質問主意書

第168回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九〇号

仙台市地下鉄東西線の建設への補助金支出に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年十二月十七日

川田 龍平   


       参議院議長 江田 五月 殿



   仙台市地下鉄東西線の建設への補助金支出に関する質問主意書

 宮城県仙台市は、現在地下鉄東西線建設計画を進めている。しかし、この計画は過剰に見積もられた過去の需要予測に基づいて推進されており、採算性が無視されている。
 地下鉄東西線建設許可申請において、仙台市はこの事業の費用便益比を一・六二としたが、公金支出差止め住民訴訟の第一審で、一・〇九であることが判明した(計算法は国土交通省マニュアル99による)。一・〇を上回っているものの、この値は飽くまで開業初日から利用者が十一万九千人あるという前提に立つものである。その後明らかになった仙台都市圏総合交通調査、いわゆる第四回パーソントリップ調査(平成十四年度実施)の結果から、東西線は開業後十年目(平成三十七年時点)ですら四万人から六万人しか利用者がないという値が出ている。
 前掲の訴訟において仙台市の担当者は「乗車数予測を見直せば、東西線の見直しになる」と証言した(本年六月二十二日、控訴審にて)。市はこの数字を知りながら、国、市議会、市民に知らせないまま建設を続行している。本事業には国からの交付金、補助金も充てられる予定である。国の基準に満たない事業に補助金を支出することは許されないのではないか。国は最新の調査結果に基づき補助金の支出の可否を判断すべきである。
 仙台市の東西線と同規模の大阪市の今里筋線、福岡市の七隈線では、いずれも実際の乗車数は予測のわずか三、四割にとどまり、年間の赤字額は「百億円以上の恐れ」とも報じられている(大阪市地下鉄今里筋線、毎日放送本年三月十四日報道)。第四回パーソントリップ調査の結果から、東西線でも同様の赤字を年々累積させてしまう可能性が高い。
 仙台市が提示している費用便益比一・六二の根拠である一日当たりの利用者数は、約十一万九千人である。この人数を達成するには、仙台市の需要予測の前提に立ったとしても、今後開業日までに東西線沿線の人口が三万二千人以上増えなければならず、非現実的である。
 今後少子化傾向が続くことが予想される中で、本事業は、国土交通省において補助金支出の基準の目安とされる費用便益比一・五より低いのみならず、さらに一・〇を切る可能性が高い。
 そのような事業に対する国からの補助金支出に関し、以下質問する。

一 第四回パーソントリップ調査について

 地下鉄東西線建設許可申請に際しては、第三回パーソントリップ調査を基に需要予測を立てているが、地下鉄東西線裁判第二審において、申請前に行われた第四回パーソントリップ調査のデータの存在が明らかになった。政府はその内容について把握しているか明らかにされたい。

二 利用者数の見込みの狂いについて

 国、宮城県、仙台市等が合同で実施した第四回パーソントリップ調査の結果に基づき作った交通移動モデルから、仙台市地下鉄東西線は、開業後十年目ですらせいぜい四万人から六万人しか利用者がないという値が出ている。平成十五年事業許可申請時には十一万九千人の需要があるとして申請がなされ、事業許可が与えられているが、国等が合同で総合的に行った最新の調査結果は、仙台市の需要予測モデルよりも信頼性が高く、こちらのモデルを用いて再計算した方がより正しい需要見込みになるが、申請時の需要見込みの値が直近のパーソントリップ調査結果より信頼性があると考えるか、政府の見解を示されたい。
 また、最新の交通移動モデルは、需要予測の計算法として信頼性も高いものであるが、そうした計算法を持っていながら、その計算法を用いて事業許可申請時の条件を当てはめて十一万九千人の検証を行う必要性は無いと考えるか。つまり、予測できる計算手法が有りながら計算しないでいることを国として容認するのか明らかにされたい。

三 一・〇を下回る費用便益比について

 前記の第四回パーソントリップ調査のデータによれば、需要予測は申請時の約半分となり、費用便益比は一・〇を大きく下回ることになるが、そのような事業に補助金を支出することは妥当と考えるか、政府の見解を明らかにされたい。

四 費用便益比が一・〇を割り込むことが判明した事例の有無について

 公共事業は、その開始から完成まで長期間にわたるものが少なくないが、認可後に、当該事業の費用便益比の推移について調査を行ったことがあるか明らかにされたい。その調査の必要がないと考えているならば、その理由を明らかにされたい。
 また、申請時に費用便益比一・〇以上を満たしながら、その後、前記の調査その他により費用便益比が建設許可の基準を下回ることが明らかになった事業はこれまで存在するか。存在する場合、その後建設が実施されたものと中止されたものについて、それぞれ明らかにされたい。

五 費用便益比一・〇未満の事業の収支計画について

 前記四の事例のうち、実施された事業のその後の収支状況(予定どおりの債務償還となっているかどうか)を把握しているか明らかにし、把握しているならば、収支状況を示されたい。

六 国も関与して行った調査結果の活用について

 前記のような事情から許可申請時と大きく異なる状況にある地下鉄東西線建設の事業主体である仙台市に対し、今後需要予測の見直しの要請など、何らかの対応をとる考えはあるか明らかにされたい。

  右質問する。