質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第四六号

鳩山邦夫法務大臣の「冤罪」発言に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年二月二十一日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   鳩山邦夫法務大臣の「冤罪」発言に関する質問主意書

 鳩山邦夫法務大臣は、本年二月十三日の検察長官会同で「氷見事件は人違いでございますから冤罪ということでありましょう。志布志事件は、冤罪と呼ぶべきではないと私は考えております」と発言したこと(以下「前記発言」という。)が大きな波紋を呼んでいる。しかもこの点を指摘する、翌十四日の衆議院予算委員会における保坂展人委員の質問に対して、「今後、公式の場では冤罪という言葉は一切使うまい、そのように考える・・・志布志の被告であられた方々が不愉快な思いをされたとすれば、これはおわびをしなければならない」と答弁している。法務大臣として誠に不謹慎きわまりないし、このままでは今後の法務行政、とりわけ被疑者、被告人らの人権問題に悪影響も与えかねない。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 鳩山法務大臣の冤罪についての前記認識は根本から間違っていると思われるが、政府は、冤罪をどのように定義しているか、見解を示されたい。鳩山法務大臣が発言しているように、別に真犯人が存在していた人違いの場合にのみ冤罪と言い、志布志事件のような無罪判決の場合は冤罪ではないと考えているのか、明らかにされたい。

二 鳩山法務大臣の前記発言は、いやしくも検察長官会同という公式の場での発言であり、単なる個人的発言にとどまらないものである。こうした公式発言で志布志事件があたかも冤罪ではないと決めつけるのであれば、志布志事件は犯罪が行われたが訴訟のやり方が拙劣であったために有罪を得ることができなかった事例であると考えているのか、明らかにされたい。志布志事件は、もともと存在しない買収事件を警察が作り立て、それを検察も追随ないしは容認してしまったのが真相であると考えられるが、政府も同様に考えているのか、明らかにされたい。

三 鳩山法務大臣は、前記発言に続けて、「検察の皆様には、極めて元気を出してやっていただかなければならない。角を矯めて牛を殺すようなことがあってはなりませんので、十分な反省の上に立って一層活発に積極的に、前向きに、検察官としての活動をしてください」とも発言しており、これでは真摯な反省よりも志布志事件を気にせず捜査を優先させようという姿勢ではないか。こうした姿勢こそが冤罪を生み出す原因ではないかと思うがどうか。

四 鳩山法務大臣は、その後の二月十六日、福岡市で開かれた自民党福岡県連の大会でも「天に向かって恥じることはない。」、「真犯人が後から現れた場合を冤罪と言い、裁判による無罪は冤罪とは言わないというのが法務省、検察の基本的考え方だ。」、「法務省や検察が日ごろ言っていることを、そのまま言っただけ」とも発言している。政府はこうした発言を確認しているか、また政府としても鳩山法務大臣が指摘しているように、真犯人が後から現れた場合を冤罪と言い、裁判による無罪は冤罪とは言わないというのが法務省、検察の基本的考え方であり、こうしたことは法務省や検察が日ごろから言っていることだと承知しているか、それぞれ明らかにされたい。

五 政府においては、今般の鳩山法務大臣の一連の発言を容認するのか、また、前記発言等について何らか注意ないしは指導等をしたのか、それぞれ明らかにされたい。

  右質問する。