第168回国会(臨時会)
答弁書第八九号 内閣参質一六八第八九号 平成十九年十二月二十一日 内閣総理大臣 福田 康夫
参議院議長 江田 五月 殿 参議院議員水戸将史君提出消費税の理念及び導入の影響に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員水戸将史君提出消費税の理念及び導入の影響に関する質問に対する答弁書 一について 消費税の導入は、当時の個別間接税制度が直面していた諸問題を根本的に解決し、税体系全体を通ずる税負担の公平を図るとともに、国民福祉の充実等に必要な歳入構造の安定化に資するため行われたものである。 二について 御指摘の消費税導入前と後の個人消費、企業の設備投資及び総需要の変化を、昭和六十三年度と平成元年度における国民経済計算(平成七暦年基準、固定基準年方式)の家計最終消費支出、民間企業設備及び国内需要の名目値及び対前年度実質変化率でみると、昭和六十三年度は、家計最終消費支出につき二百三兆八千九百二十一億円及び五・一パーセント増、民間企業設備につき七十一兆五千八百二十八億円及び十九・五パーセント増、国内需要につき三百七十八兆六千三百二十五億円及び七・三パーセント増であり、平成元年度については、家計最終消費支出につき二百十七兆八千四百四十三億円及び四・○パーセント増、民間企業設備につき八十兆五千三百七十五億円及び一〇・七パーセント増、国内需要につき四百九兆百十四億円及び四・六パーセント増であった。 三について 消費税と地方消費税とを合わせた税率五パーセントへの引上げを含む税制改革は、活力ある福祉社会の実現を目指す視点に立ち、社会の構成員が広く負担を分かち合い、かつ、歳出面の諸措置の安定的な維持に資するような所得、消費、資産等の間における均衡がとれた税体系を構築する観点から、個人所得課税の累進緩和等を通ずる負担の軽減並びに消費税の中小事業者に対する特例措置等の改革及び税率の引上げによる消費課税の充実を図るほか、地方消費税を創設することにより地方税源の充実を図るため、行われたものである。 四について 御指摘の消費税引上げの前と後の個人消費、企業の設備投資及び総需要の変化を、平成八年度と平成九年度における国民経済計算(平成十二暦年基準、連鎖方式)の家計最終消費支出、民間企業設備及び国内需要の名目値及び対前年度実質変化率でみると、平成八年度は、家計最終消費支出につき二百七十六兆五千九百三十一億円及び二・七パーセント増、民間企業設備につき七十六兆二千七十一億円及び五・七パーセント増、国内需要につき五百六兆二千九百六十二億円及び三・一パーセント増であり、平成九年度については、家計最終消費支出につき二百七十七兆八千九百五十四億円及び一・一パーセント減、民間企業設備につき七十八兆七千六百八十一億円及び四・〇パーセント増、国内需要につき五百六兆千三百五十七億円及び一・一パーセント減であった。 五について 消費税については、その簡素な仕組みともあいまって貯蓄や投資を含む経済活動に与えるゆがみが小さいほか、国境調整を通じて税率の変更が国際競争力に与える影響を遮断できるという面があると考えており、他の税と比較して経済成長を低下させるものとは考えていない。 六について 消費税の導入により、物品税等が廃止され当時の個別間接税制度が直面していた諸問題が根本的に解決されたとともに、税負担の公平及び国民福祉の充実等に必要な歳入構造の安定化に資したものと認識している。 七について 政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長を維持しながら、歳出・歳入一体改革に正面から取り組むことが必要であると考えており、歳出改革・行政改革を実施した上で、それでも対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにするため、国民的な合意を目指して、本格的な議論を進め、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく、取り組むこととしている。 なお、「消費税減税と所得税増税をセットで行い所得の再分配機能を高める」ことにより経済成長を促して財政再建を達成できるか否かについては、御指摘の消費税減税や所得税増税の具体的な内容や、個人の勤労意欲や消費行動等を通じた経済成長への影響が明らかでないため、一概にお答えすることは困難である。 |