質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇〇号

矢臼別演習場内風蓮川水系のイトウ保護に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年四月十四日

紙 智子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   矢臼別演習場内風蓮川水系のイトウ保護に関する質問主意書

 北海道別海町議会における議論および報道によると、北海道防衛局(以下「防衛局」という。)は今年度、陸上自衛隊矢臼別演習場内の風蓮川水系で、土砂の川への流出を植林や沈砂池などダム以外で防ぐための調査に着手するとしている。また、別寒辺牛川水系で二〇〇三年に設置された「別寒辺牛川水系土砂流出対策等検討委員会」(以下「別寒辺牛川検討委員会」という。)と同様の組織を風蓮川水系でも設置する方向で検討中とのことである。
 こうした動きは、演習場内風蓮川水系で繁殖が確認された絶滅危惧種1B類イトウの生態系保護にとって非常に重要であり、今後もっとも効果的な対策が早急にもとめられることから、以下質問する。

一 風蓮川水系の二〇〇八年度イトウ対策事業について

1 昨年の演習場内でのイトウ繁殖確認を受け、今年度予定している風蓮川水系での対策事業、土砂流出防備事業、予算額について説明されたい。
2 防衛局が別海町に委託して行う予定とされる風蓮川水系の環境調査の内容、場所、調査期間、予算額についてそれぞれ説明されたい。

二 風蓮川水系における検討委員会設置について

1 二〇〇三年に設置された別寒辺牛川検討委員会は、地元自治体、地元経済団体、砂防学、魚類学などの専門家から構成されていたが、研究者の中では砂防学の比重が相対的に大きいものであった。
 今回、予定している風蓮川の検討委員会においては、土砂流出防備対策に加え、絶滅危惧種イトウの生態系保護・回復対策が重要な論点であることから、魚類生態学、とりわけイトウの専門家の比重を高めるべきではないか。もしくは委員会の下にワーキンググループなどを設け、風蓮川水系に生息するイトウ、サクラマスなど重要魚種に関する最新の専門的知見が反映される仕組みをつくるべきではないか。
2 風蓮川水系のイトウの生息状況については、防衛省が調査を行う契機ともなった、大学院生によるイトウ繁殖確認など長期間におよぶ先行調査がある。防衛省はこうした先行調査を今後の対策および検討委員会の議論に適切に反映させるべきと考えるがどうか。

三 既存ダムの改良、撤去について

1 風蓮川水系に設置されている十五基のダムのうちイトウ繁殖が確認された三ヵ所をふくむダム改良については遅くとも来春のイトウ遡上期に間に合うよう早急な着手がもとめられる。この点について政府の認識を示されたい。
2 別寒辺牛川水系のトライベツダムは検討委員会の結論を得て、スリット化し、現在、モニタリングを行っている。こうした先行例を参考にして、早期に河道を復元、再生する観点から風蓮川水系の既設ダムについてもスリット化が選択肢となると考えるがどうか。
3 別寒辺牛川検討委員会の報告書は、矢臼別演習場の土砂流出防備対策として「生産源土砂のほとんどを占めている細粒土砂等については、生産源対策を実施することで対応」する方向を示した。風蓮川水系の対策においても、この報告書が土台となっており、生産源対策が基本と考えてよいか。
 また、生産源対策を基本にするとすれば、将来的にはダム撤去も視野に入れるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。