質問主意書

第168回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第五八号

内閣参質一六八第五八号
  平成十九年十一月二十二日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員川田龍平君提出クボタ・ショック後のアスベスト対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出クボタ・ショック後のアスベスト対策に関する質問に対する答弁書

一の1について

 平成十七年度補正予算においては、「隙間のない健康被害者の救済」のため、環境省において三百八十七億六千万円の予算を計上している。また、既存施設におけるアスベストの除去など「今後の被害を未然に防ぐための対応」のため、内閣府において一億六千万円、法務省において三億四千万円、外務省において十億七千万円、財務省において十億六千万円、文部科学省において七百四十四億七千万円、厚生労働省において三百九十九億一千万円、農林水産省において十四億三千万円、経済産業省において二十四億二千万円、国土交通省において百八十五億八千万円及び旧防衛庁において十六億七千万円の予算を計上している。なお、このほか施設整備費等アスベスト対策に係る経費を事業費の一部として含むものがある。
 平成十八年度予算においては、「隙間のない健康被害者の救済」のため、環境省において八億円及び厚生労働省において八十四億一千万円の予算を計上している。また、既存施設におけるアスベストの除去など「今後の被害を未然に防ぐための対応」のため、財務省において三億一千万円、文部科学省において五千万円、厚生労働省において十四億九千万円、農林水産省において七億円、経済産業省において二億四千万円及び環境省において三億七千万円の予算を計上している。さらに、国民への情報提供など「国民の有する不安への対応」のため、厚生労働省において三億二千万円、環境省において一億二千万円及び旧防衛庁において一千万円の予算を計上している。なお、このほか施設整備費等アスベスト対策に係る経費を事業費の一部として含むものがある。
 御指摘の成果としては、「隙間のない健康被害者の救済」については、石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号。以下「石綿健康被害救済法」という。)に基づき、平成十八年度末までに、救済給付については二千三百八十九件、特別遺族給付金については八百八十二件の認定を行い、救済給付等の支給を実施した。また、「今後の被害を未然に防ぐための対応」については、関係省庁において実施しているアスベスト使用実態調査において現時点までに把握している状況によると、アスベストにばく露するおそれがあった施設等のうち、延べ二万八百七十九箇所について既に除去等の措置がとられており、延べ一万二百十三箇所について立入禁止等の措置、都道府県等への指導の措置等がとられている。さらに、国民への情報提供など「国民の有する不安への対応」については、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)に基づく健康管理手帳所持者に対して無料の健康診断を実施しているとともに、建築物解体現場周辺を中心とした大気環境モニタリングを実施するなどアスベスト対策調査を行ってきている。

一の2について

 平成十九年度予算においては、「隙間のない健康被害者の救済」のため、厚生労働省において六十二億六千万円及び環境省において七億四千万円の予算を計上している。また、既存施設におけるアスベストの除去など「今後の被害を未然に防ぐための対応」のため、外務省において四千万円、文部科学省において二千万円、厚生労働省において九億九千万円、農林水産省において三億五千万円、経済産業省において三億円、環境省において八千万円及び防衛省において二億四千万円の予算を計上している。さらに、国民への情報提供など「国民の有する不安への対応」のため、厚生労働省において五億二千万円、国土交通省において一千万円、環境省において二億二千万円及び防衛省において二千万円の予算を計上している。なお、このほか施設整備費等アスベスト対策に係る経費を事業費の一部として含むものがある。

一の3について

 予算を適切に執行することにより、一の1についてで示したような成果を得ているものであり、「十分な成果」を上げているものと考えている。

二の1について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかでないが、石綿健康被害救済法第三十二条第一項の規定に基づき独立行政法人環境再生保全機構(以下「機構」という。)に対し政府から交付された額は、平成十七年度に三百八十七億五千九百八万六千八百六十七円、平成十八年度に一億五百三十九万六千円であり、平成十九年度予算では五億八千三百五万八千円が計上されている。石綿健康被害救済法第三十六条の規定に基づき機構に対し厚生労働大臣から交付された額は、平成十九年度に平成十九年十一月十六日現在で七十億二百六十六万千円である。また、機構によると、石綿健康被害救済法第三十二条第二項の規定に基づき、地方公共団体からは平成十九年度に平成十九年十一月十六日現在で四億九千四百万円が拠出されており、石綿健康被害救済法第三十五条第二項の規定に基づき、船舶所有者からは平成十九年度に平成十九年十一月十六日現在で千三百六十六万七千九百五十一円の一般拠出金が徴収されており、また、石綿健康被害救済基金の運用によって生じた利子は、平成十七年度は実績がなく、平成十八年度は一億二千七百九十一万九千八百十六円、平成十九年度は平成十九年十一月十六日現在で九千四百六十六万二千六百円である。機構によれば、以上の収入以外の収入金はないとのことである。

