質問主意書

第167回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質一六七第一号
  平成十九年八月十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員前川清成君提出司法試験問題事前漏えいについての調査、処分に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員前川清成君提出司法試験問題事前漏えいについての調査、処分に関する質問に対する答弁書

一について

 植村栄治元司法試験考査委員(以下「植村元考査委員」という。)が行った不適正な行為については、法務省職員が、本人及び関係者からの事情聴取や関係資料の収集を行い、その調査結果を平成十九年六月二十九日に公表した。
 これに加え、植村元考査委員が行った不適正な行為が平成十九年新司法試験に与えた影響について、司法試験考査委員において、検討・協議が行われ、同人による行為が、有利な結果をもたらしたとは言えないと判断され、その結果を踏まえ、平成十九年八月二日、司法試験委員会において、平成十九年新司法試験について特段の措置をとらない旨の決定がなされ、同月三日にその旨を公表した。
 政府としては、植村元考査委員が行った不適正な行為については、必要な調査を遂げたものと考えている。

二について

 司法試験委員会においては、植村元考査委員が、大学卒業後、行政法の研究者・教員として大学に長年在籍し、研究・教育活動に従事してきたものであり、司法試験考査委員への任命当時、法科大学院教授の職にあったものであること等を総合的に考慮して、同人を、司法試験を行うについて必要な学識経験を有する者として法務大臣に推薦したものである。

三について

 植村元考査委員については、以下の不適正な行為が判明したことから解任した。
 植村元考査委員は、平成十八年十一月一日、司法試験考査委員(公法系・行政法担当)に任命された後、同年十二月ころから、慶應義塾大学法科大学院の三年生と同大学院修了生の司法試験受験生に対し、行政法の「勉強会」と称する答案練習会の開催を知らせた上、これらの司法試験受験生のうち、希望者を対象に、平成十九年二月五日ころから同年三月十九日ころにかけて、週一回、合計七回にわたり、学内で、自ら行政法の論述問題等を出題して解答させ、これを添削・指導する方法で、答案練習会を行い、また、その内容や、自ら判例の要旨を学習用に取りまとめたもの等を同大学院の三年生と同大学院修了生の司法試験受験生に送付するなどして、担当科目について新司法試験の受験指導をした。
 植村元考査委員は、新司法試験実施直前の平成十九年五月六日ころ、同大学院修了生の司法試験受験生に対し、「本試験の論文の解答を試験直後に再現し、八月二十七日以降に送ってくれれば、それを採点してあげる。」などと通知した。
 なお、植村元考査委員が試験問題を事前に漏えいした事実は認められない。

四について

 植村元考査委員が試験問題を事前に漏えいした事実は認められない。
 なお、司法試験考査委員において、植村元考査委員が行った不適正な行為が平成十九年新司法試験に与えた影響について、専門的立場から、同人が作成した答案練習問題や配布資料等の内容と平成十九年新司法試験の試験問題を精査・比較するなど、慎重に検討・協議を行った結果、同人による行為が、有利な結果をもたらしたとは言えないと判断され、その結果を踏まえ、司法試験委員会において、平成十九年新司法試験について特段の措置をとらない旨の決定がなされたものである。

五の1について

 三についてで述べた植村元考査委員の行為は、従前から差し控えるよう要請していた受験指導であって、司法試験の公正さに疑念を抱かせかねない行為であり、このような行為の再発を防止することが必要であると考えている。

五の2及び3について

 司法試験の公正さに疑念を抱かせかねない行為か否かは、司法試験の公正な実施の確保という観点から、具体的な事実関係に即して判断されるべきものと考えている。
 例えば、司法試験考査委員が、答案練習の指導等により担当科目についての受験指導を行うことは、試験の公正さに疑念を抱かせかねない行為であると認められるため、従前から、司法試験考査委員に対し、差し控えるよう要請しているところである。

五の4について

 具体的な事実関係に即し、司法試験の公正な実施の確保という観点から、適切に対応したい。

五の5について

 司法試験委員会において、今後の司法試験考査委員体制について、検討を進めているところである。
 その検討状況を踏まえつつ、法務省と文部科学省において、連携・協議をしながら、再発防止のための必要な措置を講じてまいりたい。

六の1について

 慶應義塾大学からは、同大学大学院法務研究科委員会が、同研究科教授の植村元考査委員について「懲戒処分(解職)」が相当であると、同研究科運営委員会に上申し、最終的には、平成十九年八月三日、学校法人慶應義塾長が同人の辞職願を受理するに至ったと聞いている。

六の2について

 慶應義塾大学からは、同大学大学院法務研究科委員会において、植村元考査委員について「懲戒処分(解職)」が相当という結論に至ったのは、同人の行為、同人が司法試験考査委員を解任されたこと等の事実が慶應義塾賞罰規程における「義塾の信用を傷つけまたは体面を汚す行為」及び「職務上の義務に違背し、または職務を怠った」に該当することが理由であると聞いている。

七について

 御指摘のような「事前に司法試験の問題が漏えいしていた事実」は認められない。
 政府としては、すべての司法試験考査委員に対し、司法試験考査委員の任期中、勉強会、答案練習会等の受験指導をしたことがないかという点について報告を求めたほか、法科大学院における教育の実施状況に関する調査等を行ったところであり、また、報告等があったものを始め、その他必要に応じ、司法試験考査委員からの事情聴取や関係資料の収集を行うなどして、十分な調査・検討を行ったものと考えている。