質問主意書

第168回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三一号

鳩山邦夫法務大臣の死刑執行に関してなされた発言等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年十月二十五日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   鳩山邦夫法務大臣の死刑執行に関してなされた発言等に関する質問主意書

 鳩山邦夫法務大臣が、本年九月二十五日、死刑執行に関して発言をしたことが大きな問題になっている。すなわち「法務大臣が絡まなくても自動的に、客観的に進むような方法を考えたらどうか」、「法務大臣の死生観によって影響を受ける」、「法務大臣に責任をおっかぶせるような形ではなく、自動的に進むような方法ってないのかな」、「だれだって判子をついて死刑執行をしたいとは思わない」、「大臣にとって精神的苦痛を感じないものではないでしょう」と発言している。これらの発言の趣旨は、法務大臣にとって死刑執行を命じることは精神的に苦痛であり、法務大臣の関与なしに自動的、客観的に死刑執行を進められないか、そのための省内での勉強会を実施したいとのようである。
 しかしこの発言は、およそ法務大臣としての資質を疑わしめる極めて不当なものであり、このままでは今後の法務行政に悪影響も与えかねない。既にアムネスティ・インターナショナル日本など四十九団体は去る十月十日、鳩山法務大臣に抗議し、発言の撤回を求める声明を出しており、看過できない。
 よって、以下質問する。

一 鳩山法務大臣の発言の趣旨は、法務大臣にとって死刑執行を命じることは精神的に苦痛であり、法務大臣の関与なしに自動的、客観的に死刑執行を進められないか、そのための省内での勉強会を実施したいとの趣旨であるのか明らかにされたい。

二 福田政権においては、今般の鳩山法務大臣の発言を容認するのか。法務大臣こそ、法令の遵守が求められていることはいうまでもないことと思うが、精神的に苦痛であるから、死刑執行の命令に法務大臣の関与をなくすというようなことは責任放棄に等しく、大臣の資質を問わざるを得ない。福田政権では、こうした死刑執行に関する方針を容認するのか。また、鳩山法務大臣に対して何らかの注意ないしは指導などをしていないか。それぞれ明らかにされたい。

三 刑事訴訟法第四百七十五条第一項は「死刑の執行は、法務大臣の命令による。」と規定している。この規定は、死刑の執行は慎重の上にも慎重に行うべきものであるが、最終的には法務大臣の判断を経て実施されるべきものとして、法務大臣を最終的な責任者にしているものである。それだけ法務大臣の責任は重いものであり安易にこれを緩和することはできないと考えるが、政府は同項をどのように理解しているか。政府の見解を示されたい。

四 鳩山法務大臣の発言からすると、刑事訴訟法第四百七十五条第二項で、死刑判決後六箇月以内に死刑の執行をしなければならない規定になっているにもかかわらず、実際には歴代の法務大臣は法を遵守していない疑いが強いことが分かる。

1 鳩山法務大臣は、死刑の執行は判決確定後、平均して約七年半経過してから執行されているとも発言している(「週刊朝日」本年十月二十六日号)が、これはそのとおりか。正確には平均何年で執行されているか。それぞれ明らかにされたい。
2 法務大臣自身が刑事訴訟法を遵守していないとすれば、これは由々しき問題であり、違法状態を長年容認していたことになると考えるが、政府もそのとおりと考えているか。もし、政府も違法であると認識していた場合には、その是正をどのように図ってきたか。それぞれ明らかにされたい。

五 過去三十年間に言い渡された死刑判決について、各人ごとに、事件名、判決年月日、執行の有無、執行年月を明らかにされたい。また、再審申立ての有無も明らかにされたい。仮に法律上、執行しないでよいと判断した正当な理由があれば、併せてその点も付記されたい。これらについて明らかにできない場合は、その理由も示されたい。

六 私の立場は、決して死刑推進ということではない。ただし、現行法上、死刑という制度があり、死刑囚も存在しているのであるから、これは慎重の上にも慎重に対処すべき事柄であると考えている。
 そこで、現実に刑事訴訟法の規定どおりに死刑の執行がなされていないとすれば、むしろ実態に合わせて死刑判決後六箇月以内に死刑の執行を命ずる規定については見直しを図るべきであると考えるが、政府として法改正を検討していないか明らかにされたい。

七 鳩山法務大臣は、死刑執行について考える省内の勉強会について開始したいとして、早急に始める考えを明らかにしている。しかし、どのような方向を目指すのか不明である。仮に法務大臣の関与なしに自動的に死刑執行を進めるための勉強会であれば極めて不当であると言わざるを得ない。政府はこのような方向での勉強会を容認するのか明らかにされたい。

  右質問する。