質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第七四号

社会保険病院等の今後に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年三月十七日

谷 博之   


       参議院議長 江田 五月 殿



   社会保険病院等の今後に関する質問主意書

 栃木県宇都宮市南高砂町に位置し、戦後間もない一九四六年から地域医療の一角を担ってきた宇都宮社会保険病院をはじめとして、全国に五十三カ所ある社会保険病院が本年九月末で閉鎖されるのではないか、という不安・懸念が全国各地で高まっている。これは、医師不足や自治体病院の縮小・閉鎖などの「医療崩壊」が大きな社会問題となっている中、政府は社会保険病院の整理合理化計画を未だにまとめられず、九月末以降の社会保険病院の保有者が決まっていないからである。
 そこで、以下質問する。

一 厚生労働省は二〇〇二年十二月二十五日に、二〇〇六年度中に社会保険病院の整理合理化計画を策定するとの方針を立てているが、この方針が実行されなかった理由は何か。

二 与党年金制度改革協議会が二〇〇四年三月十日に合意した「年金福祉施設等の見直しについて」の中で、二〇〇六年度中に厚生年金病院の整理合理化計画を策定するとしているが、この合意が実行されなかった理由は何か。実行責任は政府にあったのではないか。

三 社会保険病院の保有者が決まらぬまま本年九月末を迎えた場合、社会保険病院の土地及び建物は国有財産として財務省の管理に置かれることになるのか。

四 財務省が社会保険病院の土地及び建物を売却した場合、その売却収入は国庫に納められ、国の一般会計に計上されると理解しているが、政府の見解を明らかにされたい。

五 衆議院厚生労働委員会の二〇〇五年六月十五日の独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案に対する附帯決議(以下「附帯決議」という。)について、項目毎にその履行状況を具体的に示されたい。

六 附帯決議の一にある「政府は、厚生年金病院の整理合理化計画については、地域の医療体制を損なうことのないように、十分な検証をした上で策定すること。」は、社会保険病院についての整理合理化についても当てはまると、舛添厚生労働大臣は本年二月七日の衆議院予算委員会で答弁している。

1 期限まで残り七ヶ月を切った現時点で、未だその整理合理化計画がまとまっていないこと自体、地域の医療体制を損なっているのではないか。
2 国会審議等において、問題とされたのは社会保険庁の年金福祉施設であり、厚生年金保険特別会計の年金勘定の流用についてである。一方同じ特別会計内の健康勘定による社会保険病院の保有については、一切問題となっていない。従って、社会保険病院の整理合理化について厚生年金病院の整理合理化と平仄を合わせる必要はないのではないか。

七 二万三千人が働く社会保険病院の現場ではすでに医療従事者が浮き足立っており、医師や看護師といった基幹職員の募集に人が集まらなかったり、離職も相次いでいると聞いている。地域医療を支える人材確保もままならない社会保険病院の実態を、政府はどのように把握しているか。

八 二〇〇八年三月十四日の自民党社会保障制度調査会社会保険庁等の改革ワーキンググループにおいて、社会保険病院及び厚生年金病院を独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO、以下「整理機構」という。)に出資するとの考えが示されたと聞いているが、政府はそのような選択肢も検討されるべきと考えているか。

九 社会保険病院が整理機構に出資されてしまうと、「いずれ売却される」との方針が明確となり、医師や看護師などの職員は次々退職し、職員募集もますます難しくなると懸念するが、これでは地域医療のさらなる崩壊につながる深刻な事態に陥り、地域のお年寄りや、のべ千二百万人もいる入院患者・外来利用者は大変困るのではないか。

十 社会保険病院や厚生年金病院の、社会保険庁にかわる新たな保有者は、社会保険庁に所管が移行する前に保有していた厚生労働省であるべきであり、当面その任に当たりながら、現在の地域医療の「崩壊」状況を踏まえ、地域の医療体制が損なわれないようにじっくりと今後の保有・運営方針を検討、決定するべきものと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

十一 健康保険法に基づき新たに設立される公法人である全国健康保険協会(以下「協会」という。)が、社会保険病院を保有することは、健康保険法その他の法令で禁じられているか。

十二 協会が社会保険病院を保有し、その運営を外部に委託することは、二〇〇七年十月二十五日に公表された協会の理念及び運営方針に反するものではないと考えるが、政府の見解を示されたい。

十三 本年三月十一日に開催された全国健康保険協会設立委員会において、厚生労働省が示した協会の定款案は、社会保険病院の保有を禁じているか。具体的には定款案の第五章第三十三条(2)として健康保険法第六章の規定による保健事業及び福祉事業に関する業務とあるが、ここに社会保険病院や社会保険診療所、健康管理センターの保有が含まれうるのではないか。

十四 二〇〇五年四月十二日の参議院厚生労働委員会での武見敬三委員に対する答弁で、青柳社会保険庁運営部長は「新たな受皿となった公法人にそのまま移管をいたしまして、公益法人がそこから経営委託を受けるというようなことも当然ケースとしては考えられるかというふうに思います。」と述べているが、これ以降、協会が社会保険病院を保有すべきかどうかについて、政府は何か決定を行ったのか。行ったとすれば、いつ誰がどういう内容で行ったのか、大臣答弁や決裁等の内容を明らかにされたい。

十五 メタボリック症候群対策や介護予防といった側面からも健診体制の強化が叫ばれている中、社会保険診療所・健康管理センターは、民間事業者が敬遠しがちな過疎地域等への健診車による巡回健診にも積極的に取り組んできた。民間に売却されれば、巡回健診は不採算部門として真っ先にリストラされてしまうおそれがある。三割台の健診率を引き上げ、被保険者の「健康寿命」を伸ばせば、政管健保の保険財政の好転につながる。従って協会が社会保険診療所・健康管理センターを保有し、巡回健診事業を拡大するなど健診体制の強化に最大限活用していくべきではないか。

十六 仮に社会保険病院及び厚生年金病院を整理機構に出資する場合、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法を最低でも次の三点に関して改正すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

1 整理機構の目的に、社会保険病院、厚生年金病院、社会保険診療所・健康管理センター・介護老人保健施設・看護学校等の運営を加えること。
2 二〇一〇年九月三十日までとなっている整理機構の解散期限を無くすか、大幅に延長すること。
3 独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法の名称から「整理」という文言を削除すること。

  右質問する。