二の2について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかでないが、機構によると、機構が行う業務の事務の執行に要する費用として、平成十七年度は一億五千三十二万千四百五十六円が支出され、平成十八年度は八億四千八百四万六千三百六十六円が支出され、平成十九年度予算において十一億七千五百七十一万三千円が計上されているとのことである。

二の3について

 平成十九年度から機構が実施する石綿健康被害救済制度の被認定者に関する医学的所見等の解析調査のために、平成十九年度予算において千百七十一万八千円が計上されている。

二の4について

 機構によると、平成十七年度の業務経費のうちの石綿健康被害救済業務経費のうち、広報費等に係る経費は五千三十七万百二十七円、本部増床及び支部事業所借上のための敷金は三千九百三十三万六百九十六円、システム開発費等に係る業務委託費は二百九十四万円、事務所執務環境の整備に係る経費は二千二百三十万二千二百十円、事務所借上等の賃借料は五百三万六千七百五十六円、人件費等は三百四十三万二千五十一円、その他出張旅費、ホームページ改修等業務委託費、レントゲンフィルム保管用フォルダー等消耗品費等の経費は二千六百九十万九千六百十六円であるとのことである。

二の5について

 機構によると、平成十八年度の業務経費のうちの石綿健康被害救済業務経費のうち、広報費等に係る経費は、申請・給付関係が一億五千七百三十一万千四百十四円、徴収関係が百十七万八千三百二十六円であり、システム開発費等に係る業務委託費は九千三十三万三千六百円、事務所執務環境の整備に係る経費は千三百九十万四千五百九十三円、事務所借上等の賃借料は九千百八十三万五千九百四円、人件費等は三億三百六十九万六千三百五十円、その他出張旅費、備品費、各種機器リース料・保守料、レントゲンフィルム保管用フォルダー等消耗品費等の経費は一億八千九百七十八万六千百七十九円であるとのことである。

二の6について

 機構における業務については、環境省独立行政法人評価委員会における評価を通じて、常時、効率的かつ効果的な業務への見直しが図られているものと考えているが、今後とも被害者への救済給付の支給が適切に行われるよう努めてまいりたい。

三の1について

 本来、被害者の救済は、その原因者が救済に係る費用を負担することが原則であるが、石綿による健康被害については、発症までの潜伏期間が三十年から四十年と非常に長期にわたること、石綿がその有用性から広範に利用されてきたこと等の事情により、個々の健康被害について原因者を特定することが極めて困難であるという特殊性が存在しているため、石綿健康被害救済制度においては、石綿による健康被害の迅速な救済を図るため、民事責任又は国家賠償責任と切り離し、国、地方公共団体及び事業主が全体で費用を負担することとしている。

三の2について

 環境省としては、特別事業主の名称及び特別拠出金の額の公開によって害されるおそれがある当該特別事業主の権利、競争上の地位その他正当な利益としては、当該特別事業主に対する正当な社会的評価等を想定している。

三の3について

 御指摘の「特別事業主側」の意味するところが必ずしも明らかでないが、石綿による健康被害の救済に係る事業主負担に関する検討会(以下「検討会」という。)における審議の結果、「公にすることにより、特別事業主の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあること等から特別事業主の名称及び特別拠出金の額は公開しない」とされたことを踏まえ、特別事業主の名称及び特別拠出金の額を公開しないこととしているものである。

三の4について

 環境省としては、特別事業主の名称及び特別拠出金の額を公開することによって特別事業主の権利、競争上の地位その他正当な利益が害されるおそれがあるとの理由で、特別事業主の名称及び特別拠出金の額を公開しないことは、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)の趣旨にのっとったものであると考えており、「合理性を欠く」ものとは考えていない。
 なお、石綿健康被害救済制度は、個々の健康被害について原因者を特定することが極めて困難であること等の石綿による健康被害の特殊性にかんがみ、民事責任又は国家賠償責任と切り離し、国、地方公共団体及び事業主が全体で費用を負担し、石綿による健康被害の迅速な救済を図るものであり、個々の健康被害の因果関係を明らかにして、その原因者から費用を徴収しようとするものではない。

三の5について

 特別事業主の数は四社であり、平成十九年度における特別拠出金の総額は三億三千五百七十五万六千二百三十四円である。特別事業主の名称及び特別事業主ごとの特別拠出金の額については、環境省としては、これを公開することによって特別事業主の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると考えており、お答えすることは差し控えたい。

