質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇九号

米軍人軍属による公務外事件事故の被害者の救済に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年四月十七日

山内 徳信   


       参議院議長 江田 五月 殿



   米軍人軍属による公務外事件事故の被害者の救済に関する質問主意書

 我が国に駐留する米軍人軍属及びその家族による不法行為は、防衛省に損害賠償請求書が提出される件数だけでも年間最低千五百件以上あり、特に昨今婦女子への暴行事件、強盗殺人事件など凶悪事件が相次ぎ、大きな社会問題になっている。公務外の不法行為の被害者に対する補償については、日米地位協定第十八条六項において、日本政府は請求人に対する補償金を査定し報告書を作成して米側に交付し、米側から慰謝料の支払いがなされることを取り決めしているが、米側が支払いに応じた件数は発生件数の三パーセントに満たず、いわゆる被害者の「泣き寝入り」が指摘をされる所以である。一九九五年九月沖縄で起きた少女暴行事件後に発足した「沖縄に関する特別行動委員会」(以下「SACO」という。)の合意によって、民事訴訟による損害賠償額の判決額が決定した場合、米側の慰謝料との差額を日本政府が穴埋めするよう努力するという運用改善が実施をされた。しかし実際に適用されたケースは極めて少ない。加えて、今年二月十日に沖縄で発生した女子中学生への暴行事件については、被害者が告訴を取り下げた結果不起訴処分となり、日本側は裁判権を放棄することになった。しかし、基地がある故のこうした事件事故の被害者の補償や救済が放置されることは、なによりも人権問題としてあってはならないことと考える。
 そこで、以下質問する。

一 私は、防衛省から「米軍人等による事件・事故件数及び賠償金等支払実績」(以下「支払実績」という。)を入手しており、その中で、「注一」として「米軍の事件・事故すべてについて網羅したものではない」と注釈してあるが、事件・事故すべてを網羅した統計を明らかにされたい。また、「支払実績」に記載されない事件・事故のケースとはどういうものか。

二 一九九六年SACO合意による日米地位協定の運用改善で、米側が支払った慰謝料と判決額との差額を日本政府が穴埋めをしたケースについて、今まで何件の適用があるのか、またその件名毎に、判決額、日本の穴埋額、支払発生日について明らかにされたい。

三 米側からの慰謝料の支払がないケースについて明らかにする必要がある。

1 支払実績の「注二」には、「当事者間の示談により解決されることとなる」と書かれている。示談の成立の件数について政府は把握しているのか。
2 発生した刑事事件の件数より米側慰謝料支払の件数が少ないが、刑事事件で有罪が確定したケースで慰謝料が支払われなかったケースがあるのか。あるとすればその理由は何か。

四 本年二月十日に発生した沖縄における女子中学生への暴行事件は不起訴となったが、少女や家族の心情を思うときあまりにも痛ましい事件であり、被害者への補償や精神的なケアーが必要と考える。本年三月二十四日参議院予算委員会での私の質問に対して高村外務大臣は「関係省庁と協力して対応を図ってまいりたい」旨発言されている。政府として被害者への補償やケアーの必要性を認めるのか、政府の見解を示されたい。
 また、このようなケースにおいて補償を実施する場合の根拠法は何か。過去同様なケースでの支払実績はあるのか。ある場合は、その内容を具体的に示されたい。

五 「米軍人軍属による事件被害者の会」が関与した四件の裁判では、米側が支払った慰謝料は日本の司法当局が判断した賠償金額と比較して極めて低く、一九九六年海老原鉄平さん死亡事故については判決額の十五パーセントでしかない。米側の慰謝料だけに依存するのはあまりにも被害者が受けるべき賠償の実態に合わないことからして、第二項のSACO合意による運用改善が図られたと考える。しかし現実には米軍人等を相手に提訴すること自体が非常に困難な中で、正当な賠償がなされるケースは極めて少ないと考えざるを得ない。この現状に対して政府はどう認識しているのか。米軍の駐留を認めている日本政府の責任において、日本国民の生命・財産を守るという観点から公務中と同じく公務外の事件・事故の被害者の救済について日米地位協定十八条改定の必要があると思うが、政府の見解を示されたい。
 また、早急に国内法の立法によって、賠償相当額を日本政府が立替を行い、米側に求償する制度を確立することによって被害者の救済をしていく考えはないのか。

  右質問する。