質問主意書

第168回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第九七号

内閣参質一六八第九七号
  平成十九年十二月二十八日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 町村 信孝   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員藤末健三君提出私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適切な運用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤末健三君提出私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適切な運用に関する質問に対する答弁書

一について

 公正取引委員会においては、事業者の予測可能性を高める観点から、どのような場合に私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)第九条第一項及び第二項に規定する事業支配力が過度に集中することとなる会社に該当するかについて規定した「事業支配力が過度に集中することとなる会社の考え方」を平成十四年十一月に公表しているところである。
 また、独占禁止法第九条第五項の規定に基づき、会社は、当該会社及びその子会社の総資産の額で国内の会社に係るものを公正取引委員会規則で定める方法により合計した額が一定の金額を超える場合には、毎事業年度終了の日から三月以内に、事業に関する報告書を公正取引委員会に提出しなければならず、また、同条第六項の規定に基づき、新たに設立された会社がこれらの要件に該当する場合には、その設立の日から三十日以内に、その旨を公正取引委員会に届け出なければならないこととされており、公正取引委員会は、これらの提出又は届出を受けて、当該会社が事業支配力が過度に集中することとなる会社に該当するかどうかを判断している。したがって、同条第一項及び第二項の規定に基づく規制は、許認可等を伴ういわゆる事前規制に該当するものではなく、こうした規制が「規制改革の基本理念である「事前規制」型から「事後チェック」型への移行には合わない」との御指摘は当たらないと考える。
 御指摘の「企業結合規制」は、独占禁止法に規定するいわゆる市場集中規制のことと思われるが、これは、個々の商品・役務の市場において発生する具体的な競争制限を問題とするものである。これに対して、独占禁止法第九条に規定するいわゆる一般集中規制は、競争が行われる基盤を整備することにより市場メカニズムが十分に機能するようにするため、国民経済全体における特定の企業グループへの経済力の集中等を防止するものであり、いわゆる市場集中規制とは規制の趣旨を異にする。現時点において、いわゆる一般集中規制の担っている機能の必要性はいまだ失われているとは認められないことから、いわゆる一般集中規制をいわゆる市場集中規制と統合することは適切ではないと考える。

二について

 弁護士についても、報酬を得て役務を反復・継続して提供するなど業として経済活動を行っている場合には、独占禁止法にいう事業者に該当するものと考える。
 弁護士の報酬については、弁護士間の公正な競争の活性化を図るため、これに関する標準を示す規定を弁護士会及び日本弁護士連合会それぞれの会則の必要的記載事項としていた弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)の規定並びにこれらの会則の報酬規定が削除された一方で、依頼者等の予測可能性を確保するなどのための施策の一環として、日本弁護士連合会において、会員である弁護士に対して弁護士の報酬等についてのアンケート調査を実施し、その結果の概要を記した「市民のための弁護士報酬ガイド」を作成して同連合会のホームページ等で公表しているものと承知している。
 公正取引委員会は、平成十三年十月に公表した「資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方」の中で、例えば、「需要者、会員等に対して過去の報酬に関する情報を提供するため、会員から報酬に係る過去の事実に関する概括的な情報を任意に収集して、客観的に統計処理し、報酬の高低の分布や動向を正しく示し、かつ、個々の会員の報酬を明示することなく、概括的に、需要者を含めて提供すること(会員間に報酬についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。また、価格制限行為の監視のための情報活動に該当するものを除く。)」のような資格者団体の活動は、原則として独占禁止法上問題とならないとの考え方を明らかにしているところであるが、「市民のための弁護士報酬ガイド」の公表がこうした活動である限りにおいては、独占禁止法第八条第一項第一号又は第四号の規定に違反することはないと考えられ、また、独占禁止法第三条の規定にも違反することはないと考えられる。