第168回国会(臨時会)
質問第一〇八号 歯科診療の向上に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二十年一月九日 福山 哲郎
参議院議長 江田 五月 殿 歯科診療の向上に関する質問主意書 適切な食事を通じて健康の回復、維持、増進を図ることは、運動とともに健全な日常生活を営む上で注目され、実践されている。メタボリックシンドロームにおける歯周病予防・維持管理は糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞の発症、重篤化を抑制し、国民の健康増進、医療費抑制に寄与することが明らかになってきている。 病院、介護の現場では、栄養サポートチームの取組、口腔ケアの取組などを通じて、入院患者の平均在院日数の短縮、誤嚥性肺炎の減少を始め、様々な効果が報告されている。また、八〇二〇運動などによって口腔機能が高く維持されることで、総医療費が抑制されることも期待されている。健康寿命の延伸、並びにそれに伴う総医療費の抑制に歯科医療が果たすべき役割は極めて大きいと考えられるが、歯科医療を取り巻く現状は極めて厳しい。 そこで、歯科医療を更に発展させる観点から、以下のとおり質問する。 一 歯の健康が全身の健康に大きな影響を及ぼすと、専門家の間では指摘されている。例えば、歯周病の予防・管理が糖尿病や動脈硬化の予防・重篤化抑制、早期低体重児出産の抑制などにつながると言われているが、政府の認識を示されたい。 二 平成一八年度の診療報酬改定によって歯周病治療を保険診療で行うことが困難となった。歯周病治療に係る継続管理の診療報酬上に明確な位置付けと点数化が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。 三 八〇歳で自分の歯を二〇本以上持っている、いわゆる八〇二〇を実現している人は、医療費用や介護費用を削減できるとの調査結果が報告されているが、政府の認識を示されたい。 四 国民医療費に占める歯科診療医療費の割合は、昭和五六年の一一・〇パーセントを極大値として下がり続け、平成一八年には七・七パーセントにまで下落した。政府はどの程度の数値を適切と考えているのか、見解を示されたい。 五 現在、厚生労働省には一一一名の医師が公務員として働いているのに対し、歯科医師は一三人にすぎず、医師の約一〇分の一程度のレベルでしかない。歯科医師の比率を増やす必要性について、政府の見解を示されたい。 六 厚生労働省の中央社会保険医療協議会のメンバーに医師が五人であるのに対して、歯科医師は一人にすぎない。この状況では、歯科医療の重要性を医療政策に十分反映できないのではないかと懸念される。歯科医師、あるいは歯科医療の現場を知る人間の比率を高めることについて、政府の見解を示されたい。 七 中央社会保険医療協議会が平成一九年六月に実施した「第一六回医療経済実態調査(医療機関等調査)結果速報」によると、一般診療所(個人立・無床)の収支差額が二二五・三万円(月額)であるのに対し、歯科診療所(個人立)の収支差額は一二二・九万円(月額)となっている。ひとしく人間の生命と健康を扱う医療機関において、約二倍の格差が付いており、是正が必要だと考えるが、政府の見解を示されたい。 八 レセプトオンラインシステム導入が義務付けられることにより、コンピュータに習熟できずに廃業を余儀なくされる歯科医師が生じることが懸念される。また、機材・システムの導入により数百万円という高額の出費が予想される。オンラインシステム導入に関して、何らかの対応を採ることを検討しているのか、政府の見解を示されたい。 九 画一的な文書提出の義務化によって、歯科医師が患者と向き合う時間が奪われ、逆にコミュニケーション不足になるという皮肉な結果が生じている。一回目はまだしも、二回目以降の治療で大きな変更点がなければ義務化を外すなど、現実に即した柔軟な運用をすべきだと考えるが、政府の見解を示されたい。 十 高齢化社会が進み、お年寄りの介護にかかわるニーズは日増しに高まっている。今後、地域の「認知症サポーター」を増やす取組が必要となり、歯科医療従事者もその中核になり得ると考えられる。歯科医師による訪問介護や、歯科衛生士による訪問衛生指導のインセンティブを高める対応を診療報酬上で採ること等によってその可能性を広げることができると考えるが、政府の見解を示されたい。 十一 平成一九年四月に施行された医療法改正によって、C型肝炎にかかっている患者に対する安全対策など、歯科医師が負うべき義務が増えたにもかかわらず、その行為は、今までの初診料・再診料に含まれ、新たな保険点数として評価されていない。診療報酬への加算など何らかの対応の必要性について、政府の見解を示されたい。 十二 職場における歯の検診は極めて重要である。しかし、労働安全衛生法第六六条一項は「医師による健康診断を行わなければならない」とあるのみで、歯科の定期検診は明記されていない。そのことによって、学校保健によって培われた歯の健康は損なわれ、老人保健における対策は手遅れになってしまう。労働安全衛生法第六六条一項は、歯科検診も含むと解釈するのか明らかにされたい。また、歯科検診も含むと解釈しない場合、通知・通達による努力義務ではなく、法律に明記されるべきだと考えるが、政府の見解を示されたい。 右質問する。 |