質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一七五号

地球温暖化対策についての福田総理の提案に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年六月十九日

福山 哲郎   


       参議院議長 江田 五月 殿



   地球温暖化対策についての福田総理の提案に関する質問主意書

 平成二十年六月九日に福田総理大臣は「『低炭素社会・日本』をめざして」と題する講演を行い、七月の北海道洞爺湖サミットに向けた我が国の地球温暖化対策、いわゆる「福田ビジョン」を発表した。ポスト京都の国際的枠組み、中長期の温暖化対策の取り組み等について触れられているが、具体的な姿が明確になっておらず、北海道洞爺湖サミットにおいて何を成果としようとしているのか全く見えない。
 そのような見地から、以下のとおり質問する。

一 長期目標について、二〇五〇年までに世界全体でCO2排出量の半減を目指さなくてはならないとし、日本としても二〇五〇年までに現状から六十パーセントから八十パーセントの削減を掲げるとしている。世界全体のCO2排出量は、いつの時点を基準として半減とされているのか。また、日本の目標における「現状」とはいつのことか、明らかにされたい。
 さらに、日本が批准している京都議定書の規定による基準年と比較して、二〇〇六年度における温室効果ガスの総排出量は六・二パーセント増加しており、そのような「現状」を基準とすることの合理的根拠も示されたい。

二 中期目標について、福田ビジョンにおいては、来年の然るべき時期に発表するとし、具体的な目標数値、発表時期について明らかにされていない。昨年十二月のバリにおけるオールドAWGにおいて、二〇二〇年までに先進国全体で九〇年比二十五パーセントから四十パーセント削減との合意があるにもかかわらず、国民に対する説明を先送りにする理由を明らかにされたい。

三 中期目標に関連して、先般、発表された「長期エネルギー需給見通し」を基に二〇〇五年から十四パーセント削減が可能との見通しが示されている。この数字は、京都議定書の規定による基準年を基とすれば、七パーセント程度の削減にとどまるものであり、森林吸収源対策等を除いた実質的な排出削減量は四パーセントにも満たない水準である。北海道洞爺湖サミットに、二〇二〇年までに四パーセント未満という数値で議長として臨むのか。中期目標はより高い数値を示し、そのための施策を早急に整えることが重要であると考えるが、政府の見解を示されたい。

四 基準年について、「二十年も前の一九九〇年にいつまでも拘っていてよいのか」との言を引いているが、政府としては北海道洞爺湖サミットにおいて基準年の変更を提案するのか。提案するとすれば、いつを基準年とするのか、京都議定書を批准している我が国が基準年を変更すべき合理的な根拠とあわせて明らかにされたい。

五 セクター別アプローチについて、五月に開催されたG8環境大臣会合の議長総括において「同アプローチが国別総量目標を設定するために用いられるもので、これを代替するものではないことを明確にした」とされた。しかし、今般の福田ビジョンにおいては、セクター別の積み上げによって国別総量目標を設定するとも読める表現となっている。セクター別アプローチは中期目標設定に代替するものではないことを明らかにされたい。
 また、G8環境大臣会合の議長総括では「ボトムアップ・アプローチによる削減ポテンシャルとトップダウン・アプローチにより計算される必要な排出削減レベルとの間に生じうるギャップは、環境上、十分なレベルを確保するために埋められる必要がある」とされた。このギャップを埋めるための施策についての政府の見解を示されたい。

六 再生可能エネルギーの普及に関連して、「太陽光発電世界一の座を奪還するため、導入量を二〇二〇年までに現状の十倍、二〇三〇年には四十倍に引き上げることを目標として掲げたい」と述べている。その思いは一にするものの、過去の施策の反省も踏まえて目標達成のためにどのような政策を採っていくのか、具体的な内容が示されていない。今後の具体的な施策について明らかにされたい。
 さらに、戸建て住宅への太陽光パネルの設置を現状の約三十二万戸から二〇二〇年に約三百二十万戸とする施策を掲げているが、具体的にどのような方策を採るのか明確にされたい。新築持家住宅の七割以上が太陽光発電を採用しなければならない計算となるというが、それは法的な措置を講じるのか、それとも財政上または財政上の措置で実現するのか、見解を示されたい。
 また、「ドイツの例も参考にしながら」検討するとあるが、固定価格買取制度に対する政府の見解を示されたい。さらに、固定価格買取制度とRPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)の長所と短所についても、それぞれ見解を示されたい。

七 先のG8環境大臣会合では、排出量取引については、炭素に価格をつけ、価格シグナルを提供することを支援することが可能であるとともに、民間部門に対する長期的かつ確実な経済的インセンティブを与え、一層の排出削減を進める上で有効な手法との認識が共有された。政府としても同様の認識であると考えてよいか、見解を示されたい。

八 国内排出量取引制度について、「いつまでも制度の問題点を洗い出すというのに時間と労力を費やすのではなく、むしろ、より効果的なルールを提案するくらいの積極的な姿勢に転ずるべき」とこれまでよりも踏み込んだ発言をしたことは評価したい。しかし、今秋から国内統合市場の試行的実施、実験を開始すると述べるにとどまり、本格的な制度導入がいつになるのか、導入そのものも曖昧なものとなっている。「試行的実施、実験」は、どのような制度での実施を検討しているのか明らかにされたい。
 また、環境省が実施してきた自主的排出量取引制度や経済産業省が検討している国内CDM制度(中小企業等CO2排出量削減制度)と、どのような違いがあるのか明らかにされたい。
 さらに、キャップ・アンド・トレード方式によって排出削減にインセンティブを与えていく仕組みが必要と考えるが、この「試行的実施、実験」の段階において、キャップ・アンド・トレード方式を採用することも検討に入っているのか、入っていなければその理由とともに、政府の見解を明らかにされたい。

九 環境税についても、「税制のグリーン化」という表現はあるものの、これまでの目標達成計画で検討を進めると言い続けた従来の姿勢とは大差がないものとなっている。今年の税制改正における環境税の導入について、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。