質問主意書

第168回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五七号

地震時における原子力空母の安全性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年十一月十五日

福島 みずほ   


       参議院議長 江田 五月 殿



   地震時における原子力空母の安全性に関する質問主意書

 中越沖地震において、柏崎・刈羽原子力発電所では、想定以上の規模の地震が起こり、原子力発電所の安全性、耐震性が大きな問題となった。しかしながら、このような危険は、原子力発電所にとどまらず、配備を予定されている原子力空母についても検討されなくてはならない。ある専門家は、首都圏で、直下型地震が起きた場合、横須賀に入港中の原子力空母の原子炉にメルトダウンが起きれば、首都圏の百万人が死亡する危険性があると指摘している。
 地震国・日本にあって、地震時における原子力空母の安全性を確認するため、以下質問する。

一 原子力空母の安全性について

1 原子力発電所においては、地震の際、引き波による五メートル程度の水位低下や海底地盤の隆起によって海水の取り入れが困難となり、原子炉の冷却が困難となる事態が指摘されている。横須賀に入港する原子力空母の場合、冷却用の海水の取入口はどの位置にあるのか。また、何メートルの水位の低下があった場合に、海水の取り入れが困難となるかについて、承知していることをそれぞれ示されたい。承知していない場合は、米国より資料を入手し、それぞれ明らかにされたい。
2 三浦半島直下型地震が起こった場合、横須賀市の埋立地は、震度七以上で液状化現象が起こると予測されている。現在、米国軍予算によって、横須賀基地にガス発電所、変電施設、純水工場、ユーティリティ等が建設されているが、震度七以上の地震が起こった場合の耐震性について、日本の耐震設計基準を満たしていると確認しているか。確認していないのであれば、米国より資料を入手し、それぞれについて、具体的なデータを示されたい。
3 前記1及び2のような事態となった場合、原子炉事故防止のために、原子力空母艦内及び艦外に、どのような非常用設備があると政府は把握しているか。把握していないのであれば、米国より資料を入手し、それぞれについて具体的に示されたい。
4 原子力空母艦内及び艦外に設置された原子炉事故防止のための非常用設備が、想定外の地震やトラブルによって作動しない事態があり得るかどうか、政府は米国より資料を入手すべきである。原子力空母艦内及び艦外に設置された原子炉事故防止のための非常用設備について、政府は安全性を審査しているか明らかにされたい。審査しているのであれば、その具体的なデータを示されたい。また、政府が安全性を審査していない場合、審査すべきと考えるが政府の認識を示されたい。
 さらに、米国が安全性を審査していないのであれば、その理由を政府は承知しているか。承知していない場合、政府は米国に照会し、米国が安全性を審査しない理由を明らかにされたい。

二 一九九八年の米国議会会計検査院による報告書「海軍空母――通常型空母及び原子力空母の費用対効果」は、横須賀を原子力空母の母港とするためには、以下の三点、①放射能作業をする工場の建設、②放射性廃棄物の貯蔵施設の設置、③原子力空母の修理作業を行うためのドライドックの改良、が必要であると指摘している。しかし、これらの施設は、原子炉の修理をしない、放射性廃棄物は原則として搬出しない、という点について日米間で合意した「エード・メモワール」に抵触する。ゆえに、米国議会会計検査院が指摘する前記三点は、将来にわたって実行することはないということを、日米政府間で確認しているか。確認していないのであれば、早急に確認が必要と考えるが、政府の認識を示されたい。

三 原子力空母の液体及び固体の放射性廃棄物は、将来にわたって、横須賀基地において原子力空母外に搬出しないことを日米政府間で確認しているか。確認していないのであれば、早急に確認が必要と考えるが、政府の認識を示されたい。

四 米国、サンディエゴの市民団体が米国海軍に情報公開を求めて得られた公文書によると、一九七三年に原子力潜水艦ガードフィッシュにおいて冷却水漏れが起こり、五名の水兵が被曝し、治療を受けたという。政府は、この事実を確認しているか明らかにされたい。また、確認していないのであれば、その詳細な事実関係について、早急に確認すべきと考えるが、政府の認識を示されたい。

五 本年八月末に、横須賀市は、地元住民に対して、原子力空母の安全対策について説明会を行った。しかしながら、説明の際に、原子炉についての具体的な情報の提供がなかったため、地元住民に不安が広がっている。そのため、地元住民からは、政府や米国海軍から、地元住民に対して、より具体的な情報の提供がなされるべきだという声が高まっている。米国においては、サンディエゴ基地が原子力空母の母港とされた際に、環境アセスメントが実施され、米国海軍関係者から地元住民に対して公聴会が開かれたという。今後、政府及び米国海軍関係者から、横須賀の地元住民に対して、直接、原子力空母の原子炉に関する、具体的な情報公開及び安全性について説明を行う場を設定する予定はあるのか明らかにされたい。また、設定しないのであれば、その理由を示されたい。

  右質問する。