質問主意書

第168回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八七号

内閣参質一六八第八七号
  平成十九年十二月二十一日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員紙智子君提出室蘭の強制連行犠牲者の遺骨返還に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出室蘭の強制連行犠牲者の遺骨返還に関する質問に対する答弁書

一について

 政府としては、旧国家総動員法(昭和十三年法律第五十五号)により徴用された朝鮮半島出身者の問題を含め、当時多数の方々が不幸な状況に陥ったことは否定できないと考えており、戦争という異常な状況下とはいえ、多くの方々に耐え難い苦しみと悲しみを与えたことは極めて遺憾なことであったと考える。

二について

 徴用された朝鮮半島出身者の遺族に対する金銭の支払等の問題については、大韓民国(以下「韓国」という。)との間では、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和四十年条約第二十七号。以下「財産・請求権協定」という。)第二条1において「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が・・・完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認」している。

三及び九について

 現在、日韓両国政府間で、徴用された朝鮮半島出身者等の遺骨の返還に向けた作業を行っており、返還の具体的な時期やその目途については確定していないが、今後、可能な限り迅速に遺族に返還できるよう、韓国政府との調整を含め対応していく考えである。

四について

 お尋ねの「協議」については、外務省において調査した限りでは、事実関係を把握することができる記録が見当たらないことから、お答えすることは困難である。

五について

 お尋ねの「民間徴用者」の遺骨返還に関する話合いの有無については、外務省において調査した限りでは、事実関係を把握することができる記録が見当たらないことから、お答えすることは困難である。

六から八までについて

 昭和四十一年三月、富士製鉄株式会社より政府に対し、「韓国人徴用工」の遺骨引受人の身元調査の依頼があったと承知しているが、その後の経緯については、外務省において調査した限りでは、事実関係を把握することができる記録が見当たらないことから、お答えすることは困難である。

十について

 一般論として申し上げれば、人道的観点から行われる民間団体による遺骨の返還は、可能な限り迅速な遺族への遺骨の返還に資する面があると認識している。

十一について

 お尋ねの「政府の認識」については、一について及び二についてで述べたとおりである。

十二について

 昭和三十九年五月付けで富士製鉄株式会社から外務省に対し送付された資料「朝鮮人遺骨送還について」には、「昭和二十一年七月二十九日・・・未払金一切を・・・安田銀行小切手で第十一空挺師団室蘭駐在部隊バァー中尉に手交した」との記述があり、また、昭和二十四年二月五日付けの「中央連調半月報(第二十四號)」には、「朝鮮人に対する未払給料を朝鮮本國に送金すべく在室蘭進駐軍官憲に斡旋方を依頼し現金も引き渡しておったが其後未だ送金しあらざること判明し・・・客年十月北海道連調より本件送金に関する手続等の査報方促進依頼があつたから大蔵省に照會したところその取扱方針を次の如く回答があったので右北海道連調に通報した」との記述がある。なお、「日鉄輪西製鉄所は政府に「送金に関する手続等の査報方促進依頼」を提出し、大蔵省からの回答を一九四八年一月に同社に伝えている」かどうかについては、関係省において調査した限りでは、事実関係を把握することができる記録が見当たらないことから、お答えすることは困難である。
 また、お尋ねの「未払金」がどのように処理されたかについて、関係省において調査した限りでは、事実関係を把握することができる記録が見当たらないことから、お答えすることは困難である。いずれにせよ、徴用された朝鮮半島出身者の未払賃金の問題を含め、韓国との間では、財産・請求権協定第二条1において「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が・・・完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認」している。