質問主意書

第168回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第五一号

内閣参質一六八第五一号
  平成十九年十一月十六日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 町村 信孝   

       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員藤末健三君提出独占禁止法の改正等の基本的考え方に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤末健三君提出独占禁止法の改正等の基本的考え方に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)の見直しについては、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成十七年法律第三十五号)附則第十三条の規定にかんがみ、内閣官房長官の下で開催された「独占禁止法基本問題懇談会」により取りまとめられた「独占禁止法基本問題懇談会報告書」(平成十九年六月二十六日公表。以下「報告書」という。)を踏まえて、現在、公正取引委員会において検討を行っているところであり、御指摘の「独占禁止法の改正等の基本的考え方」(平成十九年十月十六日公表)は、同委員会の現時点における考え方を示したものである。
 御指摘の課徴金の対象範囲の拡大については、報告書において、「私的独占(排除型)については、違反金の対象とすることが適当である。不公正な取引方法については、違反金の対象とすることは不適当であるという立場と、違反金の対象とすることはできないわけではなく、必要なものについては違反金の対象とすべきであるという立場に分かれた。」、「不公正な取引方法については、仮に違反金の対象とすることを検討する場合でも、(不当廉売、差別取扱い、再販売価格の拘束といった私的独占の予防的規制と位置づけられる行為類型を含む)不公正な取引方法全体を違反金の対象とすることよりも、私的独占の予防的規制とされていない行為類型のうち、違反金を賦課することによる抑止の必要性が高いと考えられるものに限定して違反金の対象とすることの是非を検討することが考えられる。この観点からは、ぎまん的顧客誘引、優越的地位の濫用については、私的独占の予防的規制とは位置づけられず、また、違反行為者に不当な利得が生じる蓋然性が高く、特に、優越的地位の濫用については違反行為も多くみられることから、排除措置命令に加えて、違反金を賦課することによる抑止の必要性を検討すべきであると考えられる。」とされていることを踏まえ、公正取引委員会としては、他の事業者の事業活動を排除することによる私的独占、一定の不当表示及び一定の優越的地位の濫用を行った事業者に対する課徴金を導入することが適当と考えたものである。
 また、御指摘の審判制度の在り方については、報告書において、「独占禁止法については、高度な専門性に基づく執行・判断が求められる。いわゆる実質的証拠法則を伴う審判制度は、準司法機関としての公正取引委員会による事実認定を尊重することを通じて、高度な専門性に基づく執行・判断を担保するとともに、早期の紛争解決を図ることができる。」等の理由から「審判制度を設けることが適当」、「現行法で採用されている不服審査型審判方式は、旧法下での事前審査型審判方式において、処分の遅延や制度の趣旨に沿わない審判の生じる誘因があり、審判件数の増加により違反行為に対する十分な抑止力の確保に支障を来すことが懸念されたこと、違反行為が後を絶たない中で迅速な処分、実効的な法執行が求められていること、を踏まえて導入されたものであり、導入後、現時点までにおいて、早期に処分がなされるとともに、審判の件数は減少していると評価でき、一定の成果を上げていると考えられる」等の理由から「当面は、現行の不服審査型審判方式を維持することが適当」、「審判の迅速化や制度の趣旨に沿わない審判の増加を防止するための措置を講じた上で、独占禁止法違反事件の大部分を占める入札談合事案に関する実効的予防策の実施状況を踏まえつつ、事前審査型審判方式を改めて採用することが適当」とされていることを踏まえ、公正取引委員会としては、現行の審判制度を当面維持するとともに、審判に対する信頼性を高めるため、所要の措置を講ずることが適当と考えたものである。
 政府としては、独占禁止法の見直しについて、課徴金の対象範囲の拡大及び審判制度の在り方を含め、関係各方面の意見も踏まえつつ検討を進め、早急に結論を得るように努めてまいりたい。