質問主意書

第168回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第七八号

内閣参質一六八第七八号
  平成十九年十二月十八日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員松野信夫君提出地球温暖化対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員松野信夫君提出地球温暖化対策に関する質問に対する答弁書

一について

 「原子力設備利用率の向上」のための取組としては、既に多くの原子炉で導入が進んでいる定格熱出力一定運転に加えて、安全の確保を大前提として、原子炉の運転中に待機状態で停止しているポンプ等の予備機等の点検・補修を行うこと等の電気事業者による様々な取組が想定されており、また、「火力発電所の熱効率の更なる向上」のための取組としては、LNGコンバインドサイクル発電等高効率設備の導入拡大等の電気事業者による取組が想定されており、電気事業連合会の環境自主行動計画においては、電気事業者の二酸化炭素排出原単位を「原子力設備利用率の向上」により千九百九十年度における実績から二パーセントから三パーセント程度、「火力発電所の熱効率の更なる向上」により千九百九十年度における実績から一パーセント程度それぞれ改善するとされていると承知している。
 電気事業連合会の環境自主行動計画については、本年十一月に行われた産業構造審議会・総合資源エネルギー調査会と中央環境審議会の合同会合におけるフォローアップにおいて、現状のままでは目標達成は容易ではないが、原子力発電の推進や火力発電熱効率の向上に加えて京都メカニズムの活用等の対策を十分に実施することにより、目標達成が可能な範囲にあると判断している。

二の1について

 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)第八条に基づく京都議定書目標達成計画(平成十七年四月二十八日閣議決定。以下「目標達成計画」という。)においては、電力事業者による原子力設備利用率の向上、火力発電の熱効率の更なる向上等の取組を通じた電力分野における二酸化炭素排出原単位の低減を、重要な対策として位置付けている。
 産業部門、業務その他部門、家庭部門、運輸部門及びエネルギー転換部門の各部門別の二酸化炭素排出量を算定する際、各主体の活動状況等を考慮し、部門別に進捗状況の評価と対策・施策の見直しを着実に遂行するため、電気事業者の発電に伴うエネルギー起源二酸化炭素排出量を、電力使用量に応じて各部門に配分することとしている。

二の2について

 家庭部門の二酸化炭素排出量の削減のためには、電力の需要側である家庭における省エネルギー対策と、電力の供給側である電気事業者における二酸化炭素排出原単位の改善の双方が必要であると考えており、目標達成計画に基づき、双方の対策を進めているところである。
 仮に二千二年度に計画された設備利用率で原子力発電所が運転していた場合については、電気事業連合会において、二千五年度の二酸化炭素排出量は実績と比べて約二千九百万トン削減されていたと試算をしているものと承知している。この場合、家庭部門では実績と比べて八百五十万トン削減されていたことになり、この量は基準年である千九百九十年度からの二千五年度における家庭部門の排出増加量の十八パーセントに相当する。

三について

 家庭部門の二酸化炭素排出量の増加は、暖房、冷房、給湯及び厨房の各用途については世帯数増加の影響が大きく、照明及び家電の各用途については、世帯数増加の影響のみならず世帯当たりのエネルギー消費の増加の影響も大きい。
 我が国全体の国内総生産当たりのエネルギー消費量が欧米諸国に比べて低いのは、我が国の家庭における国内総生産当たりのエネルギー消費量が欧米諸国と比較して少ないことに加えて、我が国の鉄鋼業やセメント業等におけるエネルギー効率の改善に向けた取組が進んでいること等の様々な要因が考えられる。

四の1について

 「一人一日一キログラム二酸化炭素削減」は、平成十九年五月二十四日に当時の安倍内閣総理大臣の演説で提案された「美しい星五十」の中で、京都議定書の目標達成に向けたオフィスや家庭で取り組む国民運動の一つとして盛り込まれたものである。

四の2及び7について

 平成十九年十月一日の福田内閣総理大臣の所信表明演説において、政府として、京都議定書の目標を確実に達成するために全力を尽くすこととしており、そのための取組の一つとして、「一人一日一キログラム二酸化炭素削減」等の国民運動についても引き続き実施していくべきものと考えている。

四の3について

 「一人一日一キログラム二酸化炭素削減」の担当部局は、環境省地球環境局地球温暖化対策課である。

四の4について

 「一人一日一キログラム二酸化炭素削減」に係る事業としては、環境省において、「平成十九年度北海道洞爺湖サミットへ向けた地球温暖化防止キャンペーン委託業務」を平成十九年度予算により実施しているところである。その事業内容は、ホームページの運営等により「一人一日一キログラム二酸化炭素削減」の国民運動を推進するとともに、平成二十年の北海道洞爺湖サミットの大きなテーマの一つである地球温暖化防止に関する世論喚起や普及啓発を図るための地球温暖化防止キャンペーンを実施することであり、その事業の実施に当たっては、株式会社電通へ業務を委託している。委託先企業の選定に当たっては企画競争を実施し、その結果、同社が選定されたものである。委託に係る契約金額は一億円となっているが、実際に同社に対して支払われる額は、年度末の精算により確定する。

四の5について

 環境省においては、平成二十年度概算要求で、「一人一日一キログラム二酸化炭素削減国民運動推進事業」に係る予算を計上しており、現在、政府内で検討しているところである。

四の6について

 「一人一日一キログラム二酸化炭素削減」等の国民運動の成果については、環境省において、地球温暖化防止に対する国民の意識に関する調査等により、できる限り把握に努めることとしている。

五について

 現行の目標達成計画においては、家庭部門の対策として、国民運動の展開を図ることのみならず、住宅・建築物の省エネルギー性能の向上、トップランナー基準に基づく機器の効率向上、高効率給湯器等省エネルギー機器の普及支援等の取組を推進している。
 また、現在行っている目標達成計画の見直しの中で、住宅・建築物の省エネルギー性能の一層の向上、トップランナー制度の対象となる機器の拡充、地球温暖化防止活動推進員の更なる活用等の対策について検討を進めていくこととしている。

六について

 事業者による地球温暖化対策のための自主行動計画(以下「自主行動計画」という。)については、産業界自らが自主的な目標の確実な達成に向けて取り組むとともに、政府は、目標達成計画に基づき、その透明性・信頼性・目標達成の蓋然性が向上されるよう、関係審議会等において定期的にフォローアップを行っているところである。このように、政府及び産業界の関係者がそれぞれの役割において自主行動計画の目標が確実に達成されるよう努めている。さらに、産業部門の対策として、温室効果ガス排出量の算定、報告及び公表の制度の導入とその着実な運用、省エネルギー性能の高い機器及び設備の導入促進等も進めている。
 環境税については、国民に広く負担を求めることになるため、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置付け、その効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取組の現状等を踏まえて、国民、事業者等の理解と協力を得るように努めながら、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題であると認識している。