三の6について

 特別事業主の負担については、石綿の使用量、指定疾病の発生の状況その他の事情を考慮して特別拠出金の額の算定方法を定めることとされていることを受けて、検討会及び中央環境審議会における審議の結果を踏まえ、事業場ごとの石綿の使用量及び事業場ごとの労災認定件数などの利用し得る限りの客観的な指標を用いて算定しているところであり、環境省としては、このように算定される特別事業主の負担が「極端に少ない」とは考えていない。
 なお、石綿健康被害救済制度は、個々の健康被害について原因者を特定することが極めて困難であること等の石綿による健康被害の特殊性にかんがみ、民事責任又は国家賠償責任と切り離し、国、地方公共団体及び事業者が全体で費用を負担し、石綿による健康被害の迅速な救済を図るものであり、個々の健康被害の因果関係を明らかにして、その原因者から費用を徴収しようとするものではない。

三の7について

 特別事業主の負担については、石綿の使用量、指定疾病の発生の状況その他の事情を考慮して特別拠出金の額の算定方法を定めることとされていることを受けて、検討会及び中央環境審議会における審議の結果を踏まえ、事業場ごとの石綿の使用量及び事業場ごとの労災認定件数などの利用し得る限りの客観的な指標を用いて算定しているところであり、環境省としては、このように算定される特別事業主の負担の程度は適当なものであると考えており、特定事業主に対して一層の負担を求めることは考えていない。
 なお、石綿健康被害救済制度は、個々の健康被害について原因者を特定することが極めて困難であること等の石綿による健康被害の特殊性にかんがみ、民事責任又は国家賠償責任と切り離し、国、地方公共団体及び事業者が全体で費用を負担し、石綿による健康被害の迅速な救済を図るものであり、個々の健康被害の因果関係を明らかにして、その原因者から費用を徴収しようとするものではない。

四の1について

 企業賠償責任保険におけるアスベストによる損害の取扱いについてヒアリングを行った事実はあるが、具体的な損害保険会社の名称や個々のやりとりについて明らかにすることは、金融庁の円滑な業務遂行に支障を来すおそれがあること等から答弁を差し控えたい。

四の2について

 企業の損害賠償責任をどのように損害保険で担保するかについては、企業と損害保険会社間の私的な契約にゆだねられており、金融庁としては、お尋ねの点については把握していない。

四の3について

 企業の損害賠償責任をどのように損害保険で担保するかについては、企業と損害保険会社間の私的な契約にゆだねられており、金融庁としては、お尋ねの点については把握していない。

四の4について

 企業の損害賠償責任をどのように損害保険で担保するかについては、企業と損害保険会社間の私的な契約にゆだねられており、金融庁としては、お尋ねの点については把握していない。

四の5について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、損害保険会社における企業向け商品については、契約者が一般の個人契約者と比較して専門的知見を有している企業であることにかんがみ、原則として、個々の企業の多様なニーズに応じて保険会社と当該企業との私的な契約により柔軟に商品の内容を設計することができるよう、当該保険契約の趣旨、目的等の範囲内で、金融庁の商品審査を受けることなく特約の新設又は変更を行い得るものとしているところである。

四の6について

 御指摘のような情報の開示については、損害保険会社が自ら判断すべきものと考えている。

五の1について

 厚生労働省においては、平成十七年度以降の石綿ばく露作業に係る労災認定事業場の情報の公表を含め、石綿ばく露作業に関する情報の周知の在り方を検討してきたところであり、現時点で公表に至っていないものである。

五の2について

 石綿ばく露作業に係る労災認定事業場の情報の公表は、公表対象事業場でこれまで業務に従事したことがある方に対し、石綿ばく露作業に従事した可能性があることの注意喚起につながるものであり、また、石綿ばく露作業に係る労災認定事業場の周辺住民となるか否かの確認や関係省庁及び地方公共団体等における石綿被害対策の取組に役立つものであると考えている。

五の3について

 五の2についてで述べたとおり、石綿ばく露作業に係る労災認定事業場の情報の公表は、公表対象事業場でこれまで業務に従事したことがある方に対し、石綿ばく露作業に従事した可能性があることの注意喚起につながるものであり、また、石綿ばく露作業に係る労災認定事業場の周辺住民となるか否かの確認や関係省庁及び地方公共団体等における石綿被害対策の取組に役立つものであると考えていることから、石綿健康被害救済法に基づく特別遺族給付金に係る請求の促進という観点も踏まえ、平成十七年度以降に行われた石綿ばく露作業に係る労災認定事業場の情報の公表に向けて検討を進めてまいりたい。