質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一六七号

障害児の放課後活動の保障に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年六月十六日

小池 晃   


       参議院議長 江田 五月 殿



   障害児の放課後活動の保障に関する質問主意書

 放課後における障害児の活動保障による成長・発達支援、保護者の就労支援、保護者のレスパイト実現の観点から、学齢期障害児(小中高校に在籍または特別支援学校の小中高等部に在籍している障害児、以下同じ。)の放課後や長期休暇中の支援に対するニーズは非常に大きい。
 放課後子どもクラブ事業(以下「学童保育事業」という。)や児童デイサービスでの学齢期障害児の受入数は急激に増加している。また、障害のある子どもの放課後保障全国連絡会(全国放課後連)は、二〇〇五年の調査にもとづいて、一般の学童保育事業以外の事業において一万人を超える障害児が放課後を過ごしていると推定している。学童保育のように法律に位置づけるなど財政支援を強化し政府の責任で整備をすすめる必要がある。
 ところが、障害者自立支援法施行にともなって児童デイサービスの対象から学齢期障害児を外す、小中高生の障害児を対象とした障害児タイムケア事業補助金を廃止し地域生活支援事業の任意事業に解消するなど、学齢期障害児に対する政府の支援が減少し、全国で取り組まれている学齢期障害児の放課後を支援する事業に困難が広がっている。
 現在、児童福祉法の見直しも含めて障害児支援のあり方について厚生労働省内で検討が進められているが、学齢期障害児の放課後活動の支援強化は急務である。
 そこで、以下質問する。

一 先に指摘したとおり一般の学童保育での障害児の受入は急激に増大している。また、障害児も含めた全児童対象事業である放課後子ども教室の整備もすすめられている。障害のある子どもとない子どもが共に育つ機会をつくるこれらの事業は極めて重要であり、さらに発展をさせる必要があるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 学童保育事業や放課後子ども教室事業は健常児対象の事業に障害児を受け入れるという事業のため障害の重い子どものニーズを満たしきる事が難しい上に、もともと小学生(特別支援学校小学部在籍児含む。)が対象であり中高生(特別支援学校中高等部在籍児含む、以下同じ。)の受入ニーズに応えることは出来ない。障害の重い子どもや中高生が利用できる一般施策は事実上ない状況だと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 厚生労働省は社会・援護局障害保健福祉部長によって設置された「障害児支援の見直しに関する検討会」(以下「検討会」という。)に対して政府が行っている学齢期障害児の放課後支援策として地域生活支援事業の日中一時支援事業、学童保育事業、放課後子ども教室事業、経過的児童デイサービス事業の説明を行っているが、現在、これらの事業で受け入れている学齢期障害児の数について明らかにされたい。

四 政府はこれまで独自の学齢期障害児の放課後活動支援の必要性を認め児童デイサービス事業や障害児タイムケア事業などの施策を拡充し、それによって学齢期障害児の放課後活動を支援する事業整備が各地ですすめられた。ところが、障害者自立支援法施行を契機に政府は学童保育事業に匹敵する学齢期障害児を受け入れてきた児童デイサービス事業の対象から学齢期障害児を除き経過的児童デイサービスに移行させ、報酬単価の大幅な削減を行った。その結果、児童デイサービス事業によって学齢期障害児の放課後活動支援を進めてきた各地の事業に困難が広がっている。また、中高生等の学齢期障害児を対象とした障害児タイムケア事業も同様に成人障害者も含めた預かりを中心とした事業である日中一時支援事業に吸収され、市町村の不安定な財政のもと問題が発生している。政府はこれらの事態をどう認識しているか。
 また、事業の廃止や学齢期障害児の受入が困難になるなど各地でおこっている問題の解決を公費の増額、事業の見直しなどによって図るべきではないか。政府の見解を明らかにされたい。

五 児童デイサービス事業の見直しの説明の中で、厚生労働省は、就労支援とレスパイトは日中一時支援事業、療育は児童デイサービス事業という説明を行っていた。しかし子どもの発達は、保護者や家庭の生活基盤と密接な関係がある。少なくとも学齢期障害児の放課後活動支援については成長・発達支援と保護者の就労支援・レスパイトは統一的にとらえる必要がある。成長・発達支援のためにはこちらの事業所、保護者の就労支援・レスパイトの時はこちらの事業所というように行政の枠組みの都合で障害児が振り回されることはあってはならない。
 障害の重い子どもや、中高生を受け入れる一般施策が事実上ない現状では、現在ある一般施策の強化は当然必要だが、それらの児童のニーズを満たすために、学齢期障害児を対象とした放課後活動支援施策の整備がどうしても必要である。埼玉県の「特別支援学校放課後対策事業」や東京の「心身障害者(児)通所訓練等事業」のように自治体が独自に展開している事例もあり、これら先進事例に学ぶとともに当事者の声を良く聞いて、新たな施策の展開や財政支援の強化など学齢期障害児の放課後活動をさらに発展させるべく対策を強化すべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。