質問主意書

第168回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六七号

鳩山邦夫法務大臣の死刑執行に関してなされた発言等に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年十一月二十六日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   鳩山邦夫法務大臣の死刑執行に関してなされた発言等に関する再質問主意書

 私が十月二十五日に提出した「鳩山邦夫法務大臣の死刑執行に関してなされた発言等に関する質問主意書」(第一六八回国会質問第三一号)に対する答弁書(以下「前回答弁書」という。)を十一月二日に受領した。
 しかし、なお答弁に不十分な部分があるので、再度以下のとおり質問する。

一 政府は、刑事訴訟法第四百七十五条第二項では、死刑判決確定後六箇月以内に死刑の執行をしなければならない規定になっているにもかかわらず、実際の死刑の執行は、「平成八年から平成十七年までの十年間において死刑を執行された者について、判決確定の日から執行までの平均期間は、約七年五か月であり、また、平成九年から平成十八年までの十年間において死刑を執行された者についての当該平均期間は、約七年十一か月である」と答弁した。そして、「再審請求や恩赦の出願を再々行っている者があるなどの事情をも踏まえ、裁判の執行とはいえ、人の生命を絶つ極めて重大な刑罰の執行に関することであるため、その執行に慎重を期していることによるものであって、御指摘のように『違法状態を長年容認していた』ものとは考えていない。」と答弁している。
 政府の答弁では、実際の死刑執行が長期間かかっていても、違法ではないということのようであるが、疑問がある。まず、刑事訴訟法の規定からすれば、死刑判決確定後六箇月以内に死刑の執行をしなければ原則として違法になるが、同条第二項ただし書に該当する限り、執行しなくても違法性は阻却されると解釈される。政府もこのとおりの解釈であるか、明らかにされたい。

二 私は、同条第二項ただし書に該当する事項以外に死刑判決確定後六箇月以内に死刑執行しなくても違法性が阻却されるという事由はないと考えているが、政府もそのとおりであるか明らかにされたい。仮に、そうではなく同条第二項ただし書に該当する事項以外にも死刑執行しなくても違法性が阻却される事由があるというのであれば、それを明示されたい。

三 同条第二項ただし書においては、再審請求等がとられその手続が終了するまでの期間等について、これをその期間に算入しない旨が規定されているが、逆に言えば再審請求等の手続が終了すれば、六箇月の期間算入になるので、この点をも踏まえて期間計算をしなければならないと考えるが、そのとおりであるか明らかにされたい。
 また、この点を考慮しても、前回答弁書で明らかにされたすべての死刑判決の執行は、ただし書の違法性阻却事由に該当してすべて六箇月以内の執行という法に適合したものであるか。例えば、前回答弁書では昭和五十二年一月一日から平成十九年九月三十日までの過去三十年間に確定した死刑判決の事件名及び確定年月日を明らかにしているが、これらのうち平成十八年までの分はすべて六箇月を経過している。中には二十年、三十年以上も経過しているものもあるが、すべてが同条第二項ただし書に該当するので期間制限の点について問題なく適法であるとしているのか、政府の見解を示されたい。
 これまでの歴代法務大臣の中には、同法第二項ただし書を考慮してもなお六箇月の期間を経過しておきながら、死刑執行を命じていないものがあるのではないかと考えるが、明らかにされたい。

四 刑事訴訟法第四百四十二条によれば、死刑判決確定後、再審請求しても執行停止する効力はないが、検察官は執行停止を求めることができる。そうすると理論上は、仮に法務大臣が死刑執行を命じても、検察官は再審の請求についての裁判があるまで死刑の執行を停止することができると解釈できるが、そのとおりか明らかにされたい。また、再審請求後、検察官が執行停止を求めた事例はどの程度あるか。あったとすればどのような事案であるか、それぞれ明らかにされたい。

五 前回答弁書で、昭和の年代に死刑判決が確定しているものが多数存在していることが判明した。死刑は地球より重いという生命を剥奪するものであるから、慎重の上にも慎重でなければならず、長期間放置状態の実態をも踏まえると死刑制度を廃止するなり、死刑執行については抜本的に改めるべきであると考える。法務大臣が進めようとしている省内勉強会ではこうした方向での検討を行う予定があるかどうか明らかにされたい。

  右質問する。