体で取り扱うべき事件については、公判前整理手続が行われ、事件の争点及び証拠が整理された上で、充実した審理が迅速に行われることとされているので、御懸念のような事態は生じないものと考えている。

三について

 裁判員制度が円滑に実施されるためには、裁判員の職務等に対応した有給の休暇制度を導入するなど、労使の自主的な取組が促進されることが重要であると考えており、政府としては、最高裁判所等とも連携して、これまでも、経営者団体や個別企業等に対してその旨を周知してきたところであるが、引き続き積極的に周知を行い、労働者が裁判員として刑事裁判に参加しやすい環境の整備に努めてまいりたい。

四及び五について

 裁判員法上、御指摘のような各場合に補償をすることとはされていないが、裁判員法第十六条第八号ハにおいて、その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあり、裁判員の職務を行うことが困難な者は、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができることとされている。

六について

 裁判員又はその職にあった者は、評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしてはならない義務を負うが、これは、他人のプライバシーを保護するとともに、裁判の公正さや裁判への信頼を確保し、評議における自由な意見表明を保障するために必要なものであり、評議において述べたことが公表されないことによりその後の追及や報復のおそれがなくなるという点で、裁判員の負担を軽減する意味もあるものと考えており、現段階において、これを見直すことは考えていない。
 また、例えば、公開の法廷でのやりとりや判決の内容については、職務上知り得た秘密に該当しないと考えており、さらに、秘密に及ばない範囲で、裁判員の職務についての感想等を述べることも許されることから、裁判員に守秘義務を課すことにより、直ちに裁判員に過度の精神的負担を負わせるものではないと考えている。

七について

 お尋ねの「裁判員の十分な議論を担保するため」の趣旨が必ずしも明らかではないが、検察当局においては、裁判員が参加する刑事裁判における自白の任意性の立証方策を検討する一環として、立証責任を有する検察官の判断と責任において、任意性の効果的・効率的な立証のため必要性が認められる事件につき、取調べの機能を損なわない範囲内で、検察官による被疑者の取調べのうち相当と認められる部分の録音・録画を試行しているものと承知している。
 裁判員の参加する合議体に加わる裁判員の員数については、充実した評議が行われ、個々の裁判員が責任感と集中力を持って裁判に主体的・実質的に関与することを確保するという観点からは、合議体全体の規模には一定の限度があると考えられること、裁判に国民の感覚がより反映されるようにするという観点からは、裁判員を相当程度多くすることが望ましいと考えられること等を踏まえて定められたものと認識しており、現段階において、これを見直すことは考えていない。