質問主意書

第168回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一五号

柔道整復師による療養費の不正請求問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年十月二日

辻 泰弘   


       参議院議長 江田 五月 殿



   柔道整復師による療養費の不正請求問題に関する質問主意書

 我が国では、国民が、いずれかの公的医療保険制度に加入し、医療機関で被保険者証を提示することにより、一定の自己負担で必要な医療を受けることが可能であるという、世界に誇るべき国民皆保険制度を採用している。公的医療保険の財政危機が叫ばれ、医療崩壊とさえ言われる現在、国民が安心できる医療提供体制と国民皆保険制度の維持・発展は国民生活の基本に関わる最重要課題である。
 このような状況の中、保険財政の圧迫にもつながる、柔道整復師による療養費の公的医療保険への不正請求問題が大きな社会問題となっている。平成五年には会計検査院から是正要求を受け、また、報道機関からも度々指摘され続けているものの、政府による厳正な指導が徹底されたとは言えず、むしろ問題は悪化している。
 このような観点から、以下質問する。

一 柔道整復に係る療養費において、保険者との協定又は個人契約によって柔道整復師に特例的に認められている療養費の受領委任払いの実態について、支払金額の総額実績を都道府県別及び保険者別に政府の把握状況を示されたい。

二 過去五年間における療養費の支給申請書の数及びその中での骨折、脱臼、捻挫、打撲の内訳について政府の把握状況を示されたい。また、それらの申請書の中で、不正請求であると認められた件数を示されたい。

三 過去五年間における保険者別の「柔道整復療養費を支給する具体的理由」について政府の把握状況を示されたい。

四 健康保険法及び国民健康保険法に定められた療養費支給要件に合致しない療養費支給は、健康保険料(税)を納付している国民への保険者の背信行為であり、政府として保険者を厳重に指導すべきと思われるが、政府の具体的な対応方針を示されたい。

五 平成五年度の会計検査院からの是正要求に対する対応及びその後の改善状況についての政府の把握状況を示されたい。

六 平成十四年十二月三日の参議院厚生労働委員会での審議の中で、柔道整復師の療養費の不正請求問題について、厚生労働大臣は「許しがたいことで」、「正確に我々も指導していきたい」と答弁しているが、政府はどのような取組を行ったのか示されたい。

七 療養費の支給申請書の負傷原因欄の簡素化が行われた経緯について示されたい。また、その簡素化が行われなかった場合、柔道整復師による療養費の不正請求数が現状よりも少なかったと思われるが、政府の見解を示されたい。

八 厚生政務次官経験者であった国会議員からの働きかけで、支給申請書に負傷の原因を具体的に詳しく記載する通知の原案が撤回され、その直後、当該国会議員が接骨師から政治献金を受け取ったという報道を受け、第一五六回国会の衆参両院の厚生労働委員会を中心に活発な議論が行われているが、当該事案の事実関係についての政府の把握状況を示されたい。

九 五十肩、腰痛などの慢性の症状に対してマッサージ等の施術を行った場合、捻挫、打撲などと称して療養費の不正請求が行われる事例が社会問題化しているが、政府の把握状況を示されたい。また、この問題についての政府の具体的な対応方針を示されたい。

十 柔道整復師が患者に対して、支給申請書に具体的な記載をする以前に署名を求める、いわゆる「支給申請書の白紙委任」問題について、政府の把握状況を示されたい。また、この白紙委任が不正請求の温床になっていると考えるが、この問題についての政府の具体的な対応方針を示されたい。

十一 患者の実際の症状よりも多く捻挫の箇所数を偽り水増し請求する、いわゆる捻挫等における部位数の架空水増し請求問題について、政府の把握状況を示されたい。また、この架空水増し請求問題についての政府の具体的な対応方針を示されたい。

十二 厚生労働省パブリックコメント「あはき・柔整広告告示案について」(平成十五年六月十日募集開始)がいまだ公表されていない理由を示されたい。また、公表時期を明示されたい。

十三 柔道整復師の療養費の受領委任払いは、かつて整形外科医が大きく不足していた時代に患者の治療を受ける機会の確保等の患者保護のため特例的に認められたものである。しかし、公的医療保険の財政危機が叫ばれ、医療制度の在り方が大きく論じられる現在、国民が安心できる医療提供体制の継続のためには、療養費の受領委任払い制度そのものの見直しが必要だと思われるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。